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第19話 オッチャン安全なところでまた穴を掘る

「プリンちゃん。良い子にできて偉かったでちゅね~」

 メアリーアンに抱かれたプリンちゃんに、赤ちゃん言葉で話しかけると、プリンちゃんはクリクリまなこで俺を見つめた。


「それじゃあ、今日も頑張りますよ!」

 メアリーアンが清々しい表情で空を仰いだ。


「さて、今日はどこを掘るか? プリンちゃん頼んだでー」


 太陽も、もう少しで一番高いところにとどきそうや。俺たちはまたメアリーアンとプリンちゃんが目星をつけたという場所に歩いて行く。この街の周辺だけでもこんなにお宝が眠っているなんて、この世はお宝の上にできているのか?


 小一時間歩いた後でプリンちゃんを地上に降ろし、案内をお願いする。プリンちゃんは得意げに尻尾を振る。


「この街の周辺はだいたいこれで探し終えました。今度の場所が最後です。良いお宝が出てくれば良いですね」


「そりゃそうやが、良いかどうかようわからんからな~」


 お宝が出て来ても開錠や、鑑定に費用がかかる時は、その費用が見つけたお宝より高かったということだってあるはずや。トレジャーハンターも美味しい時ばかりはないーーたぶん。


 プリンちゃんが一声吠えて穴を掘り始めたのを見て、メアリーアンが道具を取り出した。俺はピッケルを受け取りプリンちゃんをどかす。


「えっさ! こらさ! ここ掘れわんわん! ほったれ、ほったれ!」

 まあまあ良いペースで掘り進む。一時間もするとかなりの深さまで掘り進んでいた。


 離れたところでメアリーアンが料理を始めている。レタスをちぎり皿の上に置くと下準備の済んだオーク肉を魔道コンロで焼き始める。もう一つのコンロではコーンスープを暖めている。


「タケオさん。昼食の準備ができましたよー」


 メアリーアンの呼ぶ声と食欲をくすぐる肉の焼ける臭いに、俺はピッケルを放り出して穴を登った。オッチャンこの子の作る飯が食えるだけで大満足やで!


「まだ宝は出てきいへんなー。もう一メートル以上掘ったんやけどー」


「きっともう少しで何か出ますよ。プリンちゃんを信じてください」


「ワン!」

 プリンちゃんが嬉しそうに尻尾を振って俺の周りを駆け巡る。


「あー腹減った。今日は何食わしてくれるねや?」

 オッチャンもう腹が減って死にそうです。

 腹をさすりながらメアリーアンが用意してくれた食卓に腰を下ろす。


「はいどうぞ」


 水魔法でコップに水をみたし渡される。グッと一飲み、乾いた喉にしみわたる。


「あー! もう一杯」


 差し出したコップにまた水魔法でくんでくれる。

 目の前には暖かいパンとオーク肉のステーキとコーンスープが並んでいる。


 やったでー! 最近の土日は食が豊かでありがたい。昔はパン一切れで一日中寝床に潜り込んでたもんやが、健全な生活になったもんや。


「どうぞ、召し上がれ!」


 ニッコリ微笑むメアリーアンはまるで高級レストランのウェイトレスのようだ。


「う、美味!」


 一口頬張ると口の中に肉の旨みが染み渡る。タレの味も最高や!


 この食事が食べられるだけで一日中穴を掘る価値はある。


 メアリーアンもオッチャンの向かいに座りオーク肉のステーキを口に運ぶ。


「うーーん。美味しい!」


 メアリーアンの足元ではプリンちゃんが尻尾をふりふりしながらミルクを舐めている。


「アンちゃんって料理が上手やね。どこで習ったん?」


「え! 上手だなんて……普通ですよ。小さい頃から調理場で遊んでたからかな?」


「習ったわけじゃないんやね?」


「そうです。見よう見まねかしら。ただ……いろんな調味料や食材には触れてましたね。盗み食いや味見もしたし」


 どうやらメアリーアンは幼い頃から調理場で一流シェフ達の調理を見て育ったようだ。十年くらいは調理の現場にいたことになる。それなら上手になっても不思議はないのかもしれない。


「きっと周りのシェフの話を聞いてて、料理の勘どころとか、注意点なんかも知らんうちに覚えてもーたんやろうな」


「あ! そういうのはあるかもしれません。感心して話を聞いてたことが度々でしたから。そうなんだーって何度も思いましたよ」


 俺はメアリーアンの料理上手の秘密を理解した。


 腹一杯食べて最後にもう一度水をもらう。魔法って便利やな。オッチャンもお宝見つけて身につけたいで。


 ゴクゴクと一気に飲み干しピッケルを担ぐ。さて穴掘り再開や!


 穴の上で掘った穴を睨み考え込む。


 ここからまだまだ深く掘るんやろうなー。登り降りのために足場作っとくか。


 杭を打ちロープを縛りつけると方端を穴に落とす。登る時用のロープ出来上がりや。


 俺は穴の底に降りてピッケルとシャベルで掘り進む。そそり立って来た周囲の壁に足場を掘り込み、そして足元の土を掘り始めた。


 掘って出た土はマジックバッグに一時収納させてもらう。これがなかったら一人で掘り進むのは何倍も大変や。


 ホンマに便利、マジックバッグ。

 バッグの中身が土まみれになるなんてこともないし、出したい時には一気に土だけ出せる。掘った穴を埋めるのも、かなり楽ちん。


「えっさ! ほらさ!」


ガグニュ!


 ピッケルの先になんかいつもより柔らかい感触。ここらの石が少し柔らかいのかもしれない。地層の違いだろうか? 


 シャベルに変えて掘り進むと石というより土に近い感触。深く掘ると土も石のように硬く変わってくるが、この辺の層は少し柔らかめのようだ。


 

 さらに掘り進むと骨のような物発見。次第に頭蓋骨やら何やら出てきて骨の正体が判明した。


 きも! 人骨発掘してもーた。


 周りから骨と一緒に装飾品が見つかっている。金色のような?


「これって王冠?」


 結構な大きさのリング状の物体に赤、青、緑で二センチ位の石が複数付いている。その他にも腕輪? 首飾り? 訳のわからん小物? なんだかかんだ十数点身につけていたようだ。


「アンちゃん! これどうしよう? どこかに届出とか報告とかの義務があったりせんの?」


 メアリーアンも出てきた物に目を見張る。


「ちょっと私も降りていきますね!」


 メアリーアンはオッチャンの傍で出土物を観察し始めた。


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