表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

4/39

第4話 再会と定義魔法(レイナside)

この土日最後の更新です。

「ミモザ! あれ、でもおかしいな、ミモザは8年前に死んじゃって、ここにいるはずがないのに……。あたし、疲れてるのかな? それともこれは、あたしにもお迎えが来る直前の走馬灯?」


 そう言って目をごしごしとこすってみる。でも、もう一度開いたあたしの網膜にはやっぱりまだ、困ったような笑みを浮かべたミモザがはっきりと映ったままだった。


「幻覚でも走馬灯でもありませんよ。私は確かにここにいます。と、いうか、死んでからもあなたの傍を離れることができなかったんです。こんな酷い世界に一人残してしまった、あなたのことが気がかりで」


 思いもよらないミモザの言葉にあたしは息を飲みこんじゃう。


「……ってことは今のミモザは幽霊ってこと? でもなんで⁉ これまでもいたはずの幽霊のミモザのことをあたしは急に知覚できるようになったの?」


「それは恐らくレイナさまが定義魔法・【霊域浸犯】に目覚めたからでしょうね。16歳になってから定義魔法に目覚めるなんて、お寝坊さんにもほどがありますけど。ま、私が生きていた時からだらしのなかったレイナさまらしいといえばレイナさまらしいですけど」


 ちょっといたずらっぽく笑って言うミモザに、あたしは思わず頬を膨らませちゃう。でも、むっとしながあもあたしはこんなミモザとのやり取りに愛おしさもまた、感じていた。


 ――懐かしいな、こんな風な他愛もないやり取り。独りぼっちになっちゃってからはそんなことできなかったから。


「うぐっ。べ、別に今は自分で起きる時間は決めてるから寝坊なんてしてないもん! ――って、今ミモザ、定義魔法って言った?」


 ふと懐かしさから目が覚めてあたしはそう聞き返しちゃう。定義魔法、その言葉はそれだけあたしに縁遠くて、そして人類全員にとって忌まわしき存在だったから。


 この世界が滅びる前から、この世界の殆どの人間には魔力があり、人間によって行使される魔法技術が人間社会を築き上げてきた。そんな魔法には二種類あった。一つは研鑽さえ積めば理論上は誰にでも使える一般魔法と、もう一つが神様に祝福されたごく一握りの人しか使えない定義魔法。


 そのうち、一般魔法も実に多彩で、物理法則を無視したことを実現できる。実際、一般魔法がなかったらあたしだってこんな世界で一人きりでここまで生きてこれてない。でも。定義魔法はその比じゃない、らしい。


 神に選ばれた人間、と言っても一人が使える定義魔法は一つだけ。だけどその一つ一つがまるで一般魔法との比較じゃお話にならないような規格外のものばかりだった。昔の魔導書では定義魔法のことを「世界法則に干渉し得る魔法」だなんて定義することもあるくらい。


 そしてその評価は今から振り返るとあながち間違いじゃなかったんだろうな、って思っちゃう。だって実際、魔王達の定義魔法のおかげでこの世界は不可逆なレベルで壊滅させられちゃったんだから。


 そう、魔王と陸冥卿こそ、定義魔法使いの集団。彼女らはその規格外の魔法で、たったの7人しかいないのにこの惑星を、太陽系をめちゃくちゃにしちゃった。


「そんなすごい魔法、あたしには縁遠いものだよ。何かの間違いだって」


 愛想笑いを浮かべてそう言うあたしだけど、ミモザはいつになく真剣な表情で「間違いなんかじゃありません」ときっぱりと言い切る。


「だって今のレイナさまは現に世界の理を破ってるじゃないですか。どんな一般魔法をしても、一度死んでしまった人と対話することなんて普通はできないんです。それはどんなに私が自分の人生に悔いがあって、成仏できずにこの世界に留まってしまっていても、どんなにレイナさまに言葉を伝えたいと思っても。でも、今のレイナさまはその理を破っている。定義魔法【霊域浸犯】によって全ての魂を知覚し、支配下に置く能力でもなければ、今の状況はありえない(、、、、、、)んです」


「で、でも! ミモザがまだ生きてた時、他ならないミモザも言ってたよね? 固有魔法は大体6~10歳、遅くとも13歳になる頃には発言するのが一般的だ、って。だから私は多分定義魔法の見込みがないんだー、って。なのにあたし、もう17歳だよ? 流石に遅すぎるって!」


 あたしはどうしても否定したかった。否定しないと怖かった。


 だってこの世界を滅ぼした魔王達と同じようなとんでもない力があたしの中に眠っているんだよ? そんなの、今の悲惨な世界を知ってるからこそ、怖いに決まってるじゃん。


 いつの間にかあたしの身体は小刻みに震えていた。と、その時。


 ふと、幽霊のミモザがあたしの震える手に自分の手を重ねてくる。


 そのミモザに実態はないから、温もりなんてあるはずがない。でも、なぜかあたしはミモザの重ねられた手からミモザの温もりを感じた。途端に体の震えがすぅっと消えていく。


「なんでレイナさまの固有魔法の発現が遅れたのか、それは私にもわかりません。そして確かに、定義魔法は使い方を間違えると怖い魔法かもしれませんが、レイナさまの本当にやりたいことを成し遂げるための強い味方になってくれたり、誰かのことを救うことができるかもしれない、夢と可能性が詰まった玉手箱なんです」


 聞いているだけであたしを安心させてくれる不思議な声音で、ミモザはゆっくりと語りかける。


「少なくとも、私はレイナさまとまたこうしてお喋りできて、すっごく嬉しいですよ。それもこれも、レイナさまが定義魔法に目覚めてくれたおかげです。そうじゃなければずっと、もどかしい思いをしながらレイナさまを見守り続けて、ずっと成仏できないままでいたかもしれませんから」


 そうしんみりと語るミモザの目元にはうっすらと嬉し涙が浮かんでいた。

 悩みながら書き進めている本作ですがタイトル回収となる第1章、できたら10万字で完結まで行けたらなぁと思って書いています。現在のストックがなくなるまでは平日は19:00~21:00くらいの帰りの電車の中で更新していけたらと思いますのでもしよければ気長にお付き合いいただけると励みになります。

 それでは。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ