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40 初めての依頼 14

 エリザベスがスタスタと前に出ていき、俺とメアリーアンがその後に続く。


「宝部屋からゴブリンナイトが溢れているのね!」


 エリザベスが宝部屋の方向を剣で指して言った。


 確かに宝部屋の方向からゴブリンナイトはどんどん出てきているように見える。そしてもうゴブリンナイトの戦闘集団がすぐ側まで近づいている。


 エリザベスがゴブリンナイトと戦闘を始める。驚くほどのスピードで斬り倒していくエリザベスの身のこなしを眺めながら、交代して良かったと安堵する。


 これがSランク冒険者の戦いかと、感心しながらその壮絶な地獄絵図を静観する。


「進みましょう」


 エリザベスがどんどん戦線を押しあげ、安全地帯が広がると、エリザベスとの距離を積めるようにメアリーアンは前にでる。


「あ、ああ」


 見惚れていたことに気付き、メアリーアンの後を追う。メアリーアンを守るのを忘れてはいけない。


「さすが、お姉様! いつ見てもかっこいいですわ」


 憧れるような眼差しを向けるメアリーアンの横顔の美しさに、ついどきりとする。


 エリザベスは、もう宝部屋の前まで進んで戦っていた。そして中を見て動きを止めている。


「ベスのところまで、急ごうか」


 俺は後ろを警戒してからメアリーアンと一緒に急いでエリザベスの方に走りだす。


 エリザベスの傍で部屋の中を覗き込むと、中には多量の金貨、金製品、宝石のついた装身具や剣などが山積みになり、その中央に体より大きな姿見があった。


 その鏡の中からゴブリンナイトが抜け出てくるのか、あたりに三匹と鏡面から首を出した状態の一匹が目に入る。


「『ゴブリナの鏡』だ」

 

 エリザベスが呟く。


「『ゴブリナの鏡』はゴブリンの世界と繋がっていると聞きます」


 メアリーアンが俺を見て解説する。俺は初めて見聞きする『ゴブリナの鏡』を見てフリーズした。オッチャンこの世にそんなんがあるなんて知らんかったでー。メアリーアンもエリザベスも物知りやなあ。


「あの鏡は破壊するしかなさそうだ」


「あれがあると、終わることなくゴブリンがで抜け出てくるようやな!」


「壊すしかないでしょう。鏡を破れば、きっとゴブリンが出てこなくなるわよ」


 メアリーアンも鏡を破るのに賛成する。


 鏡なんやから、石でもぶつけりゃ割れるやろう……ってダンジョン内に石なんか転がってない。あるのはホブゴブリンの魔石だけや。


「それ、俺が食うからダメだぞ!」


「そんなん良いやろう。ケチケチするなや!」


「それに、鏡面に当てても向こうの世界に素通りするだけだぜ」


 あ、そうなんや! そしたらどうやって壊せば良いんや? 鏡割れんやん!


 言葉にしなくてもインテリジェントソードには伝わるらしい。


「枠を壊せばなんとかなるかもなあ!」


「なるほど枠ね、ま、それならエリザベスに任せれば良いやんね」


 ホブゴブリンを倒しながら近づかなくてはならないミッションなのでここはエリザベスに任せようと思う。もうエリザベスは走っておるしな。


 それにしても趣味の悪い枠やで。


 『ゴブリナの鏡』の枠にはゴブリンの顔が其処此処にレリーフされている。その顔は叫んでいたり笑っていたり怒っていたりで、本当に気持ちが悪い。


 次々に鏡から抜け出てくるので、今はホブゴブリンが五匹いる。エリザベスは両手の剣で次々に斬り殺しもう最後の一匹だ。


 俺とメアリーアンは安心して鏡の方に近づく。


 最後の一匹を倒し終えて鏡を壊そうとするエリザベスのキックが鏡面に決まるが、その足が鏡面を通り抜けていた。


「きゃ! なにこれ」


 想定外の状況にエリザベスが悲鳴をあげてバランスを崩す。そして体が半分鏡の中に入ってしまった。


 半分ゴブリンの世界にいってしまったらしい。覗き見はいけませんよー。はよ戻ってこーい。


 メアリーが、だっと飛び出しエリザベスの体に抱きつく。引き戻そうとするが力不足でなかなか戻れない。


 そんなに力がいるのかと不思議に思いながらも、オッチャンもメアリーアンのウエストに手を回した引き戻す。重いでこれ、向こうで何かが引っ張ってるんかいな?


「ドリャー!」


 俺は渾身の力を込めて引き戻した。だんだんエリザベスの体がこっちの世界に戻ってくる。


 急に抵抗がなくなって三人が尻餅をついた。


「イテテテテ! はよおりてえな」


 俺はメアリーアンとエリザベスの下敷きになっていた。


 鏡面からホブゴブリンが顔だけ出している。徐々にこちらに抜け出てきそうだ。早く体勢を整えないとやられる。


 エリザベスは素早く起き上がると迎撃の体勢。


 アンちゃん早くおきてえな!


 鏡を抜けたホブゴブリンをエリザベスが一刀両断にする間になんとかオッチャン達も立ち上がった。


「枠や、枠を壊せば壊せるで!」


 俺はインテリジェントソードのアドバイスをそのまま伝える。エリザベスには聞こえてへんかったのかな?


 エリザベスが頷き右、左と枠に斬りつけ半分で折れるように壊れて鏡面は消失した。鏡と言ってもガラスみたいなもんは無かったんやね。


 後には分断された気色悪い枠だけが落ちている。オッチャンはゴブリンのレリーフを踏みつけた。


「これで安全だな」


「凄いお宝の山ですね!」


 メアリーアンの声に、足元のお宝を改めて見て呆気に取られるオッチャンであった。


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