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ぎゅっと抱き締められて私は固まった。
頬がかあっと赤くなる感じがする。
「これは皇太子じゃなくて、ただのアルフレッドの言葉だと思って聞いて欲しい。」
「はい……」
「私はずっと君への気持ちを理解せず生きてきた。いや、わざと理解しなかったんだ。」
アルフレッド様は紡ぐように優しく語りかけてくる。
「恋や嫉妬が許されるほど皇太子は自由じゃない。例えば君に嫉妬しすがり付くような私に、君が失望したとしても、自由にさせてやれない。」
「…そんな!失望なんて」
「ずっと怖かったんだ、長年変わらなかった関係が変わるのも、君が小説を書いて、より生き生きと変わっていくのも。それで寂しがる情けない自分を見せるのも。」
その告白は、ずっと完璧だったアルフレッド様の心の弱いところを触っているようで私は何とも言えない気持ちになった。
抱き締めた右手を動かして彼の髪をさらりと撫でる。
ゴールドの髪はすこし整髪料で整えられていて、その流れを整えるようにすく。
「私は、どんな貴方でも失望なんてしませんし、むしろ私だけに見せてくれるアルフレッド様を……愛おしく感じますわ。」
照れくささにふふっと笑う、アルフレッド様が目を見開いた。
「……ッ!」
ぎゅっ、と私を抱き締める手に力が込められる。
「…大事にする」
「……はい」
「君が嫌じゃないのなら、沢山愛も伝える。」
「ふふ…はい。」
「時に、格好悪い姿も見せるかもしれないけど。」
「あら、人間ですもの。私も同じですわ?」
見つめあってふふっと笑みが溢れる。
「愛してるよ。エウルアだけを贔屓してしまうくらいに。」
私も…と言おうとした瞬間、唇に優しくキスが降り注いだ。
嬉しい。
あのアルフレッド様が私を愛してくれた。
ぷは。と息をしてキスの合間に「私も、愛しています。」と伝えれば……
彼の真珠のような肌はすぐに桜色に染まった。