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夢のような現実を

エロイス対リリスとベルヘンで狙撃対決が始まった。

狙撃位置を変えたベルヘンは姿をくらましたエロイスに狙撃されてしまい、死亡した。

一体あの死のゾーンのどこに隠れているのか、勝負の行方は、そしてシッパーテロでの攻勢はどうなるのか。

狙撃しているのエロイスに先に行くように言われた突撃するドレミー、なんとか今のどころ無傷で突破できている。


「はぁっ…はぁっ…はぁっ…」


無我夢中で走るドレミーの背後で次々と爆音が鳴り響き始める。


「…っ…はぁ…はぁ…やっと…歩兵砲が…支援に来てくれたっ…!」


後方には歩兵砲を前進させながら支援を行ってくれている兵士たちがいた。


「歩兵砲中隊っ!!前っーー進ーーっ!!」


一門につき四人の砲兵が支援を行う。


ドレミーが少し窪んだところにうつ伏せになって身を隠す。


「歩兵砲が少し遅れたせいで十分な支援ができなかった…でももう大丈夫、歩兵砲に機関銃…よしっ…やれるっ…!」


ガスマスクの下で密かに微笑む。


「あと三百メートル…よしっ…もう止まらない…最後の突撃…ふぅ〜…」


ドレミーがゆっくりと深呼吸をする。


すると突如としてドレミーの頭がズキズキと傷んできた。


ドレミーは痛みを鎮めようと頭を押さえる。


「いっ…痛い…なんで…このタイミングでぇ…ぐぅ〜…やばっ…薬の効果が…切れて…今はだめっ…今はだめだからぁ…っ!」


すると次の瞬間、後方支援をしていた歩兵砲が煙を吐いて砲弾を飛ばした。


円弧を描いて飛来する砲弾がロディーヤ塹壕付近で着弾して。


「…うぜぇなぁ…」


頭を抱え、うつむいていたドレミーが顔を上げると、目の色が左右移動していた。


ドレミーの裏の人格が入れ替わった証拠だ。


「遅い後方支援にも苛つくぜクソっ、いつまで俺をこんな泥の中にいさせやがるんだ?とっとと終わらせようぜ、なぁドレミー」


ガスマスクの下で入れ替わった人格が着剣した歩兵銃を携え、うつ伏せの状態から素早く起き上がると、他の突撃隊同様にまっすぐ塹壕めがけて走り出した。


「さぁ行くぞっ!地獄は広いぜ、止まらずに進めっ!!」


やってくるテニーニャ兵たちにロディーヤ塹壕の兵士たちは大慌てだった。


「フェバーラン特務枢機卿っ!だめですっ!機関銃と歩兵砲のせいでまともに顔も出せませんっ!」


フェバーラン同様にガスマスクを着けた兵士が報告した。


「わかっているっ!いいかっ!撤退だけは断じて命令しませんっ!死守っ!文字通り死守っ!死んで守りなさいっ!!あとちょっと引き付けてからロディーヤ兵も突撃しますっ!」

「ええっ…!それでは死のゾーン内で乱闘が発生しますよっ!いいんですか…!」

「この狭い塹壕で戦うより何倍もいいっ!泥の中に顔を沈めて溺れさせろっ!石で頭蓋をグチャグチャに潰せっ!スコップを振り回して首を断てっ!!」


塹壕内は阿鼻叫喚の底だった。


マスクをつけられず失明した兵士たちが通路に座り込んでいた、彼らは毒ガスによって目をやけどしてしまったのだ。


目に包帯を巻いて処置している。


撃たれた兵士が塹壕の後ろの広いスペースに担架で運びこまれ、応急処置をしていた。


「四肢が使える人間は全て銃を持たせろっ!まもなく突撃するっ!!」


続々と歩兵銃に着剣を終えた兵士たちが塹壕のはしごに登る。


そして。


「皇帝陛下っ!!万歳っ!!我についてこい信徒たちよっ!!聖戦だっ!!!」


バヨネットを両手に持ったフェバーランが前方を刃で指しながら飛び出していった。


それに続くよう塹壕の兵士たちも飛び出していく。


その光景を見たテニーニャの突撃隊たちは驚いた。


「まさか撤退って言う選択肢はないってわけか…必死だな、まぁいい、白兵戦をやろうっていうのなら受けて立つぜ畜生共」


ドレミーが先陣を切りながら突撃隊を率いる。


そうしていよいよロディーヤ兵と突撃隊がぶつかった、白兵戦が始まったのだ。


ドレミーは着剣した歩兵を振り回し、敵兵の眼球をスパッと切り裂いた。


途端に絶叫と血が吹き出る。


「地獄が始まったぞ野郎共っ!!皆殺しだっ!こいつらに極楽浄土を踏ませてやれっ!!」


いよいよ終わりの見えない殺戮が始まった。


突撃隊たちは着剣した歩兵銃を振り回したり槍のように刺したりしたり、麻袋に入っていた短機関銃と柄付き手榴弾で近距離で相手の人肉をふっ飛ばす。


ロディーヤ兵もう同じように歩兵銃で応戦したりするが、陣地構築用のスコップを振り回して首を斬りつけたり、相手に掴みかかって砲弾孔の水の中にガスマスクごと顔を押し付けて沈めたりしていた、そこに支援の機関銃や歩兵砲が着弾して汚泥を吹き上げる。


正しく生き地獄、もはやそこにいたのは人ではなかった、醜く人間の理性を忘れ、ただ目の前の敵をあの手この手で殺す獣たちになっていた。



「来いっ!地獄の犬共っ!!我、剽悍たるイスカリオテに敬意を表し、銀貨三十枚で国土を仇なす御稜威に沿わん敵性を打破すべしと承わったっ!!神兵たちには神の国に安住するために祈り、かつ永眠した人の信仰を受け継いで共に永遠の国に与れるよう祈願するっ!!それをここに執行さるることなりっ!我の両手に持つものは何なりやっ!教会の剣と物質界の剣なりっ!行使さるることなりっ!」


そう叫びながらフェバーランはバヨネットを振り回し、敵兵の腸をむき出しにして殺していく。


「うわァァァァァァァァっ!!!かぁぁぁぁちゃぁぁぁぁぁんっ」


着剣した歩兵銃を持ってやってきた突撃隊員向けてバヨネットを向けて発射した。


刃はまっすぐと空気を裂きながら飛んでいき、見事に心臓ごと貫いた。


兵士は血を吐きながら静かに息絶えた。


そして余ったバヨネットの柄を空中に投げて落下してきた瞬間に靴底で蹴り出して、やってきていた敵兵の口に柄をブチ込んだ。


ボロボロに折れてしまった歯とともに柄が押し込まれた。


「鎮魂曲を唱いなさい、主に届くように」


そして柄が爆発して兵士は頭蓋がスイカが破裂したように飛び散った。 


一件落着かと思った枢機卿の頭上に大きく手を振りかざす一人の兵士が。


「…っ!」


すかさずもう一本のバヨネットで振りかざしてきたものを受け止めた。


血まみれのテニーニャの男の兵士がスコップを縦にして振りかざしてきたのだ。


「しねぇっ!!白痴カルトやろうっ!!」

「卒するのは貴方様です、イスカリオテ」


バヨネットでスコップを跳ね返した瞬間、すかさずバヨネットを逆Zに刃を動かして兵士の身体を鯵の干物のように腹を開いた。


その瞬間。


「…はっ!」


フェバーランが振り返ると息つく暇なく喉仏の下に銃剣がずぼりと刺し込まれた。


「ぐがぁっ!!」


フェバーランのガスマスクの中がたちまち温かい鉄の匂いで満たされる。


歩兵銃の銃剣で首を刺してきた兵士、それはドレミーだった。


「ここが弱いぜクソカルト、てめえの血で贖罪を果たせ」


グリグリと押し込んでくる歩兵銃をフェバーランはなんとか手で押し返そうとするがもはや抵抗はできなかった。


そのまま泥濘に押し倒されたフェバーランとそれを見下すように身体に軍靴を乗せ見下すドレミー。


「ガスマスクは取られちまった、糞ったれな鬼畜共にな」


ガスマスクを奪われ、頭から流血しているドレミーが嘲笑する。


「最後ぐらい青空見せてやるぜ」


ドレミーは歩兵銃を抜き取るとガスマスクのゴムに覆われていた首からぴゅっぴゅっと血が漏れた。


そしてドレミーがしゃがみ込むとフェバーランのガスマスクをはずさせて、鮮やかな大空を見させた。


「…あぁ…きれいですね…久しぶりの青空です…神の国が来るまで…我はここに眠ります…」


フェバーランが血を口から吐き出しながら声を絞って言った。


「そうしとけ、言ってやる、ああ言ってやるさ、唱ってやる…」


ドレミーは血塗れの銃剣のついた歩兵銃をフェバーランの頭上の泥に勢いよく差し込んで墓標代わりに立てた。


「『アーメン』、信仰はてめぇの死で消える」


フェバーラン特務枢機卿が泥の中で静かに息を引き取った。


その寝顔は穏やかという言葉以外見つからないほど健やかに眠る赤子のような表情だった。


そんな一幕をすぐに消し去るように地獄の亡者たちの阿鼻叫喚が響き渡る。


文字通りどちらかが諦めるまで終わらない、そんな悪夢のような現実の中でドレミーは麻袋から短機関銃を取り出した。


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