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悪夢、再び

ロディーヤ女子挺身隊では戦闘に備え少女たちが猛訓練を実施している。

敵国テニーニャ共和国へと侵攻するために。一方テニーニャ共和国内では百年前の雪辱を果たすべく世論は戦争に積極的になっていた。

そんな中、ロディーヤ女子挺身隊と同じく、テニーニャ国防軍という少女だけで編成された部隊があった。テニーニャ国防軍は来たるテニーニャへの侵攻に備える必要があった。

「相手は不倶戴天の敵、テニーニャ共和国!ちょうど百年前、テニーニャ帝国は無謀にも我が国に戦争を仕掛け、そして敗北した。戦勝国となったロディーヤ帝国は…」


ラジオからけたたましい男の声が聞こえる。


その声はテニーニャ共和国中に響き渡った。

その内容はスィーラバドルト皇帝がロディーヤ帝国兵士を激励する内容だった。


テニーニャ共和国にとって悪夢の始まりである。

百年前、テニーニャが共和国へと変わる前、テニーニャ帝国は領土拡大のため当時まだ小国だったロディーヤ帝国へと進撃、しかしロディーヤ帝国兵士は鬼神の如き力を発揮し、形勢逆転、テニーニャ帝国は敗北してしまった。


テニーニャの皇帝は退位させられ、市民革命が起こり、帝政から共和制へと変貌したのだ。


その後ロディーヤ帝国は植民地の力も借り、ぐんぐんと力をつけ、科学技術や金属加工技術での成長を見せつけた。


テニーニャにとってロディーヤ帝国の成長は悪夢の再来を予言していたのだ。そして今、それが顕著に現れ始めた。


八月八日に始まったロディーヤ対テニーニャ、この戦いは両国の戦争を知らない若者を沸かせた。百年前の大戦を知れるのは絵画に描かれた騎馬兵たち。

その勇敢な姿に憧れて次々と青年少女が前線へとの送られる。

テニーニャ共和国の大統領、ダイア・ダイカスは口頭で演説した。


「ロディーヤの皇帝が我々に宣戦布告を行い戦争を起こした!奴は必ず自分の血で代償を払うことになるだろう!テニーニャ共和国には、正義と自由がついている!」


そしてここにもまた一人、地獄へと送られようとしている少女が…。



「嫌だぁ!戦争なんか行きたくない!嫌だ嫌だ嫌だぁ!」


一人の少女が駅のホームで暴れている。

ボサボサな軽いくせっ毛オレンジ色の髪を揺らし乗車を拒む。

流れ出た涙がそばかすの頬に伝う。


「ほらっエロイス早く乗って!もう出発時刻過ぎてるって!」

「無理無理無理死ぬっ!ロディーヤは流石に無理っ!」


「早く載せろ保護者!」

「エロイスの親だろリグニン!なだめろ!」

「うるさいっ!ウチはエロイスの親じゃないって!エロイスっ!早くっ」


車内から怒号が飛び交う。

泣きじゃくるエロイスを引きずって車内に連れこむ。


「ひぐっ…ひどいよぉリグニン〜」

こいつの名前はエロイス・アーカンレッジ。

常日頃から弱気でなにかあるとすぐ泣きついてくる。正直幼稚と言う他ない。


「しっかりしてよエロイス、これから戦場へ行くっていうのに…先が思いやられる」

「うん…あの、さっきは迷惑かけてごめんね…」

「もういいよ」

「リ、リグニン…っ、ありがとう」

「じゃ、席に着こうか。窓側がいいな…、あっ相席いい?」

リグニンがずいずい話しかけていく。


「いいよー、よろしくー」

「じゃお邪魔しますっと。ほらっ、エロイスも」

「あっ、うん…よろしくね…」

「うんよろしくー」


しばらくは三人の間に静寂が訪れたが、それを打破したのはやはりリグニンだった。


「青い髪、きれいだね、青空に映えていい感じ」

「そうかなー、結構自信あるんだよねー私。

君の金髪もきれいでいいなー。そういえばまだ名前聞いてなかったなー。なんていうの?」

「ウチの名前はリグニン・アリーナッツ、よろしく」

「うんよろしくー。私はレイパス・グランダー。レイちゃんでいいよー」

「オッケーレイパス、よろしく」

「もー」 


リグニンの相手と打ち解ける速さは尋常じゃない。

こういう強心臓ぶりがないとエロイスの介護は務まらないのかもしれない。


「そういえば君、オレンジ色のボサボサ君」

「えっ?私っ?」

「うん、君以外にいないよー、お名前は?」

「えっと、エロイス・アーカンレッジ、よろしく…」

「うんよろしくー。君さっき乗車前に騒ぎを起こしていた子だよね?」

「あっ…ごめんねっあのときはその、か、感情的?になっちゃって…」

「全然いいよー、私そういうのあんまり気にしないしー。さっきの様子を見るに、リグニンがエロイスの保護者って感じなのかなー?」

「んー、まぁそうなるかな?不本意だけどね、こいつ、ウチがいないと一人で買い物もできないんだよ」

「ちょっ…リグニンそれはっ…」

「あははー内緒の話だったかなー?いいねー仲良さそうで」

「そうでしょ?ウチはほんとに仕方なく支えてあげてるだけで…」


その後も列車の走る音と共鳴するように会話も弾んでいった。


「あのっ…」

「んー…?どうしたのかなー」

「私っ、レイパスさんのこと少し怖いって思ってました…」

「あー!ウチもー!」

「えー、なんでかなー」

「なんか、レイパスのその紫の瞳を見てるとなんていうか…吸い込まれそうっていう…」

「わかるわかる!ウチも相席伺ったときからずっと!」

「えー、ショックー」

「ても、いい人そうで良かった」

「ほんとほんと、笑いながら人殺しそうだって心底思ってたもん」 

「イメージひどいなぁー」


談笑する三人を載せて列車はいよいよ国の北へと向かっていった。


テニーニャの北、つまりロディーヤとの国境。

列車はロディーヤとの国境近くの田園地帯に止まった。


列車からは次々と兵や物資が降ろされる。

しかし降りてくる兵は皆、まだあどけない少女たちばかりだ。

彼女たちはテニーニャ陸軍の少女隊、テニーニャ国防軍の一員なのだ。


「いいか貴様らっ!お前ら愚かなメス豚の共に国はテ

ニーニャ国防軍という立派な肩書をくれたのだ!産んで失せる事しか能がない貴様らを国の為に死なせてやると言っているんだっ!その名に恥じぬ戦い方をしろ!敵前逃亡?捕虜?ナンセンスっ!そんなやつはこの手で殺してやる」


テニーニャ国防軍


それが少女隊大隊の少女らに与えられた名前。


そして兵士の前で叫んでいるのはテニーニャ国防軍小隊の准尉、オーカ・ハウドポート。

赤髪のパッツンミニボブに吸い込むような黒い目。

テニーニャ国防軍の立襟のホリゾンブルーの制服に、ズボンの上からスカート、ケピ帽といった標準的な服装だが、その中身は悪魔に等しかった。


この前まで一般市民だった少女たちを一ヶ月という超スピード教育を施して戦場に送り込んだのだ。泣き虫なエロイスなど、なんど殴られたことか。


「今日も威勢がいいねーあの准尉。喉痛くなったりしないのかなー」

「さぁ?どうだろう?ウチはゴマ擦りまくって難を逃れたけど、エロイスにとっちゃあトラウマでしょ…あれ?エロイス?」

「おいっ!貴様っ!貴様だ!貴様!」

「ひぃぃぃぃっ!」


准尉が隊からこっそり抜け出そうとしていたエロイスを捉えた。

「貴様〜、どこへ行くつもりだぁ?もう戦死したくなったのか?」

「い、いえっ!とととと逃亡っ、じゃなくて、と、トイレへとですね…」

「ほぅ?嘘が下手だなぁ?あ?」

「い、いや…嘘だなんてそんな…ほんとですって准尉…」


パァンッ!


いきなり准尉の平手打ちが飛んだ。


エロイスの頬は段々と赤い手形が浮かんできた。


「国を守る人間がそんな体たらくでどうする?国を守るということは本質的に私を守ることにつながるんだぞ?貴様はそのために教育したのだ。

もっと自分を弁えろ。ではよろしく頼むぞ前線豚共」


座り込むエロイスと少女たちにそう言い放ち再び声を上げた。


「いいか貴様らっ!もうすぐロディーヤの糞野郎共が本格的な戦闘を仕掛けてくる!テニーニャを攻めるにあたり、確実にこの田園地帯を通ることになるはずだ!貴様ら国防軍小隊はそれを塞き止め奴らの進撃を遅らせるのだ!塹壕でも吶喊でもいいっ!とにかく時間を稼げ!百年前の雪辱を果たすぞ!愛しき我がテニーニャよ!永遠の幸あれ!復唱っ!」


「愛しき我がテニーニャよ!永遠の幸あれ!」

「愛しき我がテニーニャよ!永遠の幸あれ!」

「愛しき我がテニーニャよ!永遠の幸あれ!」



しばらくしてリグニンがエロイスの元へと駆け寄った。


「エロイス?顔、大丈夫?」

「う、うん…大丈夫…悪いのは私だし…」

「痛かったな、近くに川が流れてるから後で冷やしてやろう」

「ううん…本当に大丈夫だから…」

「本当?無理しないようにね」

「わーリグニンさまやさしー」

「お前が言うと棒読みされたみたいです腹立つな」


エロイスたちの心配を他所に、准尉が少女たちに向けて叫ぶ。


「おいっ!貴様ら準備はいいな!よく聞け!歩兵の仕事の七割は塹壕堀りだと言われている!貴様らの初任務だ!敵は北からやってくる!東西両方角に向けて塹壕を掘り進めろ!ここら一体は田園地帯だ!ぬかるみが多く足を取られやすいから気を注意しろ!では塹壕堀り!始めっ!」


笛の音ととともにシャベルや鶴橋での溝掘りが始まった。


言っていた通り土壌は柔らかくサクサクスコップが滑り込んでいく。


「結構掘りやすい土で良かったな」

「うん…こんなに泥に感謝したことはないなぁ…」

「ある程度掘ったら崩れぬように板で補強だ!即席の土嚢も使え!ここが第二の実家になるんだからな!快適に過ごしたければ丁寧に作れよ!」

「第二の実家だとよ」

「何いってんだが…まぁでも、クリスマスまでにはこの実家空き家になるかもな」

「この戦争もすぐ終わるさ」


塹壕を掘り進める兵士からそんな声が聞こえてくる。

「そうだ…うん…きっと、クリスマスまでには…」

そうつぶやきながら泥を外に積み上げていく。


「こんな重労働強いられてるんだ。クリスマスは迷惑かけまくったエロイスの家でパーティーだな、もちろん新しい友達も入れて」

「わー嬉しいなー、ていうか私、友達認定されてたんだ」

「もちろん、今までウチとこいつ二人だけで遊んでたんだけどね。レイパス、意外といいやつだから気に入った」

「ありゃりゃー嬉しいなー」


レイパスの頬が僅かに色づいた。


「でも戦争がなかったら会えなかったんだよねー私たち…」

「そうだなっ、でもっ」

リグニンが凝った肩をほぐし、レイパスの顔についた泥を拭った。


「レイパスがいるところなら、戦地でも行きたいって思えるかな」

「リグニン…」

「それにレイパスのその髪、きれいだからきっと戦争がなくても町中で見つけられると思う、うん、きっと見つけられた」

「…っ///」

「へへへっ…」

リグニンとレイパスがお互いに照れ隠すように笑う。


「えっ…えっ?わ、私抜きでなにやってんの…!」

「なんだエロイス、いたのか」

「ひどい!この浮気者っ!」

「はぁ!?ちょお前…」

「いいもんっ…私拗ねた。私の友達はこの土だけ…」

「そうかい、なら一生一人で塹壕掘っててくれ」

「大丈夫だよー、エロイスも十分魅力的だからねー。なんていうかー守りたくなっちゃう感じー?だからリグニンに好かれるんじゃないかなー?」

「はぁ…ますますわからん…なんで私がエロイスを好きだなんて…」

「本当!?好きっ?ママーっ!!」

「うわっ!よせやめろ!くっつくな!泥が移る!」

「あははははー」


ロディーヤの大群がいつ押し寄せてくるかもわか

らない。

機関銃や鉄条網を敷設してロディーヤを迎え撃つ。

来たるべき緒戦。

勝利はロディーヤか、テニーニャか。

テニーニャ国防軍

テニーニャの少女だけで構成された大隊規模の軍隊。

テニーニャ陸軍とは区別されて扱われるが同じ軍服。

立襟のホリゾンブルーの制服、金のボタンが4つ2列

ズボンの上から膝辺りまでのスカートをバックルで止めている

ケピ帽またはブロディヘルメット

靴に白い脚絆

薔薇のマークが右に刺繍されている

ベルトの左右に黒い弾薬ポーチに弾薬を収納できた。水筒とバックパックなどを保持していた。バックパックには飯盒が装着されている

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