コメント
誰かが、言った。
「創作とは夜の海に向かって小石を投げるような行為だ」と。
無名より悪評、とはよく言ったものだ。
なんの反応もないということは、腸がブチ切れそうになるほど辛い。
僕は、趣味で小説を書いている。
作品を投稿サイトなどで発表している。
これが辛いのだ。
作品を書いているときは幸福だ。
最高の作品ができた、と興奮する。
けど、最高のはずの作品に反応が帰ってくることはない。
僕は上手い方だと思う。けど、僕以上に上手い人はいくらでもいる。
ランキング上位に掲載され、注目を集めている作品を見ると妬ましさで目が眩みそうだ。
なにが違うっていうのだ。
ほら! 僕のだって面白いだろう?!
だが、僕の作品は誰も見向きもしない。
これが現実。
今回投稿した作品も例によって、なんの反応もない。
誰か反応してくれ。悪口でもいいから。
そう願いつつ、ネットの画面を睨んだ。
「もう、やめようかな……」
そう呟いたとき、聞き慣れない音がパソコンから聞こえた。
「なんだ、これ」
<あなたの作品にコメントがつきました>
そう表示され、息を呑んだ。
マジか。
震える手でマウスをクリックする。
<すごく泣けました>
この一行だけ。
僕の作品が誰かを動かし、この一行を書かせたのだ。
「あ、ありがとう……」
感謝。感謝。感謝しかない。
書いた人は、ほんの気まぐれだったのかもしれない。
けれども、それらの文字は、僕に勇気と感動を与えた。
世界中のどんな名文よりも、僕の胸を打った。
生きる勇気が湧いてきた。
書こう。書き続けよう。
きっと誰かに何かを届けられると信じて。
書こう。
END