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生きて護国の鬼となれ

なんとか金塊を守り通すことができたギーゼ大将とルフリパ中将。

それ以上の戦闘は無理だと判断したルミノスとチェンストンはやむなく退散したのであった。

蒸気船から鉄橋へと渡ったルミノスを見届けたルフリパは思い出したかのように駆け出した。


「そうだ、大将っ!」


急いで階段を駆け下り一階へと降りる。


そこには腹から血を流し座り込んでいるギーゼ大将がいた。


「大将っ!大丈夫ですかっ!?」

「見てわかるだろ…」

「重症…」

「…重症に近い軽傷だ」

「えっ?」


軽傷だと言い張る大将にやや驚く。


「これで軽傷なんですか…?丈夫ですね…」

「まぁ…縫合が必要なのは確かだがな」


大将はルフリパの肩を借りながらゆっくり歩く。

そして父になる近くのベンチに座らせた。


一階の外側の通路のベンチの前には蒸気船の外輪がバシャバシャと回転しながら川面を泡立てていた。


マイナスイオンが漂うリラックスした空気が流れる。


「…それにしても、金塊を守り抜くことができて良かったですね」

「あぁ、奴らまさか二重にした船底の中に敷き詰められてるでは思わないだろうな」

「…まぁあんまりひねった隠し場所じゃないですけど…」


すると大将がゆっくりと立ち上がる。


「ああっ!一人で立たないでくださいっ!」


中将は大将の身体を支える。


「すまないな、この船旅が終わるまでには治療は終わるだろう、少し船医の元へ向かいたい」

「合点承知の助ですっ!よし向かいましょうっ!」


二人はゆっくりとその場を離れ船医のいる部屋へと歩き出すのであった。


すると突如街中にうるさいほどの警報が鳴り響き始めた。


不協和音が耳をつんざく。


「大将…」

「空襲だな、この街にも来るのか」

 

二人が空を見上げると既に敵の爆撃機が空を埋め尽くしていた。


真っ黒の翼を広げた大きな複葉機、ゴールドミルキーウェイが少し先の街の上空を隊列を成して飛んでいた。


「安心しろ、ここらへんには落ちてこない。

治療室ヘ急ぐぞ」

「はい」


二人は空襲警報の中、ゆうゆうと飛び回る爆撃機を遠くから見つめているしかできなかった。


「…ん?あれは…」

「どうかしました?」


敵の爆撃機を見つめていた大将、すると何かを見つけたのかふと足が止まった。


その瞬間、爆発音が響き、一気の爆撃機が突如煙と炎をまといながら高度を下げていく。

バランスを崩した爆撃機は機体をバラバラにしながら市街へと落ちていく。


「フッ、さすが頼もしいな。

あれが護国の国母だ」

「えっ」


中将は目を凝らす。

するとその黒い爆撃機の間を縫うように飛ぶ複葉機がいた。


「あれはっ…!!」


ルフリパ中将も思わず目を見開く。


「だっ…第一特別航空隊…だけじゃない…」

「あぁ、帝国陸軍航空隊の集結だ」



ゴールドミルキーウェイの間を飛び回る複葉機。


そのうちの一機、緑色した機体。

三葉機と主輪の間に渡された翼があり実質四葉機のようなロディーヤの機体、グリーンデイが飛んでいた。


それは第一特航隊、別名イーカルス航空隊のイーカルス大尉の機体だったかと思われた。


その機体は爆撃機の後席の旋回式重機関銃から放たれる弾幕をかいくぐりながら近づいていく。


そして操縦席のボタンを押し、機銃を放つ。

爆撃機の翼は機銃によってバラバラに砕け、破片を撒き散らす。


ついに双発のエンジンに被弾し黒煙が吹き上がり炎が出る。


「右エンジン被弾ーーっ!!」


搭乗していたテニーニャの飛行兵たちは叫ぶ。


ゆっくりと機体を傾けながら高度を下げていく爆撃機に彼女は敬礼をした。


「惜しい腕だったわ、またいつか地上で会おう」


彼女は微笑んでいた。

それはイーカルス大尉ではなくリリスだった。


飛行帽とゴーグルを装着しグリーンデイを自在に動かしていたのだ。


「どうだ!リリスっ!グリーンデイの乗り心地はっ!」

「はい大尉っ!視界は悪いですが駆動力は抜群ですっ!」

「よしゃあっ!ついにお前も俺の愛機の良さがわかったみてぇーだなっ!

俺についてこいっ!直掩しろっ!」

「はいっ!」


街の上空で敵の爆撃機とそれを撃墜するロディーヤの戦闘機とで空中戦が始まっていたのだった。


集まっていたのはイーカルス航空隊のメンバーだけではなかった。


「うわあっ!何だあいつっ!ものすごい速さで近づいてくるぞっ!!」


テニーニャ兵は勢いよく空から向かってくる一機のグリーンデイに機関銃を浴びせるも華麗に躱してながら近づいていく。


そしてバラバラと機銃を放ちながら爆撃機の側を通り過ぎていった。


すると爆撃機は爆発し火の粉と機体の破片が落下していく。


「ちょいと動きがにぶすぎるぜ、爆弾なんか積んで来るからだっ!!」


そう言いながらゴーグルを上げた青年がいた。


その青年はかつて飛行兵の訓練の合宿の時にシュトロープをいじめていた青年ツァルだった。


「こちら第二十七航空隊一番機隊長ツァル・カロリンガーっ!全機集まれっ!!」


彼の所属の青年兵たちの乗る白い複葉機、ホワイトデイが集まる。


「目標っ!爆撃機っ!!

これより見敵必殺っ!テニ公殲滅すべく一撃を与えるっ!!隊列を維持したまま敵陣へ突っ込むっ!スロットル全開だっ!生きて護国の鬼となれっ!」


ツァルはそう叫ぶ。


リリスたちだけでなく、各地の航空隊が集まり敵機と応戦していたのだった。


ギーゼ大将とルフリパ中将はそれを見届けつつ、丸いガラス窓のついた扉を開けて医療室へと入っていったのであった。

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