突然の告白
地下道を通って小都市アズの中心近くまで入り込めたエロイスの中隊。
そこでロディーヤ兵の蛮行を目撃し必ず奪還しなければならないとは強く思ったのであった。
一歩、リリスたちイーカルス航空隊の航空基地にて日々を過ごしていたリリス、彼女はどの様に過ごしていたのだろうか。
青々とした空が眩しいほどに広がっている。
地上には田園地帯の耕地が広がっておりのどかな雰囲気を醸していた。
だがそんな上空で二機の複葉機グリーンデイが複数機のシルバーテンペストが空中戦を行っていた。
「オラオラオラっ!!かかっこてこいっ!!」
イーカルス航空隊一番機隊長のイーカルス大尉が上空からグイグイと敵機に近づいていく。
シルバーテンペストの後席の機関銃を上からくる大尉に向けて浴びせるが大尉は左右に回避行動を取りながら近づく。
「今度はこっちの番だぜこの野郎バカ野郎っ!!」
大尉が操縦桿のボタンを押すと機首の機銃がズダダダダダタと火を吹いた。
弾頭は敵機を横切るように撃つと翼がバラバラに分解して落ちていった。
「いい腕だったぜ、そのまま地獄へ着陸しな」
黒煙を上げながら落ちていく機体を見て人差し指と中指の二本の指を額に敬礼の様に当てるとその指先を外ヘ向けた。
一方、大尉とは少し離れた場所でも空中戦は行われていた。
シルバーテンペストが一機のグリーンデイに執拗に追い回されていた。
「なっ…!なんだあの機体はっ!?食いついて離れないぞっ!!」
「もう後席の機関銃の弾がないっ!相手が後ろにくっついている限り落とせないぞっ!」
動揺するシルバーテンペストの二人のパイロット。
その相手はイーカルス航空隊の二番機、バルトネラ・アルチューネ軍曹だった。
長い長い髪を飛行帽の中にしまい、つなぎの下に着ている薄手の黒いタートルネックの首の襟を鼻まで覆うように伸ばして顔を覆っている。
そのギョロギョロしていると目は相手を確実に撃ち落とすという気概を感じるものだった。
「っ!!捉えたっ!」
アルチューネが機銃を撃つとその無数の弾頭は敵機のシルバーテンペストに雨のように浴びせられた。
「ぎゃぁァーーっ!!!」
中途半端に浴びてしまった全席の操縦席の兵士と後席の銃座の兵士は全身から噴き出る鮮血と痛みに気が狂いそうになった。
そしてそのまま機体はフラフラと地上ヘ向け落ちていった。
「…よし、酔いが抜ける前に倒せてよかった、下手したら手が震えてまともに…」
アルチューネがそう独り言を言っていると戦闘を終えたイーカルス大尉が上空からゆっくりと近づきアルチューネと並んで飛ぶ。
「あれで全部だなっ!」
「任務完了、只今より帰投するっ!!」
二機は並んだままそらの果てへと消えていった。
その二機は湖のほとりにある航空基地の滑走路目掛けてやってきた。
「来たっ!無事に帰ってきたぞーっ!!」
数人の整備兵たちが手を上げて出迎える。
二機は滑走路に差し替えるとゆっくりと速度を落として着陸した。
イーカルス大尉とアルチューネ軍曹はゴーグルを頭に上げ飛行帽を外す。
アルチューネは長い黒髪がブワッと開放されたように広がる。
そしていつもの地面に付きそうなほど長い髪と顔を隠せるほどの前髪へと逆戻りした。
「おうおう、出向かてくれるなんて嬉しいぜ、リリス、リリスはいるか?」
タがそう呼びかけるとリリスが駆け寄ってきた。
「帰ってきたぞ、なに、ただの偵察していた戦闘を地獄に落としただけだ、難しい仕事じゃない。
もう少し敵勢が大きくなったらてめぇも実戦できるだろうよ」
「はいっ!何より無事で良かったですっ」
リリスが大尉に敬礼するとアルチューネ軍曹もやってくる。
「うちにもその言葉言って言って」
「えっ、あっ、アルチューネ軍曹も無傷での帰投おめでとうございます」
アルチューネの行動に大尉は呆れていた。
「全く…」
三人が野外の席で雑談に興じていると遠くから一台の輸送車がやってきた。
航空基地を駆け抜けリリスたちの目の前に荷台の方をリリス達に向けて車を停めた。
「あ?なんだコレ」
イーカルス大尉が立ち上がって荷台に近づくと緑のシートで覆われた荷台暖簾のようなもので仕切られた入り口がブワッと開いた。
そして荷台の中から二人の少女が開いた入り口の荷台に立ってポーズを取っていた。
「あっ…!みんなっ!」
リリスは思わず声を上げた。
「花鳥風月が嫉妬する可愛さを持った私はエマール・ルヴォルージュ伍長っ!」
「…私はこの戦いが終わったら参謀総長ハッケルとリリスと結婚する…シュトロープ・アーケルン伍長だ」
その登場の仕方に大尉と軍曹は呆れていたがリリスは目を輝かせて荷台に近づいてきた。
彼女たちは荷台から降りとリリスに向かって言う。
「しっかり認証されたぞ…私が、いや私達ができますイーカルス航空隊に所属するにふさわしいと」
「久しぶりっ!リリスちゃんっ!会いたかったよぉ〜」
エマールがリリスの身体に抱きついて頬をする。
「エマちゃんも、シュトちゃんも…ちゃんと来れたんだね」
嬉しそうにいうリリスにシュトロープは真顔で言う。
「当たり前だ、私はリリスの匂いと身体が欲しい一心でやってきた、今夜は好き放題させてもらうぞ」
「あ、あははっ…」
そんな騒がしい三人を見て大尉と軍曹は顔を見合わせて言った。
「騒がしくなりそーだぜ、うるせぇのはてめぇだけで十分なのによ」
「はーん、嬉しいくせに」
「あたりめーだろ、愛する部下が増えるってのはいいことだぜ」
リリスはやってきた二人に航空基地を案内していた。
「それで、ここが兵舎」
リリスは最後にベッドが並んで置かれてあるかまぼこ型の兵舎を案内した。
「へぇ、にしても飛行兵の数の割に兵舎は多いな」
「前はもっと居たらしいんだけどみんな死んだか神経症で外されたんだって」
シュトロープの問いにリリスが答えて兵舎の扉を開ける。
そこには小さな窓側にベッドが縦に並んでいた。
「やったぁ!お休みっ!」
エマールはベッドに飛び込んでボヨンボヨンと跳ねる。
「柔らか〜いっ!リリスちゃん、シュトちゃんっ!エマ今楽しいっ!」
子供のようにはしゃぐエマールに二人は微笑ましい笑顔で見守っていた。
「…なぁ、リリス、一つ聞くがトイレってどこにあるんだ?」
「えっ、あぁこっちにあるよ、来て来て」
シュトロープとリリスははしゃぐエマールを置いて兵舎の外に出ていった。
「この兵舎の裏手の茂みにするんだよ」
「…へぇ、そうなのか」
二人が兵舎の裏へ周り茂みへと向かう。
「この先にね……あれ、シュトちゃん…?」
茂みに向かう途中、シュトロープが足を止めた。
そしてリリスを鋭い目つきでじっと見つめていた。
「しゅ…シュトちゃん…?」
すると突然、シュトロープはリリスの手首を掴み兵舎の建物の壁へと押し付けた。
リリスは壁を背に押し付けられ掴まれた両手首のせいで身動きが取れなくなった。
「ちょっ…シュトちゃん…?いっ…いきなり…なに…?」
シュトロープは慌てふためくリリスの顔に自分の顔を近づける。
「しゅ…シュトちゃん…っ!?まだ…そういうのは…っ」
リリスは迫りくるシュトロープの顔から逸らすように顔を下に向け目を閉じる。
シュトロープの息が鼻や唇に当たりリリスも覚悟を決めた瞬間、彼女の口から思いもよらぬ言葉が出てきた。
「…知っていることを、すべて話せ」
「…っ!?」
いきなりの言動にリリスは目をパッチリ開いて耳打ちしてきたシュトロープの顔を見る。
「…なっ…なんの…ことっ?」
シュトロープは以前として鋭い目でリリスの目を見つめていた。
「祖国の敗戦、楽園、参謀総長と白の裁判所…私はここまでしか知らない、だが彼女の口からリリスの名前が上がっていた。
どういう因果があるのか、洗いざらい吐いてもらうぞ」
突然のシュトロープの告白。
リリスや死んでいった仲間しか知らないはずの参謀総長の計画をなぜ彼女は知っているのだろう。




