第15話 迷路の地図?
土曜の朝、眠い目を擦りながら起き上がる。もうすでに日は昇っている。
朝、素振りでもしようかと昨日は思っていたのに今はやる気になれない。もう少し寝ていたいが、そろそろ出ないと待ち合わせの時間に間に合わなくなりそうだ。
「はーあ!」
俺は大きな欠伸をした。
「ヤッベ! 待ち合わせに遅れる」
遅くまで寝過ぎたことに気づき猛ダッシュ。待ち合わせの場所・噴水公園の噴水の前に急ぐ。噴水の前にはメアリーアンとプリンちゃんが待っていた。メアリーアンはプリンちゃんのモフモフを幸せそうな笑顔で味わっている。
「おはよう、アンちゃん」
声をかけると残念そうにモフモフするのをやめて、こちらを向いた。
「おはようございます。タケオさん。昨日のですけど……迷路図か何かみたいですね。なんなんでしょう?」
メアリーアンが完成図を俺に見せる。
「ふーん。まあ、そのうち分かるんやないかな。今は考えてもしょうがないかもよ」
俺にもさっぱり分からない。だいたいこう言うものは宝の地図とかじゃねーのかな? 適当に納得した。
まだ銀貨のガチャから出てくるプレートはカンストしていないので、もっと銀貨が欲しい。俺達は今日も先週に引き続き、同じ丘に向かった。
三時間かけて丘に到着し、プリンちゃんにクンクンしてもらう。
丘の北には卓郎が言っていた北の森が遠くに見える。
あの森にダンジョンがあるのかと思いながらピッケルを振り下ろし、シャベルで掘る。出てくるのは銅貨が多いが、たまに銀貨も出てきた。
プリンちゃんの活躍で、銀貨六枚、銅貨30枚と前回より大量に掘り出した。ゴブリンが現れるのを警戒して日の暮れる前に帰途に着いた。銀貨を使って手に入れたプレートを組み合わせながら訳のわからない模様を完成した。
「やっぱり迷路遊びに使ったのかしら?」
メアリーアンが、完成図を見ながら呟いた。
「迷路ねえ~。宝のありかとか記してないのかね? あったら良いのに」
「あ! この印は……階段かしら? もしかして銅の方が一階で銀が二階とか?」
なんやて! 迷路で……二階建て? 何かの建物かいなあ?
「タケオさん、あのこれきっと迷宮の地図か何かですよ」
「どこのやねん。迷宮の場所が分からんと意味ないんちゃう?」
「そうですね。どこに迷宮があるかが分からないと意味ないですね……」
メアリーアンが顔色を曇らせる。
「まあ良いかー。今んとこ、迷宮なんて怖い場所、入る気せえへんからなあ」
俺は北の森のダンジョンを思い浮かべた。
俺に戦闘は無理だ。もしもの時のために少しは剣を振る練習をしようと思ったがまだしてない。
「いずれは、入ってみたいですね、迷宮」
メアリーアンは憧れるように視線を空に向ける。
「なんやて、そんなん絶対無理やし。俺は入らんよ。アンちゃん、そん時は俺抜きで頼みますわ~」
「ちょっと待ちな、俺に美味いもの食わせてくれね~のかよ」
インテリジェントソードの声が頭に響く。
「アンちゃん、今インテリジェントソードの声がしたんやけど。君にも聞こえた? 美味いもの食わせろやて」
俺はメアリーアンの顔を覗き込む。彼女は軽く首を振った。どうやら俺の脳に直接響いたらしい。今、インテリジェントソードはマジックバッグの中に収納されている。
「ふーん。異空間からでも話しかけられんやね。すげーな」
俺は感心しながらインテリジェントソードを取り出そうと思う。
「アンちゃん、剣を取り出しても良いか?」
「はい、どうぞ」
出されたマジックバッグに手を入れてインテリジェントソードを思い浮かべて掴み出すと、俺の手にはインテリジェントソードが握られていた。
「おい、俺は戦いは苦手なんやぞ! どうせいっちゅうねん」
「初めはゴブリンでも良いから食わせてくれよ。そのうち俺がお前を強くしてやるからよ」
インテリジェントソードがとんでもないことを言い出した。
「アンちゃん、この剣を売ったら結構な額になったりせんの?」
俺はインテリジェントソードを無視してメアリーアンに尋ねる。
冗談やないで……もう戦いは懲り懲りや。
「凄い高値がつくかもしれないし……ただ同然かもしれない……です」
メアリーアンが困ったように答える。
つまりは分からんちゅうことやんか! まあ人生経験俺より短いんやし、知らんのも無理ないか~。それにしても、この剣なんや危険な匂いがする。早いとこお別れしたい。
「タケオさん。それではまた明日よろしくお願いします」
「明日はどこ行くの?」
「明日はこの先に行ってみようと思います」
この先っていったら、北の森の方じゃないの。
あそこ、ダンジョンあるんやて! いかんいかん。あっちは危ないて!
俺は心の中でなんとか別のところに行き先を変えさせたいと思う。ダンジョンのそばなんて、それこそゴブリン出そうやんか。だが、アンちゃんにダンジョンがあるなんていったら、迷路の地図はそのダンジョンの地図に違いないとか言い出しそうや。
それは教えない方が良いな……言ったらダンジョンの中に入ろうって言うに違いない。そもそも誰にもいうなと口止めをされている。口止めされると言いたくなるのよ~、これが。俺は少し黙ったまま明日のことは明日考えることにした。




