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第21話  ホブゴブリンと文化局

「タケオ! 起きろ。おい。タケオ! 起きるんだ!」


「あーん? なんだ……」


 俺は頭に響く声に意識が徐々に引き戻される。


 この声は……インテリジェントソードか?

 

 眠い目を擦りながら体をもたげる。


「おきろ! 何か来るぞ! 昨日より強い奴だ」


「あーそう。昨日より……」


「おい! 起きろ!」


 二度寝しようとする俺の脳裏に声が響く。


「なんだよ!」


「魔物が来るぞ! はやく起きろ!」


「魔物が!」


 俺の頭脳がバチンとショートしてフル回転で再起動を開始する。


 インテリジェントソードを持ってテントの外に飛び出す。


 まだあたりはくらいが、遠くに昨日のゴブリン(たぶん)二匹とその援軍らしき三匹のゴブリンと一回り大きいホブゴブリン一匹が見える。


「やっべ! あいつら仕返しに来やがった!」


 昨日よりホブゴブリン分こっちが不利やで。


「大丈夫だ。あんなの俺にかかれば一撃だぜ。絶対手を離すなよ」


 逃げる気満々だった俺だがインテリジェントソードの言葉で一気にやる気が漲って来た。やったるでー!


 とにかく剣を握っていれば、インテリジェントソードが勝手にやっつけてくれる。俺は目を瞑って剣に引っ張られてついていけば良いだけだ。怖いけど。


「頼んだでー、ちゃんと握ってるからね」


 オッチャン、ちょっと可愛くインテリジェントソードに頼み込む。


「キモいからやめろ!」


 インテリジェントソードに拒否られた。オッチャンの努力は無駄だったようだ。いや、逆効果だったかもしれない。もう可愛く頼むのはやめよう。


「ガッツリ言ったってや!」


インテリジェントソードに発破をかける。


「ちゃんと握ってろよ!」


グインと体にジーがかかる。トトト! 足がついてない!


俺はインテリジェントソードの柄をしっかり握って落ちないように食いしばる。


 一メートルは一気に飛んだやろうなと思う間にホブゴブリンに突き刺さったのか、俺に逆のジーがかかった。俺の体が宙に浮く。だが俺は剣を握って離さなかった。


 もう少しで飛んでいくところやで! 急加速急停止はもうこれっきりにしといてや!


 グギャーー!


 ホブゴブリンの大きな悲鳴。


 そしてホブゴブリンは溶け出した。


 おお! 魔石に直撃したようだ。残りは普通のゴブリン五匹、昨日と同じ戦力や。言っちゃあ悪いが余裕でしょ!


 ホブゴブリンが瞬殺されたことで慌て出すゴブリン達。


 ここでドヤ顔で脅しつけたいところやが、残念ながらその余裕が俺にはなかった。ちょっと平衡感覚がおかしくなっているので顔に迫力が出せない。


 だが、ゴブリン達は後ろを向いて逃げ出した。


「まあまあの味だ」


 余裕こいて魔石の味にコメントするインテリジェントソードに「あじわってる前にゴブリン倒したら!」と言ってやりたい。


 ゴブリンの逃げ足の速さに俺は目を見張った。あっという間に視界の外に消えていく。まあこれで危機はさったのだから良しとしよう。


 東に太陽が登り始めている。俺はほっと息を吐いた。昼間はさすがにゴブリンも仕返しに来ないだろう。


 昨日の晩飯を食うのを忘れていたので今朝はやけに腹が減っている。マジックバッグの中に食べられる物は入っているんだろうが中身をチェックするのは気が引けた。


 いつもは朝食を食べないのでここは我慢することにした。


 今日は仕事に行かねばならないが、ここを放っていくわけにもいかない。イライラしながら時間が過ぎていく。


 昼頃になってやっとメアリーアンと二人の男が現れた。インテリっぽいメガネの色白イケメンと気難しそうな金髪のイケメン。オッチャンなんだかイケメンって嫌いなのよね。


「遅くなってすみません。タケオさん。この方達が文化局の調査員さんです」


 メアリーアンが、二人のイケメンを紹介する。


「あなたがもう一人の発見者ですね?」


「はい」


 メガネのイケメンが名も名乗らずに調査を開始する。


「お名前は?」


「堀田岳男」


「メアリーアンさんと一緒にこれを発見したのは間違いないね?」


「はい」


「ちょっと見せてもらうよ」


 俺は黙って頷く。俺は仕事があるので早くこの場を切り上げたい一心で文句も言わずにイケメンメガネの指示に従う。


 イケメンメガネが出土した骨や王冠などを調べ始めた。


「あの、俺、勤め人なんで、仕事行きたいんすけど!」


 俺はイケメンメガネに許可を求めるが、彼は何も言わずに黙々と調査を進める。


 腹は減っているし、連絡を入れていない職場も気に掛かっている。俺はもう一度許可を求めた。


「あの! 帰って良いですか?」


 返事はない。


 さすがにブチ切れそうになる。


「ほな、帰らしてもらうで! こっちも仕事があるんや!」


 俺が帰ろうと振り返ると後ろからイケメンメガネが引き止める。


「まだサインをしてもらう書類があるので、帰らないでください!」


「なんやてー!」


 俺は顔を真っ赤にして大声を出す。


 イケメンメガネは平気な顔で続けた。


「今、書類を作るための調査をしてますので、そのままお待ちください!」


 メアリーアンは金髪イケメンとさっきからゴニョゴニョ話を続けている。


 全くとんでもないことになってもたで。トレジャーハントするのは土日だけと言う約束やのに、なんで月曜までずれ込んでんねん。それにお役所の仕事はマイペースでこっちの都合なんて御構い無しなんかい!


 俺はイライラしながらイケメンメガネが書類を作るのを待った。


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