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白い告発者

無事塹壕へと向かえたリリス・サニー一同。

銃撃と聞かされていたが実際にはただの銃声であり、エル・ルナッカーはそれを理由にハッペルへ攻めるよう指示する。

しかしルナッカーを呼んだ陸軍将校はルナッカーに慰安を要求した。

そんな塹壕付近へ『白の裁判所』の最高指揮官、ルミノス・スノーパークがやってくる。

一夜明けた塹壕付近ではパンの配給が行われていた。

リリスとルナッカーは早々に起床し、ほかの挺身隊の起床を待っていた。


「起きろ、間抜けたち起床の時間だ」


「んにやぁ〜…あ、ルナちゃん…」

「その名前で俺を呼ぶな!いいから起きろ朝飯の時間だ!」


起床したウェザロたちは少尉についていき、朝飯を受け取る。

「わぁ…これはいい匂いですわね、どこの麦を使っているのかしら」

「うんうん、美味しいなぁもぐもぐ」


少尉も配給を受け取ろうとすると、そこには昨晩の陸軍将校が配給を配っていた。


「…っ!お前は…っ!」

「やぁルナッカー少尉、おはよう」

「…っ」


少尉は配給を受け取ると足早にその場をあとにする。

少尉は配られたパンを頬張るがあまりいい味とは言えないパンを喉に押し込む。

不思議といつもより噛む力が強くなっている気がした。


そこに一両の車両が近づいてくる。

輸送車とは違う黒塗りの高級車だった。

その一際異彩を放つ車に挺身隊員も帝国陸軍兵も釘付けになっていた。


するとガチャッと扉が開きそこから制帽を被りトレンチコートを身に着けた一人の軍人が現れた。

それは紛れもない『白の裁判所』の最高指揮官のルミノス・スノーパークだった。


(あ…っあいつは…!)

少尉の顔がこわばる。

リリスたちは初めて見る顔に困惑する。


「誰かな…あの人」

「さぁ〜わかんね、きっと偉い人なんじゃない?」

「でも見たことありませんね…そんな人なら私達も知っているはず…」

「少尉…あの人…」


リリスが少尉の顔を伺うが、少尉のこわばった表情を見て言葉をつまらせる。


陸軍将校がルミノスへと仰々しく近づき挨拶をした。


「おはようございます」

「お前か陸軍将校は」 

「はい」 

「今日はこのルミノスがこの地へわざわざ時間を割いて来てやったんだ、感謝しろ」


ルミノスが兵士全体を見渡すとそこに少尉の姿が目に入った。


「ああ、ルナッカーじゃないか災難なったなぁ」

「なんだいきなりなにしに来た」

「この陸軍将校を呼ぶよう言われた、トップのトップ、かの参謀総長からだ」


その瞬間隊の雰囲気がピリつく。

参謀総長の名前が出ると誰も突っかかることができない。

陸軍将校はうろたえる。


「わ、私が…?参謀総長から…?」

「そうだ貴様だ。

すぐに車に乗り込め、あんな高級車に乗れるなんてこれで最初で最後だろうな、ゆっくり話そうか」


陸軍将校が車に押し込まれそのまま扉が閉まる。


「狼藉失礼したなぁじゃこれで、あとルナッカー、別に貴様の肩を持つわけじゃないからな」


そう言うとルミノスも陸軍将校とは反対側の扉に乗り込んだ。

そのまま車は立ち去ってしまう。


「…あの将校さんなにかしでかしたのかしら…?」

「わからないよメリー、もしかしたら勲章授与かも」


ルナッカーは突如として現れたルミノスの行動に疑念を抱かざるを得なかった。


「なんなんだ、あいつ…私の邪魔をするんじゃなかったのか…?」



車の中では入れまでにないほど冷たい空気が流れていた。

「おいカスやってくれたなぁ?おい」


陸軍将校の額に汗が滲む。


「や、やっぱり参謀総長なんてうそ…」

「あぁ、嘘だよハゲ。お前、ルナッカーに何をした?言ってみろ」

「私はなにも…っ!」

「いいやしただろ、はっきりといえ。 

私はエル・ルナッカーの清純を汚しましたと言え」

「…っ!?あの野郎告げ口したな…!」

「いや、私が勝手に探った。

舐めるなよ、犬は嗅覚がいいんだ」

「い、いやあれは…そう!陸軍の士気を高めるために…」

「別にルナッカーの肩を持つわけじゃない…なんなら不本意ながらルナッカーを助けてしまったことになるが、性に関する不祥事は私個人で許せない。

私情でだ、私情で許せない」

「いいや、しかし軍の士気を高めるためにもあれは…」


ルミノスが陸軍将校の額に爪をつきたてる。


「黙れ原始人、どこの国の軍が士気を高めるために女を勝手に犯していいだなんてのを許すんだ?少々悪知恵がついたようだな、出生地はどこだ?猿山か?」


落ち着いて足組をして指を組む。


「…それに、仮に女がいたとしても士気なんぞ上がらないだろ?」

「そんなことは…」

「なんなら男とのほうが良かったんじゃないのか?」


陸軍将校の顔が驚く。

ルミノスの傍聴能力は恐ろしい、隠し事など一切できないような目と耳の持ち主だった。


「何を馬鹿なことを…!」

「知ってるんだよ、お前みたいなやつはだいたいそうだ。

卑しくて汚くてゴツゴツした体、見るだけで吐き気がする、私の父親と同じだな」

「何の話だ…っ、それにお前に私の何が…っ」

「全てだ、全てわかる、男の悦びも、女の悦びもな」


ルミノスが陸軍将校に優しく微笑む。

ギラリと光る眼光が陸軍将校を縮こまらせた。



「…っ?どういうことだ…?」

「そのままの意味だ、男の悦びも女の悦びも両方知っているということだ」

「…っ!何を分けのわからないことを…っ!」


ルミノスが将校に迫る。

陸軍将校に逃げ場はなく、そのまま端に追いやられてしまった。

そして陸軍将校に耳打ちする。


「私はオスだメスじゃない、メスだがな」

「…っ!?!?何を戯れ言を…っ!そんなことあるもんか!」

「将校、世の中は目に見えるものだけが全てじゃない、目に見える光景が真実だなんてどこの誰も保証していないぞ」

「それにしてもそんなことはあるはずない…!男と女の中間だなんて…!」


ルミノスの口角を釣り上げて笑う。

白い犬歯が不気味にテラテラ光る。

そして斜め上を見上げて。


「あ〜お前は排尿楽だろうなぁ〜?無い私と違って、な?」


「排尿…っ?な、無い…っ!お、お前まさかっっ!?!?」

「御名答、"済"でしたぁ〜」


ルミノスがてらてら笑う。

その笑みにはにじみ出る狂気が隠れていなかった。

将校はその笑顔を見て動揺が隠せない。


「去勢してるってことか〜っ!このカマホモ野郎っ!!!!」


ルミノスが将校のすぐ目の前まで顔を近づける。

将校の鼻をルミノスの甘い吐息がくすぐる。


「なりたくてなったわけじゃない、だがなってしまった以上そうなるしかない。

シュレディンガーの猫だなまるで、パンツをどかしてみるまで男か女かわからない」

「何を分けのわからないことをっ…」


ルミノスと将校を乗せた車が止まる。

周りを見渡せば家一軒すらない、辺鄙なところへきていた。


「ルミノス指揮官、このあたりでよろしかったでしょうか?」


運転手が口を開く。


「ああ、ご苦労。さぁ降りろ猿」 


そしてルミノスは車の中にあった二本のサーベルを取り出し、将校へ向ける。


「ひぃ〜〜っ!!!」

「そのまままっすぐ森へ入れ、運転手はここで待ってろ。五分で終わらす」


ルミノスと将校はそのまま暗い森の中へと入っていった。


「一体私をどうする気ですか、たった一回ぐらい…」

「一回がなんだ、二回目からはアウトなのか?言ったはずだ、私は性犯罪者には容赦しない」


二人が森の深部へと入るとルミノスが二本のサーベルの鞘を抜く。


サーベルの刃が反射して白虹に光る。


「う、嘘だろ…!いくらなんでも殺しは…!」

「三回も言わせるな馬鹿畜生、それに私は参謀総長お抱えの『白の裁判所』の最高指揮官だ、殺しも黙認してくれる、むしろ黙認してくれなければここまで来れなかった」

「白の裁判所…っ!?なんだそれは聞いたことないぞっ!?」

「崖っぷちの貴様には関係のない話だ、私はその一歩先にいる。

崖の奈落の底で着々と画策した計画を迎える為にな」


ルミノスがサーベルの刃を舐め十字に構える。


「私たちは参謀総長の代理人、審判の地上代行者…

さぁ屠畜の時間だモンキー、地獄の猿山でお山の大将やってろ」


ルミノスが逆刃に持ったサーベルを将校の左肩に刺し込む。

ズブズブと鎖骨を砕きながら挿入される。

将校もあまりの痛みに目をこれでもかというくらい見開く。


すぐに生暖かい鮮血がルミノスの顔面へと降り注ぐ。

なおもルミノスは張り付いた血塗れの笑顔を将校に向けていた。


「ぐがぁぁぁぁぁっっっ!!!やめろっ…!やめてくれっーーー!!!」


ルミノスが容赦なくもう一本のサーベルを、右肩に刺しこんだ。


「挿れられるの気持ちいいだろ?

墜ちて死ね、頭の錆びたハンプティダンプティめ。

あの童謡うたのように墜ちてしまえ」

 

将校が両肩にサーベルを刺し込まれたままその場に倒れ込む。

将校は自身の周りに血を池を作りながら四つん這いになる。


「…参謀総長なんてくそくらえだっ!アイツのせいでせっかく立案した作戦が狂って失敗したんだっ!今だから言うっ!あの総長はゴミだっ!地獄で犯してやるーーーっ!売国奴めっーーーーっ!!!」


ルミノスの表情から笑顔が消え途端に吸血鬼のような刃をひん剥いた表情で怒鳴る。


「黙れカスっ!二度とその名前を口に出すなっ!犯せるもんなら犯してみろっ!赤綿散らして死ねこの劣等人種めっっ!!!!」


「ギャァァァァァァァァっっっ!!!!」


ガッッ! グシャッっ! グチャッっ!


ルミノスが軍靴で陸軍将校の頭蓋を踏み碎く。

頭蓋骨が割れ、脳漿と脳みそが混ざった汁が血液とともに粘度のある液体として飛び散る。


「ガッ…ャ゛…ッ…」


陸軍将校はついに頭を踏み抜かれた。

ルミノスは踏み抜いた後も靴を擦り土壌に脳みそを擦り込ませる。

もはや将校の頭部は原型をとどめていなかった。


「いつまでサーベルを抱えているつもりだクソカス、お下劣遺伝子に罹るだろ」


刺さったままの両肩のサーベルを抜く。

しばらくの間、どろりと傷穴から血が湧き水のように流れると、ルミノスは勢いよくサーベルを振って刃についた血を飛ばした。 


「…不本意ながらルナッカーを救ってやったことになってしまったな、参謀総長に知られたら怒られてしまうだろうか…まぁ…それもそれで…

こ、興奮します…っ!!参謀総長殿っ!どうかわたくしめに心臓が止まるような熱い罰をっ…っ!!!」


ルミノスが血まみれの笑顔で死体の周りで乱舞する。

上機嫌なルミノスはそのまま小躍りしながら死体のそばを離れていった。


陸軍将校の肉塊は横たわったままなにも証言しない。


「被告陸軍将校!被疑強姦罪!判決、死刑っ!以上、『白の裁判所』っ!」

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