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好きな人の恋人役になったらいつの間にか囚われていました  作者: Karamimi
本編

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恋人役の令嬢が気になる~ディラン視点~

貴族学院3年になったばかりのある日、俺は親友で侯爵令息でもあるマルクスに、ある相談をしていた。そう、最近愛するカサンドラとの仲を、王太子が怪しんでいるというものだ。


カサンドラは王太子の婚約者で、俺の恋人でもある。もちろん、大々的には付き合えないので、こっそり付き合っているのだが、ちょっと大胆に行動しすぎたかもしれない。


カサンドラと付き合いだして、1年が経った。俺は何度もカサンドラに、国を捨てて逃げようと言っているのだが、中々いい返事がもらえなかった。でも、ついに卒業したら2人で駆け落ちすると言うことで話がまとまったのだ。


俺は公爵家の嫡男だ。本来であれば家の事を考えれば、絶対に出来ないだろう。でも、うちの親は非常に変わっている。


父上は母上を溺愛し、俺がまだ小さかった頃はほとんど部屋から出さず、公爵夫人としての唯一の仕事でもある社交の場にも参加させなかった。最近になって、やっと少しずつ参加している様だが。


小さい頃は俺にすら嫉妬して、母上に近づくことを嫌ってたほど、母上を溺愛しているのだ。そんな父上の口癖は

「ディラン、好きな人が出来たら何が何でも手に入れろ。どんな手を使ってもな」

だった。


実際、父上もありとあらゆる手を使って、母上を手に入れた様だ。詳しい話は知らないけれどね。


俺とカサンドラが噂になった時も

「家の事は心配せず、お前が後悔しないように生きろ」

と言ってくれた父上。子供の頃は俺から母上を奪った憎い奴だと思っていたが、今は理解のある父上で助かっている。


おっと話がずれたな。とにかく卒業までの約1年間、何とか王太子の目を欺く必要があるのだ。その為にも、俺はどんな手でも尽くすつもりだ。それもこれも、カサンドラとの幸せな未来を手に入れる為に!



「そうだな!う~ん、一番いいのが、お前が恋人を作るって言うのはどうだ?そうすれば王太子の目も欺けるぞ」


マルクスがある提案をして来たのだ。最初はカサンドラ以外の女性と付き合うなんて!と思ったが、よく考えれば悪くない話だ。


でも、そんなデメリットしかない役を、誰がやってくれるのだろう…

そう思っていた時だった。


「あの、その恋人役、私にやらせていただけないでしょうか?」

1人の女性が声を掛けて来た。


くすんだピンク色の髪とは対照的に、美しいエメラルドグリーンの瞳をした女性だ。この子は確か…

「君は確か、伯爵令嬢のアンネリカ・フローレス嬢だったよね?」


そうそう、フローレス嬢だ。確か家が物凄く貧乏で有名だ。

きっと金が欲しいんだろうな。この女なら利用するだけ利用して、後でポイっと捨てても問題ないだろう。


とりあえず、見た目は貧乏くさいが、背に腹は代えられない。俺はこの女を恋人役として頼んだ。


恋人役のアンネリカは、思ったより賢く、恋人役をやる上での注意点を細かく指示して来た。どれももっともらしい意見で、正直感心した。


まあ、俺からお金を引き出させたいのだろうから、彼女も必死だろう。そう思っていたのだが、俺が提示したお金をあっさり拒否した。


一体どういうつもりなんだ?お金が目的ではなかったのか?俺は混乱した。何とかお金を受け取ってもらおうと食い下がっては見たものの、彼女はお金以外に自分にもメリットがあるからと、受け取りを拒否したのだ。


そうか、他にメリットがあるならまあいいだろう。でも、後で何か言ってきたら面倒だから、定期的に適当にプレゼントでも与えておけばいいな、その時はそう思っていた。


そして翌日、俺は出来るだけ早くアンネリカと恋人という事を、周りに知らせたくて校門の前で彼女を待った。


少しでも早く周りに知られれば、きっと王太子に隙が出来る。そうなれば、今までの様にカサンドラに会えると考えたのだ。


しばらく待っていると、彼女がやって来た。アンネリカは、俺を見つけると嬉しそうに腕に絡みついてくるではないか。正直、最初は何なんだこの女は!と思ったが、アンネリカから「これは演技ですよ」と言われた。


なるほど、彼女は徹底的に俺の恋人役をやってくれる様だ。ある意味感謝しかない。もちろん、お昼も一緒に食べた。彼女のお弁当はサンドウィッチだけ。正直そんなものだけで足りるのか?とも思ったが、あまりにも彼女が美味しそうに食べるので、俺も少し食べたくなった。


アンネリカに頼んで、1口貰ったのだが、今までに食べた事のない味で物凄く美味しかった。1口のはずが、つい丸ごと平らげてしまった。聞けば彼女が自分で作った物だとの事。


美味しかったと伝えると、それは嬉しそうに笑うアンネリカ。一瞬胸がドキドキしたが、きっと気のせいだろう。


明日も作ってくると言ったアンネリカ。俺の為に何かをしてくれるなんて、この子少し変わっているな…

でも、悪い気はしない。


そして、翌日は3種類のサンドウィッチを作ってきてくれたアンネリカ。美味しくてつい全て平らげてしまった。

しまったぞ、彼女の分も食べてしまった。仕方なく自分の弁当をアンネリカに与えた。


俺の弁当を物凄く美味しそうに食べるアンネリカ。


「さすが公爵家のお弁当ですわね。とっても美味しいです!」

ニコニコと笑いながら頬張っている。人が食事をする姿なんて興味がなかったが、彼女の場合、ずっと見ていても飽きない。


それからも、毎日彼女と過ごした。アンネリカはとても明るく、誰にでも優しい。それに、ものすごく謙虚だ。彼女は毎日歩いて学院に来ているのだが、何度馬車で送って行くと言っても、頑なに拒否し続けている。


「私歩くのが好きなんです」

それが彼女の口癖だ。今まで彼女の様な女性には会ったことがなく、とても新鮮だ。それにアンネリカといると、とても穏やかな気持ちになる。彼女の笑顔を見ると、心が温かい気持ちになる。


この気持ちは一体何なんだろう。もしかして…

いいや!俺が心から愛しているのはカサンドラだ。ずっとアンネリカと一緒に居たから、変な錯覚をしているだけだ。そうだ!しっかりしろ、俺が愛しているのはカサンドラただ1人。アンネリカは俺たちの協力者で、それ以上でもそれ以下でもない。


そんな気持ちを抱えながらも、アンネリカと恋人契約を結んで1ヶ月が経ったある日。メイドたちの間で今ハンドクリームが流行っていると聞いた。そう言えば、アンネリカに何もプレゼントしていなかったな。


アンネリカは家の事をやっている為、手も少し荒れている。触り心地が悪いと言うほどではないが、あげたら喜ぶかもしれない。安物だが、あの子ならきっと喜ぶ、そんな気がした。案の定、ものすごく喜んでくれたアンネリカ。その笑顔を見ると、やっぱり嬉しくなるのはなぜだろう…



そして翌日、嬉しそうにハンドクリームの話をしてきたアンネリカ。やっぱりあげて良かった。こんなに喜んでくれるなら、もっといい物をあげればよかった。次はもっと高いものをプレゼントしよう。


そしていつもの様に放課後、アンネリカを教室まで迎えに行ったのだが、彼女の姿はなかった。


教室に残っていた生徒に聞くと、カサンドラが彼女を連れて行ってしまったとの事。


「カサンドラが!」

俺は急いで教室を出て2人を探した。カサンドラは、感情の起伏が激しいところがある。そんなカサンドラの機嫌を損ねれば、きっとアンネリカを傷つけるだろう。


学院中を探しまくったが、2人の姿は見つからない。


「クソ、カサンドラの奴。一体アンネリカをどこに連れて行ってしまったんだ!」

しばらく探し続けていた時、アンネリカが1人教室に向かっている姿が目に入った。


俺が彼女の名前を叫ぶと、驚いてこちらを振り向くアンネリカ。カサンドラに酷い事を言われなかったか心配で、急いで駆け寄った。


そんな俺の心配をよそに、彼女は何を思ったのか、カサンドラにはしっかり自分は協力者と伝えて理解してもらえたと、自信満々に言っている。でもその瞳はひどく動揺していて、どこか寂しそうだ。


やっぱり何かカサンドラに言われたんだな!俺は彼女に改めてカサンドラに酷い事を言われたのかと聞いたが、そんな事はないと否定すると、1人で帰って行ってしまった。


その日、どうしても気になりカサンドラに会いに公爵家を訪ねた。カサンドラの母親が明らかに嫌そうな顔をしていたが、とにかく彼女と話をしたかったのだ。


「急に押しかけてすまない。今日アンネリカに会ったようだね」


「ええ、会ったわよ。見た目は確かに貧相だけれど、自分の立ち位置をしっかり理解できている点を考えると、まああなたの恋人役に認めてやってもいいって感じね。でも、もう少しましな子はいなかったの。公爵令息のあなたには、釣り合わないのではなくって?」


カサンドラの言葉に、言いようのない怒りが込み上げてくる。


「とにかく、用が済んだらもう帰って。せっかくグレイソン様からの疑いも晴れかかっているのに、あなたと会っていた事がバレたらまた面倒な事になるのよ」


カサンドラはそう言うと、俺をさっさと追い返した。


「そうそう、私ルビーとサファイアのネックレスが欲しいの。グレイソン様からの疑いが完全に晴れたら今度一緒に買いに行きましょう」


最後にそう言い放ったカサンドラ。

俺は黙って家路に着いたのであった。


グレイソンは王太子の名前です。


次回もディラン視点です。

よろしくお願いしますm(__)m

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