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24 文化局局長 2

「良いだろう! 今日から君は、国家トレジャーハンターだ。早速、私の依頼を受けてもらいたいね」


「やった! ありがとうございます」


 穴を掘ること以外何もできない俺は、国家資格を身につけて飛び上がって喜ぶ。なんだか凄く偉くなったような気がするからだ。どんな資格であれ、国家資格と名が付けば、民間資格より上等な資格だと誰もが判断するし、実際その通りである。


 俺は本当にメアリーアンが言った通り、国家トレジャーハンターになってしまった。たまらなく、誰かに自慢したくなる。今まで自慢できることなど何もなかったのだから当然だ。自然と笑いが込み上げてくる。


「おめでとうございます。タケオさん」


 メアリーアンが冷静な口調で祝いの言葉を投げかける。締まりのない顔でオッチャンは返事をした。


「お! おう」


「それから、今日のお宝を買い取ってもらった二億なんですけど、半々に分けるということで良いですよね?」


 俺はメアリーアンを見つめ、何を言っているのか理解できずに硬直する。


 

「金銭化できましたし、半分受け取ってもらおうと思うのですが?」


 固まった俺を不思議そうに顔を近づけ覗き込むメアリーアンに、俺の体が再起動を始めた。再起動には時間がかかるものだ。小さな性能の悪いコンピューターが、一、十、百、…………一億と脳内ディスプレイに表示する。


「い、い、一億???」


 音声機能が機能再開の自動確認を行なっている。


 見上げるメアリーアンの顔を、現実が受け入れられないオッチャンは目をぱちぱちさせて見返した。


「それで良いですよ……ね!」


「それで良いですよ……」


 再起動中のオッチャンは、思考回路が未稼働のまま条件反射で同じ言葉を繰り返す。だんだん理解が現実を受け入れ始め、脳内ディスプレイの一億が点滅する。またしても喜びが腹の底から湧き上がり、表情筋がダラリと緩んだ。


 突然再起動が完了して真顔に戻ったオッチャンは、一転して険しい顔になって確認する。


「そんなにもらって良いのかな? オッチャン穴掘っただけやのに」


「タケオさんのお顔って、面白い!」


 口を隠してメアリーアンが俯きわらう。


 だんだん冷静さを取り戻しながら、どう考えても貰いすぎだと考える。


「良いんですよ。私たちは対等のパートナーですから」


 メアリーアンは口を隠してくすくす笑い続けた。


「対等のパートナー……?」


「そう! 対等のパートナーです。現金化できて分けられるようになったら、半分づつに分けましょう。生活費も必要でしょう?」


 良いのだろうかと疑問に思いつつ、笑顔のメアリーアンにそれで良いのだと安堵を覚える。


 すごいやんけ! 突然金持ちになってもうたで? トレジャーハンター最高!


 足元の地面が消えて、体が浮いているような気がする。


「うん!」


 大きな咳払いで現実に引き戻したのはスカーレット・カハラだ。俺とメアリーアンが彼女に視線を向ける。


「それで、依頼なのだがね……」


 スカーレットは机に肘を突き立て両手を握った手で口元を隠し、上目遣いで語り出す。


「この辺りには古代のお宝が眠っている可能性が高いんだ。今回君たちが見つけたのはその一部。特に宝物庫が見つかれば、そこには大量のお宝が眠っているだろう。それを見つけて欲しい」


「依頼の条件は?」


「固定報酬は十万ゴールド、発見した宝の第一買取権を文化局に……」


「特にこちらが忌避する条件はないようですね。分かりました。受けます」


「ちょっと待って」


 簡単に依頼を引き受けるメアリーアンに俺がストップをかける。そして相談のためにこの場を離れる許可を求める。


「ちょっと相談してから答えを出したいんや。一旦この場を外して良いかいな?」


「別に構わんが、早くしてくれよ」


 スカーレットが立ち上がり窓際に移動して外を眺め出した。


 俺たちは踵を返して部屋を出ると、廊下で小声で相談を始める。


「大丈夫なんかいな? オッチャン危ないの嫌やで!」


「別に今まで通り、安全な所を探せば良いじゃないですか?」


「でも、プリンちゃんが探せっちゅうとこは、あの森の中しか残っとらんやろ。つまりダンジョンの中や!」


「そうでしたね……」


 メアリーアンが顎に拳を当てて考え込む。考え込むお顔も可愛い。だがオッチャンの好みはボンキュッボンのスカーレット局長の方や。


 局長さんのために依頼を引き受けてあげたい所だが危ないのは嫌や。エッチーことさせてくれるなら命をかけても良いけどね。


「文化局から依頼が出されるということはかなりのお宝が眠っているかもしれませんけど……危ないですものね」


 残念そうに考え込んでいたメアリーアンが吹っ切れたようにかぶりをあげる。


「見つからなくても固定報酬が貰えますので、受けても良いと思ったのですが、確かに別の地を捜索していたらこの場合は問題になるかもしれませんし、断りましょうか」


「そうやろー。アンちゃんには悪いがオッチャン戦いはそんなに強くないしねー」


 インテリジェントソードは少しだけ強くなったようやがな。


「見つけたいですねー。お宝」


 物欲しそうな視線をオッチャンに向けるメアリーアン。オッチャン、そんな誘惑には負けへんでー。


「じゃあ、返答しに行くか」


 甘えん坊攻撃も通じそうがないと分かったメアリーアンも仕方ないという顔をして俺に続いてまた部屋に入った。


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