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決断の時

突然基地へ赴いた皇帝陛下からリリスに告げられたのは飛行兵退役の話であった。

リリスは戸惑いながら迫る決断に思い悩む。

リリスは無言のままうつむきしばらくしばらく固まってしまっていた。


「大丈夫か?」


その陛下の一言でリリスは肩を跳ねるように反応してしまった。


自分の考え以外に頭が回らなかったリリスは陛下の言葉で顔を上げる。


「はい…少し考えさせてください」

「そうか…他の仲間たちとも話し合って良く決めてくれたまえ、私はしばらくこの基地にいる、お前の答えが聞けたら帰ろうと思う」

「はい…わかりました」


そう言うとリリスは席を立ち陛下に敬礼をするとその場を立ち去った。


その一部始終を気にしていなさそうな大尉は横目で見ていた。


リリスは基地の兵舎へと足を運びそして自分のベッドの上に腰を掛ける。


小さく狭いる兵舎であったが、今のリリスにはちょうどいいぐらいの暗さと静けさに包まれていた。


「はぁ…」


重い溜息を吐くとそれを見かねたかのように兵舎の扉が開きイーカルス大尉が入ってきた。


暗い室内に光が射し込みその光の中に大尉の姿があった。


彼女は扉を閉めるとリリスの隣へと腰を降ろした。


「…話は聞いていた」

「大尉…

…私はどうすれば…」


悩むリリスに大尉は真面目なトーンで話す。


「リリス、てめぇはどうして航空隊へ志願したんだ?」


その問いかけにリリスは言う。


「…私は早くから航空機に可能性を見出していました。 

高速で早く宙を舞う兵器、もしかしたら、戦争を早く終わらせられるかもしれないって思ったんです。

そして今回の戦いで確信しました。航空機はいずれ戦争の主力になる、もしかしたら戦艦すら凌駕するかもしれないって」

「ハハハ、そんな話があるわけ…

…ありそうだな、この前の戦いを見ると。

そんな話があるわけなって思っていたがこの戦いを経ていよいよ現実的になってきたな。


俺もお前の活躍を見て思ったよ。今までなぁんにも知らねぇであんなバケモノ兵器乗り回してたんだなーってよ」


大尉はそう言うと彼女の頭を優しい手付きで撫でる。


リリスはそれに照れくさそうに笑みを浮かべるとさらに言う。


「それでいいんです、みんなが航空機の可能性に気づいてくれれば、テニーニャに優位に立てて戦いを早く終わるようになれば。 

もしかしたら、誰がが気づきすぎてしまうかもしれないですけど…でもその可能性が平和の為に使われることを祈ります」


そしてキラキラした眼差しで兵舎の天井へと目を向けた。


「もしかしたら…もっ〜〜と大きな複葉機で空が飛べる時代が来るかもしれません、早く、自由に…外国のどこへでも、鳥のように」


その言葉を最後に二人の間に静かな情緒に満ちた雰囲気が漂う。


しばらくして大尉は尋ねる。


「それで、それでてめぇはどうしたい?

飛行兵として生きるか、再び歩兵に再配属されるか」


その核心を突く問いかけにリリスは真っ直ぐな眼差しと笑顔を向けた。


「『老兵は死なず、ただ立ち去るのみ』


…英軍の歌の一節です。 

この歌通り私の役割は終わりました、今後の航空機の発展を願いながら私はこの空から身を引きます。

ですけど軍歴を閉ざすきは全然ありません、目立たないよう帝国陸軍歩兵の一人としてまた頑張りますよ」


彼女は自分の役目は終わったと悟りそう笑って答えた。


大尉はその回答に少し驚くと、優しい微笑みで言う。


「…てめぇは良く頑張った方だ、俺の航空隊の認識もちっとは改めねぇとなぁ、今後は航空司令官のギーゼに言って航空隊の拡張でも試みるか、てめぇが遺してくれたものはドンドン活用していかねぇとな」


大尉は満足げに語るとリリスに陛下にそれを伝えるよう促す。


「さぁ、その旨を陛下に伝えろ。

遠慮なんかするなよのいくら相手が陛下だろうが自分の意志を貫くのは大事だ。

ほら行って来いっ」


大尉はリリスの手を引いて立ち上がらせると背中を押して兵舎から追い出した。


「もう…乱暴なんですから」


リリスはそう言うとそのまま歩みを進めた。  


そして先程と同じテーブルに座っていた陛下に対して言う。


「おおリリス、決めたのか」

「はい、私は飛行兵を退役します。

ですがまだ少女兵として退役するわけではありません。

陸軍歩兵として前線にて配属することを所望します」


すると陛下は目を見開き少し固まるが、すぐに柔らかな笑顔でそれを受け入れた。


「なるほど、前線を自分から望むか。   

いいだろう、もともと歩兵だったわけだしな、十分心得はあるであろう。

認めよう、お前を前線の歩兵部隊に配属するよう手配する」

「…っ!…ありがとうございます…っ」


リリスは喜びを隠そうとしていたが思わず顔に漏れ出てしまった。



陛下はそれを聞くと乗用車に同伴してきた兵士として乗り込みそのまま走り去っていった。


大尉やリリス、シュトロープは去っていく車へ敬礼をして見送っていった。

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