第1話 夢目前での死~空韻雷夢ー①
俺は空韻雷夢。27歳、男。
ラッパー兼フリーター、冴えない自称ミュージシャンってやつ。
MC(※1)名はIKATZZI。
(※1)MC:簡潔に言うと「ラッパー」の別称。
久化5年の、6月2日。
この日、俺は長年の夢の目前に達し、そして、くたばった。
* * * * * *
シブヤ、クラブ・ハーデス。
この夜、日本一のバトルMCを決める大会、U・M・Cの決勝戦だった。
怒号にも似た歓声と熱気の渦の中、決勝戦・延長ラスト1本の真剣勝負。
対戦相手は因縁のライバル、五鬼継 誉ことWAR-Rock。
そもそも、俺はいわゆる分かりやすいラッパー然としたラッパーではなかった。
陰キャラ上がりながら、言葉と踏韻の魅力に取り憑かれてラップの道に入ったクチだ。
最近、ようやくヘッズ(※3)にも受け入れられ、ファンも出来た。
そしてやっと掴んだ今夜の決勝だった。
(※3)ヘッズ:ヒップホップ音楽・ラップのリスナーやファンのこと。
対するこのWAR-Rockは俺とは正反対のラッパーだ。
裕福な家庭に生まれ、親のスネを齧りながら贅沢三昧をし、そのくせ人気を狙うため「成り上がり」を演じている。
最近は裏社会との繋がりも噂されている筋金入りの不良で、自身の率いるラップクルーを引き連れて、街で大暴れしている。
逮捕されていないのが不思議なくらいだ。
こいつは、何度も何度も俺を貶めようと水面下で妨害工作を続けてきた。
今日の大会だってもともと、審査員を買収した出来レースだとかいう噂も耳に入っていた。
それがこの延長戦の所以かも知れない。
しかし、だ。
試合が延びるほど、俺は優勢になっていっている。
会場の空気が俺に味方しているのだ。
あからさまにWAR-Rockに肩入れしている審査員数人も、次のターンが決まれば俺に票を入れるしかなくなるだろう。
—————勝てる!
明らかにWAR-Rockに苛立ちと焦りの色が見えてきている。
奴のターンが終わり、俺はマイクを確と握りしめ、最終韻詩を畳み掛ける。
—————喰らえWAR-Rock、これが俺の全てだ!
〽「ストリートからの支持? 俺は愚弄しちゃう
年甲斐もなくワンパターンな 不良自慢
一発も撃ったことない 拳銃(ハジキ)
騙されんなよ、こいつは筋物の パシリ
みんな捨てちまえこんな 「曰く付き」
ごきぶりクルー 全員爆死
これでハッピーエンド、肺から吐く血
紫電一閃でトドメさす 俺が|IKATZZI(イカズチ)!!!」
場内に響き渡るヘッズ達の大歓声。
天井に突き抜けていく熱。
スラムダンクをキメたような爽快感。
—————勝ったのだ。
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