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恐怖は過去の産物

突如現れた刺客シャルハン。

彼女は裏切ったバッタンキューとイーカルス大尉の殺害を目論み航空基地にやってきたのだ。

果たしてリリスたちは彼女の魔の手から逃れられるのだらうか。

シャルハンは片手に持った三本のナイフの刃を扇のように広げギラつかせてながら近づいてくる。


「キューちゃん…逃げるよ」

「えっ…」

 

リリスはバッタンキューの手首を掴み兵舎の外へと連れ出そうとする。


「殺すわっ!!」


シャルハンが片手に携えていたナイフ飛ばそうと逃げる二人に向け大きく腕を横に振った瞬間、バッタンキューがそばにあったベッドの薄い掛け布団を広げて逃げる二人の姿を覆った。


彼女はそれでも腕を振りナイフを三本の飛ばす。


ナイフは広がったシーツに突き刺さり勢いをなくしてシーツと共にその場に落ちる。


すでに二人の姿はなかった。


「…落ち着くのよ私、こんなことで私へこたれん…」


シャルハンは息を整え落ちた三本のナイフを拾った。


 

その頃、逃げたリリスとバッタンキューは兵舎から離れた格納庫へ向け走っていた。


「リリスっ!格納庫になら武器があるはずっ!急げっ!」

「うんっ!」


二人は頬に汗を垂らしながら格納庫へ向かっていた。


すると突如、近くの低木からシャルハンが飛び出してきた。


「君共が行く先なんてお見通しなのよっ!!」


よく見るとシャルハンの手には低木から伸びるホースを持っていた。


「何をする気だっ!」

「バッタンキューっ!!これから丸焼きにしてあげるわっ!」


そう言うと彼女のホースから勢いよく水が噴き出した。


「きゃっ!」

「なんて幼稚なっ!そんなんで俺らがっ!死ぬとでもっ!」


水の中を二人はずいずい進んでいく。 


「その程度の水じゃあ俺は止められないぞっ!」

「言ったでしょ、丸焼きにしてあげるって。

豚のペニスにも負けずとも劣らない君たちははぁっ!これから屠殺されるのよっ!!」


シャルハンはそう言ってホースを捨てると二本のナイフを空へ向かって投げた。


「狙いが外れ出るぞっ!シャルハンっ!!」 


バッタンキュー足元にできた水溜りをパシャパシャと走り、もう少しでシャルハンをぶちのめすことができる距離までに近づくが、その時リリスの声が響いた。


「キューちゃんっ!!危ないっ!!」

「ああっ!?」


見るとリリスは切れて垂れ下がってきた電線を両手で掴んでいる。


「なっ!?」


バッタンキューが上を見るともう一本、電線が垂れ下がってきていた。


「クソっ!ド畜生がっ!」


すかさず電線を両手で掴む。


「キューちゃんっ!断面を濡れた箇所に当てちゃだめだよっ!感電しちゃうっ!」


気がつくと二人の足元には水溜りができている。


「電線を掴むのをやめ、その水溜りに電気の通る断面が浸かろうものなら二人とも感電して黒焦げになるわ。

君たちはその場から動けない、ただの肉の的って言うこと。

もう一本あげるわっ!!」



彼女がナイフを投げると別の張ってあった電線が切れ垂れ下がってきた。


「来るぞっ!!」


もう一本が切断されると電線は左右に垂れリリスとバッタンキューにそれぞれ落下してきた。


「うぉぉぉぉーーーっ!!!弄びやがってぇーっ!!」


二人はなんとかもう一本の電線を掴むことができた。


「さぁて、もうその場から動けないっ、動くということはすなわち電線を手放すということ、電線を手放せば断面が水溜りに浸かり間違いなく感電するっ!」


シャルハンは残った三本のナイフをジャグリングのようにぐるぐると手の上で循環させている。

余裕綽々といった感じだった。


「どうすれば…」


バッタンキューが頭を悩ませているとリリスが言った。


「キューちゃん、空を飛ぶの。

空を飛べば電線を持ちつつ水溜りから離れることができる」

「はぁ…?リリスお前こんな時に何を…」

「キューちゃんがシャルハンに近い…私じゃ届かないからキューちゃん、貴方がやらなきゃ」

「空を飛ぶ…?」


リリスの抽象的な発言を少しぐ考察するバッタンキュー。

だがシャルハンはそれを許さない。


「何ゴニョゴニョ喋っている!そうは問屋が卸さないっ!ここれで任務は完了するっ!」


シャルハンがナイフを投げようとした瞬間、バッタンキューは両手に持った電線のより上部を掴むとダッシュでシャルハンに走ってきた。


「ド低能がっ!電線を持って近づいたところで私には届くまいっ!」


そして彼女は三本のナイフを投げる。


銀色の閃光はまっすぐバッタンキューに近づいてきた。


だがバッタンキューがあろうことがその閃光の行く先から姿を消した。


「なっ…!?」


バッタンキューは宙に浮いていたのだ。


助走をつけ、二本の電線の上を掴んだ腕で身体を浮かし、空中ブランコのように宙に浮いていたのだ。


「屠られるのはお前だぜっ!シャルハンっ!」


バッタンキューは両足を伸ばし振り降りて軍靴の底をシャルハンの顔面にぶち当てた。


「ぶぇぇーっ!!」 


シャルハンは唇と鼻から血を出しながら後ろに蹴っ飛ばされた。


「よっと…」


まるで体操選手の着地のようにピンと身体を伸ばしたバッタンキュー。


「わっ!わっ!キューちゃんっ!電線っ!!」

「あっ、しまったっ!」


バッタンキューが手を離した電線はリリスのいる水溜りへと帰ってくる。


なんとかバッタンキューはそれを掴み、水に浸るのを阻止した。


「リリスはどうするんだ?」

「中途半端に電柱にくっついているから、この水溜り丁度に垂れてくる、だからもっと引っ張って次の電柱まで外す」

「お、おう…」


なんとも強引なやり方でその水溜りから脱出し、電線の断面を水のない土の地面に置くことができた。


「さて、問題は」


二人は濡れた服を纏いながら伸びているシャルハンに近づく。


「どうしてやろうか、こいつ」


バッタンキューが片膝立ちで横たわっているシャルハンのそばに屈む。


「ううっ…痛い…クソっ…また…」

「ああっ俺の蹴りが強すぎるって意味だよな?」

「黙れっ!!」

「おわっ!」


シャルハンはどこに隠していたのか、もう一本のナイフを振り回しバッタンキューを離れさせた。


「クソっ…頭が痛い…こんな時に…畜生っ…あのクソ親めっ…ぃっ…!!」

 

頭を抱えて苦しむシャルハン。

彼女の過去に一体何があったのだろうか。

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