7(アルフレッド視点)
出会った時に雷が落ちたりとか、前世からの繋がりを感じたりは全く無かった。
ただ、王城や無数いる大人達に怯えず堂々と振る舞う彼女を見て、彼女もまた自分と同じく王妃となるための器があるのだと思った。
2人で過ごす時間ではこの国をどうしたいかの議論で盛り上がり、恋人というよりも同じ運命を持つパートナー、同じ志を持つ仕事仲間のような感覚になっていた。
あの日―――私は公務のために数日間、学園へ通うことができなかった。
「ご公務お疲れ様です。こちらのノートをお使いください。」エウルアがそう言って差し出してきたノート。
自室で開いたそれには便箋が挟まっていた。
封筒は無く、便箋は簡素でわざわざ男物の香水まで振られている。
そこには、字は汚いがポエムチックな言葉で何度も何度も彼女を褒め称える内容が書かれていた。
そして、必ず数年後に迎えに行く。とも
「……たんぽぽのような笑顔」
それを見た瞬間に激しい怒りと動揺に襲われた。
そんな笑顔を、自身は見たことがなかった。
常に綺麗な、それでいてケチのつかないような笑顔しか見たことがない。
今まで距離感を置いてきた己を棚にあげ、彼女に裏切られたという思いに苛まれる。
それと同時に、彼女がどこの馬の骨かもわからない者に奪われてしまったら…という恐怖が背中にべったりと張り付いた。
そして、自覚した。
王妃になるために常に一生懸命で、ひたむきに努力している彼女が好きだった。
ただ、そんな彼女に好意を向けて嫌われるのがとんでもなく怖かったのだ。
彼女へ自分の執着や弱みを彼女に見せるぐらいの勇気がなかった。
でも長年拗らせてきたその思いは、彼女が奪われそうなこんな時にならないと自覚できないようなものだったのだ。
アルフレッドは自嘲気味に笑うともう一度、手紙を見直した。
せめて婚約式までの後2年、彼女に恋心を自覚してもらえるようにしよう。
その為には彼女の事を知らなくては――
アルフレッドは彼女につけている影を呼び出し、話を切り出した。