【第一章『暗躍の少女兵たち編』】プロローグ
戦争からきらめきと魔術的な美がついに奪い取られてしまった。
人類ははじめて自分たちを絶滅させることのできる道具を手に入れた。
これこそが人類の栄光と苦労のすべてが最後の到達した運命である
Sir Winston Churchill(1874〜1965)
「よしっ…こんなもんかな、そろそろ迎えが来る頃だけど…」
辺鄙な田舎町の一角、開かれた玄関から入り込むそよ風に麦色のショートカットの髪が騒ぐ。
とある田舎町の田舎娘には似つかない軍服を纏っている。
実家の玄関口で支給された軍備を整え、鏡を見ながら軍服の襟を正す。
まさに威厳ある規律軍人といった様だ。
「私が今日から軍人…かっこいいなぁ~惚れ惚れしちゃうな」
そのあまりの仰々しさに歴史上の英雄たちと肩を並べたような気分だった。
「リリス、準備は大丈夫?忘れ物は…?」
「もう!心配し過ぎだよママ、私はもう立派な軍人さんなんだから大丈夫!」
「おっ!もう出兵か、お前も大きくなったなぁ」
「パパまで…二人揃って親バカなんだから…」
「当たり前だろう?子が旅立つとなれば心配せずにはいられないのが親ってもんさ」
「そういうもんなのかな?」
しばらく家族で談笑していると遠くから砂利を蹴飛ばす音とともにエンジン音が聞こえてきた。
「もう輸送車が…」
「あれに乗って帝都へ向かうのね…どうか無事で…」
「大丈夫か?同じ隊のやつと仲良くやれよ?」
父は誇らしげに笑い、母はまぶたを熱くしている。
「よしっ!じゃあ行ってくるね!クリスマスまでには帰ってくる!」
「いってらっしゃい!」
私は両親に手を振り、家の門を出た。
そしてやってきた輸送車の荷台に乗り込み、我が家をあとにする。
ぐんぐんと地平の彼方へと我が家は小さくなっていった。
この輸送車に乗り首都チェニロバーンまで征く。そこでスィーラバドルト皇帝陛下の激励を受け、私は戦地に赴く為の訓練を受ける。
「大丈夫、年末までには帰れる」
私の名前はリリス・サニーランド。今日徴兵され、祖国ロディーヤ帝国の少女隊の中隊、ロディーヤ女子挺身隊へと兵役することになった。
このとき季節はすっかり10月、木枯らしが身にしみる頃である。
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ロディーヤ女子挺身隊
ロディーヤの少女だけで構成された中隊規模の軍隊。ロディーヤの帝国陸軍とは区別されて扱われるが軍服は同じ。
フィールドグレーのエポレット付きの開襟のボタン五つの制服
バックルのベルトでズボンを止める
膝辺りまでのスカートを着用
黒革のブーツ
シュッタールヘルムのヘルメットまたはフィールドグレーの制帽
百合のマークが刺繍されている
ベルトの左右に茶色い弾薬ポーチ、弾薬を収納できた。水筒とバックパックなどを保持していた。バックパックには飯盒が装着されている
軍服の上着には私物用の胸ポケットが2つ、兵士用のペイブック(給与帳)用のポケットが2つ、その他に小さなポケットが2つと内部ポケットがあった