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イカロスの複葉機

ラインツィッヒへと侵攻を開始したロディーヤ兵たちだったが、その作戦は思いの外苦戦していた。

だがそんな中、軍令違反をしてまで応援に駆けつけたリリス達のイーカルス航空機。

機体の底に爆撃用の爆弾をくくりつけやってきた三機の複葉機はラインツィッヒの街の上空へと疾走と現れた。

川を渡って市街へと侵攻しようとするロディーヤ兵を次々と建物内から射殺するテニーニャ兵たち。


建物の中から撃っている兵士たちにもそのエンジン音が聞こえてきた。


「…?なんの音だ?」


銃声に混じって段々と大きくなる機械音。

 

兵士たちも次第にそれに気づき始める。


「よく聞こえないっ!銃声がうるせぇっ!」

「バカッ!撃つのをやめられるわけ無いだろっ!」


その瞬間、兵士たちのいる建物の屋上が突如音を立てて崩落し始めた。


「うわぁぁぁーっ!!!!」


煙と轟音が天井の屋根と共にテニーニャ兵士たちが押しつぶされてしまった。


それに伴いただでさえ廃墟同然の建物がガラガラと崩壊してぺしゃんこに潰れてしまった。


「さらばだ怨敵。

私の花嫁修業の糧になってくれ」


爆弾を投下し爆撃を浴びせたのは一人ホワイトデイに乗るシュトロープだった。


彼女は建物の崩壊を見届けたあと、街の中心に向け飛んでいった。


一方、リリスとエマールの乗る機体は岸の建物へ向け機銃の雨を浴びせていた。


「今だっ!」


リリスが操縦桿のボタンを押すと胴体の二丁の同調機銃から銃弾が発射される。

 

「うぎゃぁっ!」

「あぁぁーーっ!!」


機銃を連射しながら防衛線を通り過ぎる。

 

大きな弾頭がボロボロの建物の壁やガラスを突き破りテニーニャ兵たちを肉塊へと変えてしまった。


兵士たちは反撃する隙も与えられず、無惨にも殺されてしまった。


「くっ…!!」


リリスは操縦桿を引き、機体を持ち上げた。

 

「これで少しは…」


飛び交う友軍の航空機を見た川のロディーヤ兵たちはやる気を取り戻す。


「今だいけぇーっ!友軍の努力を無碍にするなぁーー!」


兵士たちは一層やる気を上げ、川を駆け抜ける。

  

テニーニャ兵たちは空を飛び交う航空機と攻めてくるロディーヤ兵。


防衛線のテニーニャ兵はたちまち為す術なく殺されていってしまった。


「あそこっ!」


エマールが後席から指をさすとそこにはいくつかのテントが張られている基地らしきものが広場に立っているのを見つけた。


「リリスちゃんっ!あいつらは世界の公害よっ!生ゴミは焼却処分しなきゃっ!」

「…よしっ」


リリスは操縦桿を押し、高度を下げ急降下してくる。


「おいっ!来るぞっ!」

「うわぁーっ!」


兵士たちや降下してくるリリスの機体を視認するとバラバラに散っていった。


「投下っ!!」


その途端、機体の底の爆弾が分離し基地へと落下していく。


そしてその爆弾はテントが張られている広場に着弾すると爆風が巻き上がりテントや近くの木箱やテーブルなど野外に置かれている家具なども吹き飛んだ。


雷の用な轟音と共に舞い上がった煙が晴れると大きな声クレーターが広場に出来上がっていた。


そして近くには巻き込まれたであろう兵士たちの腕や爆風によって吹き飛んだ木片や鉄筋が身体に貫かれて息絶えている兵士たちが散乱している。


「いっけぇ〜!火の海だぁっ!」


エマールの座る後席には柄付き手榴弾や丸い手榴弾が大量に搭載されている。


彼女は意気揚々としてその手榴弾を下にばらまいていく。

  

寂れた街に手榴弾の炸裂する音が連続して聞こえてくる。


時々兵士たちの叫び声が聞こえてくる。  

悲鳴から絶叫、うめき声や助けを乞う声が。


「…っごめんなさい」


リリスは申し訳無さそうな声でそう呟いた。


そんな時、イーカルス大尉のグリーンデイが近づいてきた。


「リリスっ!」

「大尉っ!なんですかっ!」

「敵機がくるぞっ!気をつけろっ!!」


大尉がそういった瞬間、銀色の複葉機が街の彼方から隊列を組んでやってきた。


その数、約十機。


テニーニャ軍の複葉機、シルバーテンペストがやってきていたのだ。


プロペラ同調装置により前席に機関銃一丁、後席にも旋回する機銃が取り付けられている二人乗りの航空機が向かってきていた。


焼夷ロケット弾が搭載され主翼の支柱に取り付けられており、発射はコクピットからの電気点火により行われる。


「リリスっ!堕とすぞっ!死ぬんじゃねぇぞっ!」

「解りましたっ!シュトちゃんっ!」


リリスが叫ぶとシュトロープの乗るホワイトデイが近寄ってくる。


「やはり私が必要か、至極当然だ」

「いや…生きてるか確かめただけだけど…っ」


イーカルス大尉を中心とした航空隊が敵の複葉機とまもなく交戦する。


「行くぞっ!第一特別航空隊っ!まもなく敵機と交戦するっ!天気は快晴っ!風はなしっ!状況は最高っ!これより会敵すっ!」


リリスたちはやってきたシルバーテンペストへと接近していく。


「やれっ!イカれた狂犬共を叩き殺せっ!」


テニーニャの飛行兵たちは主翼の支柱に取り付けられた焼夷ロケット弾を次々と発射し始めた。


ロケット弾は白い煙の軌跡を描きながらリリスたちへ向かってくる。


「散れっ!命令は唯一っ!見敵必殺だ。

畜生も住めねぇ様にしてやるぜ」


彼女達の三機はやってくるロケット弾を避けるべくそれぞれ別の方向へと向かっていった。


ロケット弾は彼女達の機体には当たらず速力を落として地上の廃墟の街へと落下いていった。


「リリスちゃんっ!後ろにつかれたっ!」

「了解っ!真上に旋回するっ!」


二人の機体の後ろにはピッタリとシルバーテンペストが張り付いている。


「エマちゃんっ!手榴弾で目を潰してっ!」

「任せよっ!あらよっと!」


エマールは束ねた柄付き手榴弾の木製の柄の底から紐を引っ張って点火するとまとめて下に放り投げた。


「わっ…!」


手榴弾はリリスを目指して上昇する敵機乗る真上で爆発した。


すると手榴弾の破片が前席のパイロットの顔面に突き刺さった。


「ぎゃぁっ…!」

「大丈夫かっ!しっかりしろっ!」


これにて目を潰したかと思いエマールが「よしっ」とガッツポーズを取ったが、敵もなかなかしぶとかった。


「畜生…やりやがったな」


前席のパイロットは腕で、目を覆い、破片が目に突き刺さるのを防いでいた。


だがその代わり、野戦服の腕の袖から出血をしており、傷から流れ出る血が機体の後ろへとなびいていた。


「駆逐だロディーヤ野郎っ!女だからって容赦せんっ!」

「リリスちゃんっ!あの男しつこいっ!」

「…たくましいね」


リリスは操縦桿を思いっきり引いた。


「エマっ!しっかり捕まってっ!鼓膜を潰さないようにねっ!」

「えっ!?」

 

リリスのホワイトデイは突如、上空で旋回し背面で飛んだかと思うと上昇してくる敵機へ向かって突っ込んでいった。


「うわぁっ!あのクソアマっ!」


テニーニャ兵がすぐさま機体をずらす。 


「今だっ!エマっ!入れろっ!」

「うごぉ…っ!」


すれ違った瞬間、エマールは安全ピンを抜いた手榴弾を敵機の後席へと投げ入れた。


ホワイトデイはすぐさま地上へ向かいその場を離脱した。


「クソっ…!追うぞ!」


前席のパイロットが操縦桿を押し出し始めた。


「そのまま楽園まで昇って爆ぜな。

貴方の機体の蜂蜜と蝋で作られた翼でね」


エマールが手を顔の前に広げてポーズを取った瞬間、敵のシルバーテンペストは閃光を放って爆発を起こした。


黒煙を纏い、火を灯しながら跡形もなく崩れていくシルバーテンペスト。


リリスの機体は地上付近で水平に持ち直して安定して飛んでいた。


「お゛ぉっ…遠心力で死ぬかと思った…」

「ナイスコントロールっ!」


リリスは後席のエマールに向かって親指を立ててグッドをした。


順調に撃破していくリリスたち。


だがそんな彼女はたちにいよいよ試練が訪れることとなる。

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