第10話 ガチャ? カード? 地図?
俺はぷりんちゃんがマーキングをした場所を掘り始めた。
此処には金貨か宝箱が埋まっているに違いない。
勝手に期待を膨らませて掘る腕にも力が入る。
目の色を変えて掘り進めるとガツンと硬いものにぶつかった。
「きた~!」
「出ましたか?」
俺の声に反応してメアリーアンが覗き込む。
「どうやら今度は箱の様な感じだぞ!」
俺は宝を掘り出すために周りの土を取り除く。
徐々に宝の全貌が見えてきた。やはり箱型の様だ。
「どりゃ~!」
俺は宝を持ち上げる様にシャベルの先端を宝の下に潜り込ませて宝ごと掘り起こした。グイという手応えと共に宝が上に動く。
「それ!」
更にシャベルの先を深く突っ込み宝を持ち上げると箱型の宝を取り出す事に成功した。
手で宝の土を拭き落とす俺。
「うーん」
箱型だが宝箱ではなさそうだ。開きそうな構造ではない。なんだろう?
大きさは30センチx 40センチx 50センチみたいなイメージの結構大きな箱だ。
中に硬貨がぎっしり入っていたら持ち上げられそうもないのでそういうことはなさそうだ。
ガチャの様な硬貨投入口と回すための取手と何かの出口の様な構造が見受けられる。
本当にガチャかしら……と思ってメアリーアンに見せた。
「何か、ガチャみたいな形だね? さっきの硬貨を入れて回してみる?」
「やってみましょうか?」
メアリーアンがさっきの銅貨を投入口に入れて取手を回してみた。
ガチャ!
「なんか出たで!」
俺は出てきた物体を掴み出した。本当にガチャの様だ。
出てきたのはカードのような物体。カードの販売機?
出てきたカードを覗き込む。素材は何でできているのだろう?
単なる紙ではなさそうだ。紙というより硬い何かでできている。
厚みも1ミリ位はありそうだ。そして何かが描かれている。
何処かの地図の様だ。
周りの縁取りを見ると四つ以上は組み合わせないと完成した地図にはならなさそうな感じだ。
「これが出てきたよ。地図かな? ただの模様かな?」
俺は出てきたカードをメアリーアンに渡した。
メアリーアンはカードを受け取りのぞき見る。
「何でしょうね? 変な絵がかいてあるみたい?」
「縁取りがつながりそうな感じだから、いくつかつなげると絵が見えてくるのかもなあ? 知らんけど!」
「そういう事もありますよね……銅貨はまだ有りますからもう一度入れてみますね」
メアリーアンがまた銅貨を入れて取手を回す。
ガチャ!
さっきと同じようにカードが出てきた。カードを見てみるとやはり何かが描かれている。さっきのカードと繋がるのだろうか?
「はい」
メアリーアンにカードを渡すとメアリーアンはさっきのカードと色々な方向で組み合わせて確かめている。
「合わないわね!」
眉を顰めるメアリーアン。
「もう一枚、いっとく~?」
俺はこの際何かが完成するまでカードを出してみてもかまわないと思っている。
「良いですか?」
「掘り出した宝はアンの物だから好きにして良いよん」
オッチャン、こう見えて気前が良いんだぜ。
そういえば銀貨もあったな、銀貨なら一度に十枚出てきて一枚大当たり確実とかないのかな?
「じゃあ~、もう一枚だけやってみます?」
「ごめん! 銀貨を入れたらどうなるんやろうね? やってみちゃダメかな?」
「でも~、銀貨は一枚しか有りませんし~」
「ダメだよね、一枚しかないもんねー」
「やっちゃいますか!」
メアリーアンの気が変わったようで、銀貨を入れた時はどうなるのかやってみたくなった様だ。
また気が変わってしまう前に速攻でやらせてしまおう。オッチャン、このチャンスを逃しまへんで~!
「きっと十一枚出てくるにょ!」
ちょっと発音が変になってしまった。
俺の熱意に押されてメアリーアンが銀貨を投入した。取手を回す。
ガチャ!
音はさっきと同じだ。
カードを取り出すとカードの色が今までのものとは違った。銀色だ。もしかしてレアカード?
銀色のカードを見るとやはり一枚だけでは模様が完成していないようにお見受けする。
この後残り十枚ノーマルカードが出てくるのでは?
俺はガチャの箱のカード出口を覗き込んだ……ない。
取手を回そうとしたが回らない。
どうやら銀貨一枚で銀のカード一枚が出てくる仕組みの様だ。
すまね~アンちゃん! 予想に反して別のシリーズが出てきた可能性が濃いやん。
「ごめん、俺が変な事を言ったばっかりに」
こういう時、オッチャンは素直に謝れる男やで~。
「でも色が綺麗なのが出てきたからきっと良いカードに違いありませんわよ」
え~子やのう~、オッチャンの事、責めると思ったのに……優しい子やのう~アンちゃんは~十年若かったら惚れてまうやろー。
「だが、一枚では完成品ではなさそうだよ。何枚も集めないと……」
「そうですね。こうなったらこの辺をもっと探して銀貨を見つけましょう。お願いね! プリンちゃん!」
「ワン!」
プリンちゃんもやる気やで~。可愛いワンコやの~モフモフさせて~な。
モフモフしたそうな目でプリンちゃんを見つめる俺をみてメアリーアンが睨む。
「ダメですよ。プリンちゃんは私だけのものなんです」
わかってますがな~。
……俺はがっかりして背中を丸めた。




