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偽りに混ざる真実

山の麓に造られた駐屯地に出た初めての写真撮影をすましたリリスたち。

その後は帝都にベルヘンを送る予定だ。

一方敗走できたエロイス含めた五千人程度のテニーニャ兵は山を超えたところにある小都市に逃げ込んでいたが…

エロイスたちテニーニャ兵は昼夜関係なく無我夢中で撤退していた。 

エロイスとリグニンのとっさの判断により逃亡の機会を作り、なんとか捕虜にならずに敗走することができたのである。


そして一行は山を超え、少し遠いところにある小都市、『ランヘルド』へと逃げた。


ランヘルドは近くの鉱脈の採掘によって栄えた街であり、近年力を伸ばしていた少し有名な街であった。

そこなら全員過ごせるだけの余裕があるだろうと踏んだのだ。


その街にエロイスたち残兵五千人は乱れた列を作って街へと入場する。



向けられたのは思わぬ歓迎だった。


「おや?こんな街に観光ですか?ようこそいらっしゃい」


テニーニャ兵たちは戸惑った。


てっきり敗走してきたのだから石なり罵倒なり浴びせられるのもだと覚悟していた。


「すごい数だねぇ、宿足りるのかい?」

「きっとこの街を守るためにやってきたのですよ」


ランヘルドの住人たちは心から歓迎してくれた。

まるでアッジ要塞陥落を知らないかのように。


そしてその疑念は一人の少年の質問によって確信へと変わる。


「ここで目一杯休憩したあと、また要塞で迎え撃つんだよねっ?頑張って兵隊さんっ!」

「い…いや…そのことなんだけど…」


兵士が喋ろうとするのを将校が抑え込む。


「そうだ!あのロディーヤの奴らは我々と不落の要塞に恐れをなして逃げ帰ったっ!要塞がある限りあなた達は安全だっ!」


その言葉に住人たちは手を叩いて歓喜する。

テニーニャ国内ではまだアッジ要塞が陥落したことは伝えられていなかった。


「リグニン…これって…っ」

「そうだな、だけど知らなければいい事実もある、『要塞は陥落しました、そこから逃げてきました、この街も攻め込まれる可能性があります』なんて言ってみればたちまち袋叩きよ」


兵士たちも空気を察して、真実を告げるものはいなかった。


将校はさらに煽るように。


「しかも我々にはあのテニーニャの誇りシルバーテンペストがあるんだっ!これ以上の戦力があるのかっ!?負けるはずがないっ!」


住人たちは熱狂的にテニーニャ兵士を迎え入れた。


まるで激戦に勝利した英雄のような激しい出迎えとなった。


宿屋は寝泊まりしていた客を追い出し、ぜひうちにとテニーニャ兵を取り合った。

テニーニャの軍服を着た兵士が街を歩くとたちまち声をかけられ、将校や高官たちは娼婦とともに夜へと溶けていった。


こんな生活が送れるなら真実など告げなくていいと誰もが思っていた。


エロイスとリグニンもそんな待遇に満足した。


真実を告げても誰も幸せにならない、そう決め込んだ兵士たちは小都市を有りもしない勝利の渦に巻き込んだのだ。



夜になると、リグニンは宿に泊まりっきりでフロントの電話を使ってレイパスの生存を確認していた。


「…どう?レイパスいた?」

「いないって…レズーアン大尉の連絡ないし…やっぱりあの要塞の時に…」

「そっか…」


待遇に満足していたものの、やはり要塞での損害は心を抉っていた。


「このままでいいのかな、きっと私達がこの都市に逃げ込んだってことは国には知られていないんだよね…」   

「たぶんね、捕虜になったか全滅、みたいに言ってるかも」  


エロイスはフロントに置いてあった新聞記事に目を通す。  


「『神兵、銀鷲とともに鬼畜を撃退!鉄の要塞、未だ陥落せず』…これが国内での真実…」


エロイスは少し悲しげな表情をすると新聞を置いて部屋に戻って行った。


そして別途に寝っ転がって、目を閉じる。


「レイパス…大尉…このままじゃもっとひどいことになる、みんな嘘をついている…だめだ…どうしたらいいんだろう…」


するとトントンと部屋のドアを叩く音が聞こえた。


エロイスがガチャッと扉を開けるとそこには酒瓶形に顔を赤らめたフロント少佐がいた。


「少佐…っ!なんの御用でしょう…?」

「いや特にないが…なんか寂しくなった…少しこの部屋にいさせてくれないか…」


少佐はエロイスの許可も取らずに勝手に部屋に入ってきた。

そして窓の外を眺めながら。


「この街はいい…安眠できる、

基地や戦地で寝ていたときと偉い違いだ」


そして酒をラッパ飲みして飲み干すと、エロイスに一方的に話し出す。


「人間は夜、特に寝る前が一番不安なんだ…今まで気にしなかったようなことを思ってしまってとこについても何故か落ち着かない…明日学校かぁ、会社かぁ、月曜日かぁ…私はそんな不安を取り除いて無心の安眠を求めているしそれが人生のモットーだ。

そしてこの街はいい…誰もが不安を口にしない、ここまで安泰な気分は開戦以来初めてだよ」


少佐の語り口にエロイスが水を差す。


「でも…それは…偽りの安泰です…実際はただ逃げてきただけなのに…」  


それを聞いた少佐は殻になった瓶を机に置くと扉に向かってあるき出した。


「…あれ…?もう行っちゃうんですか…?」


少佐は扉の前に立つと鍵をガチャンと締めた。

エロイスはその行為を見て少し笑う。


「やだなぁ少佐、内側から鍵かけても外に出られませんよ」


それを聞くと少佐は身を翻していきなりエロイスに抱きついた。


「…っちょぅ…っ!?少佐…っ!?」


抱きついたまま、エロイスを運び、ベットへと押し倒す。


「…ど…っ…どうしたんですか…?もしかして酔っ払っちゃってます…?」


そして少佐はエロイスに馬乗りになったまま、赤いコートを脱ぎ始める。


「…この部屋は熱くてかなわん」


エロイスも雰囲気に負けそうになるも、なんとか自我を保って抵抗しようとする。


だが大柄な少佐はエロイスの色白でか細い腕を簡単に抑え込めてしまった。


「エロイス…今晩だけだ…今晩だけだだけ許してくれ…この頭の不安を飛ばしてくれ…このままでは罪悪感で寝られない…今晩だけそばで寝かせてくれ」


少佐の顔はどこか苦しそうだった。


ランヘルドの住人を騙す形になってしまったその責任と重圧感、そしてもしバレたときの不安、そのせいでいよいよ寝付けず酒を飲み、エロイスを求めてしまったのだ。


その言葉の意味を理解したエロイスは抵抗をやめて、腕を押さえつけていた少佐の手に自身の指を絡ませた。


それを見た少佐も予想外の反応に少し驚く。


そしてエロイスは少佐の目をじっと見つめて。


「私…そういうの何も経験なくて…少し怖いですけど…けど…お願いします…優しくしてください…」


エロイスの扇情的な表情を見て堪らなくなった少佐がエロイスの軍服のベルトに手を出した。


ベルトは少佐によって外され、緩くなった軍服の下のズボンを下げる。


エロイスはそれを口に手を当てて、恥ずかしそうに少佐の方を見つめる。


エロイスのハリのある程よい太さの脚を動かして丁寧にズボンから抜け出させる。

 

エロイスは服をまといながらもその軍服の分厚いスカートの中には柔らかく、幼い女体がたしかに存在した。


「これ以上は流石に恥ずかしいか…?」


エロイスはコクリと首肯いて意思を表す。


そして少佐はその手を軍服のスカートの中へと伸ばした。


「まずは上からだ…嫌だったら言ってくれ…」

「は…っはい…っ」


エロイスの顔色が段々と赤みがかるのがわかる。


少佐が布の上から焦らすように撫で回すと、エロイスもそれに応えるようにいじらしく身をくねらせて少佐の劣情を煽る。


少佐の指先が段々と湿り気を帯びてくる。

分厚いスカートの下で少女たちだけの秘事が行われていた。


「しょ…少佐…っ……切ない…ですっ…口も…お願いしますっ…!」


エロイスがそう息を切らしながら懇願する。

少佐は空いた手でエロイスの頭を手繰り寄せそのまま顔を近づけて口へと唾液を移す。


エロイスも餌を欲する雛鳥のように口を開けて迎え入れる。


二人の体液の匂いが部屋を満たして、よりインモラルな雰囲気が二人をより禁じられた遊びへと誘った。


そして少佐がエロイスの頭に押し付けるように口をつけ、口内を下で念入りにねぶる。


吐息の一つも漏らさんというほど密着した口で、お互いの全てを混ぜ合わせた。


少佐が糸を引きながら口を離して。


「…長い夜になりそうだな」


少佐とエロイスの部屋の薄暗い電球は朝まで消えることはなかった。


二人は熱狂の街の夜の底で密かに溶け合ったのだった。



そして部屋に入れなかったリグニンはフロントのソファでなくなく寝るしかなくなってしまった。


「しょうがないじゃん…入れないよ…入れないよぉ…」

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