最悪な出会い
フロント少佐率いるロッキーマスドールズの方針を固め、正式に部隊として認められる為大統領から送られてくる指令を完遂し、実力を示さなければならなくなった。
ランヘルドで寝泊まりしているリリスたちとは裏腹に、行動に移そうとしているエロイスたちだった。
「おっ、これが…」
フロント少佐が宿の受付で封筒を受け取る。
「ありがとう、感謝する」
受付嬢に礼を言うとスタスタと自室へとの戻っていった。
朝早くから送りてきた封筒を机に放って、椅子に腰掛けた。
「おい、エロイスそれにリグニン、起きろ指令だ、大統領の命令だぞ」
少佐がベッドで健やかに寝ている二人を揺らして
起こす。
「んぁ〜…おはようございます…」
「なんですか少佐…ウチまだ眠い…」
「起きろ、これから指令を確認する。
隣の奴らも起こしてくるから目ヤニ取って待ってろ」
少佐が隣のエッジとドレミーを呼んで一箇所に集めた。
「これから指令を読み上げる。
『ロディーヤ人虜囚の一人が収監されていた絶滅収容所から極秘兵器毒ガスに関する資料を持ち逃亡した。
グラーファル総監督の執務室から消失していることに気づいた人間たちの音楽隊はその資料の持ち主が写真の少女であることとこの街にいる可能性がある事を突き止めた。
この人物を捕縛し、資料を郵便でボルタージュへと届けよ』とのことだ、理解したか?」
「写真の女の子…?」
資料に添付されていた白黒の写真を手にとって見てみる。
その写真は画質が荒く見ずらいが、それでもわかるストレートの長い髪と整った顔立ちなどから容姿端麗な少女だとわかる。
「この…女の子が…?収容所から資料を…ほっ…ほんとに……?」
「こんなかわいい見た目なのにやることは大胆なんね」
「この子がこの街に…」
その写真に食いついていると少佐がコートの裏から二丁の銀のオートマチックの拳銃を取り出してきた。
「街を探索するぞ、それぞれ声が聞こえる範囲に広がって探す。
見つけ次第私を呼べ、資料の在処と胃液を吐かせてやる」
そう言うと五人は部屋をでて宿のアパートからでて通りに出る。
「それぞれ少し散らばって探すぞ、いいな」
少しバラバラに散らばり、同じ方向に向かって探し始めた。
この任務にロッキーマスドールズの始まりがかかっている、絶対に成功させなければならない。
その頃、安宿に泊まっていたダーリンゲリラのリリスたちは四人で同じ部屋に泊まっていた。
少し薄暗く、決していい雰囲気とは言えないが、寝泊まりするには充分だった。
「これからどうしましょう、参謀総長の飢餓作戦も少しは妨げられたし、次あの人がどんな手を打ってくるのか分からない以上、行動のしようがないですわ」
メリーが黒のケースを抱えたまま、脱力感に襲われていた。
「一旦帝都に帰るってのも手だな、被害の確認と参謀総長に顔出しを兼ねて、あいつらは俺たちが生きているって知ってんのか?」
少尉は椅子にもたれかかって次取るべき行動を考える。
「とりあえず、メリーの持っている資料はここに置いておいたほうがいいな、テニーニャにもロディーヤの参謀総長の手に渡るのも不味い」
「そうですわね、いつか焼却しましょう」
メリーが膝の上においていたケースを部屋の端に置く。
そしてそのまま窓のその外を眺める。
「この街穏やかですわね、敵都のチェニロバーンが空襲されたと伝えられても特に喜んだりもせず、敵への憎悪をむき出しにしたりせず。 道理で敗走したテニーニャ兵をほとんど見ないわけですわ、皆さんこの街の温もりに浄化されて軍服を脱いでしまったのですわね」
ランヘルドの上空は今日も曇天、今にも雨が降り出しそうな天気だ。
「シルバーテンペストとゴールドミルキーウェイの情報をまとめたものを軍部にこっそり送っておいてやった、これで参謀総長の否応なしに情報は広まる、とりあえず一件落着というわけだ」
少尉は椅子から立ち上がると地図を取り出して確認する。
「結局前線はほとんど動いていないな、参謀総長の飢餓作戦が災いしたのか、残念だ。
だがまだロディーヤ優勢、案ずることはない」
「少尉っ!次は何しましょうか!まだダーリンゲリラのやることは残っていますよね?」
「元気がいいな、リリスは。
そうだな…とりあえず銃器がほしい、ロディーヤのあの歩兵銃が、近くの前線に赴くか。
ええっと、近くのロディーヤの前線は…ここら辺だな」
少尉は周辺の地形が乗った地図のとある地点に印をつけた。
「ここか、『シッパーテロ』。
ここに移動しよう」
シッパーテロ
それはランヘルドから十キロほど戻ったところにある湿原の名前である。
緩やかな勾配に低木がまちまちに生えている平地であり、ここでテニーニャ兵とロディーヤ兵が睨み合っているという状態であった。
その塹壕はお互い裏をかこうと横に横にと掘っているうちに長さ五キロという長い長い塹壕が築かれていたところだ。
ロディーヤ側は雑木林を抜けた先の乾いた泥に塹壕を掘り、その湿原の先にある兵陵にテニーニャも塹壕を掘っている。
その立地のせいでアッジ要塞陥落の十一月三十日から殆ど前線が動いていなかった。
「このシッパーテロに飛び入り参戦だ、行動しなければ勝利は無い」
少尉のいきなりの提案をみんなに話すと、それぞれ受け入れてくれた。
久しぶりの前線復帰である。
「明日にでも移動しよう、それまでは各々自由時間だ、好きに行動しろ」
その言葉を聞いたメリーは部屋を出ようとする。
「メリーちゃん、どこに行くの?」
「ちょっとこの街を歩いてみようかと思って」
メリーはそのまま扉を閉めて外へと出ていった。
空は暗く湿気た空気がまとわりついているが、メリーはあまり気にならなかった。
「いい街ね、気に入りましたわ」
そんな少し浮かれた気分で歩くメリーの少し後ろに赤いトレンチコートをたなびかせた人物が現れた。
「…見つけたぞ」




