やっぱりお前の仕業か!
前半:ディラン、後半:アンネリカ視点で話が進みます。
よろしくお願いしますm(__)m
~ディラン視点~
おかしい、いくら何でも遅すぎないか?アンネリカがトイレに行ったっきり中々戻ってこない。不安になり、アンネリカの居場所を示す機械を取り出した。
どういう事だ!
アンネリカの居場所を示す赤い丸が、移動しているではないか!クソ、アンネリカが連れ去られた!
体中から沸く怒りを抑えきれず、晩餐が行われている会場へと猛スピードで走った。
バン
勢いよくドアを開けたせいか、皆が一斉に俺の方を向いた。
「アンネリカが何者かに連れ去られた。マルゲール王国の王太子はどこだ?」
きっとあいつが連れ去ったに違いない!我を忘れ叫ぶ!
「ブレイルなら君たちが席を外してすぐ、体調が悪いからと言って自室に戻ったはずだが、まさか…」
真っ青な顔をするマルゲール王国の国王。
「今すぐ王太子の部屋を確認しろ!俺はアンネリカを追う」
「待ってください。私も一緒に向かいます」
俺の言葉を聞き、マルゲール王国の国王が自分も行きたいと叫んだ。
「それなら私も一緒に行こう。その方がいいだろう。グレイソン、お前も一緒にこい」
陛下も付いて来る様だ。とにかく急がないと。
「僕は女性たちを守らないといけないので、ここに残ります!」
どや顔でそう言う王太子。こいつ、ただメルダシア王女の側に居たいだけだろう。まあいい、とにかく今はアンネリカだ。
「それでディラン、夫人の居場所は分かるのか?」
「もちろんです、アンネリカにはどこに居るか分かるよう、ずっと居場所が特定できる機械を付けさせておりますので」
すぐに機械を確認した。アンネリカの居場所を示す赤い丸が止まっている。どうやら目的地に着いたようだ。
「とにかく急ぐぞ!アンネリカが心配だ」
急いで馬車へと乗り込もうとした時、1人の騎士が走ってきた。
「ご報告いたします。マルゲール王国の王太子殿下は、お部屋にはいらっしゃいませんでした。今王宮内を捜索しているところでございます」
やっぱりあいつか!怒りに震える中、馬車へと乗り込み御者に場所を指示する。
「とにかく急げ!」
そう叫ぶと、馬車が走り出した。本来なら馬でぶっ飛ばしたいのだが、場所が近くなのと、オヤジが2人同行する為、仕方なく馬車にした。
アンネリカ、どうか無事でいてくれ!
♢♢♢♢
~アンネリカ視点~
馬車の荷台に乗せられしばらく揺られていると、急に馬車が止まった。どうやら目的地に着いたようだ。少し体は動くようになったが、縄で縛られている上、騎士の衣装を着た男が2人私を囲っている。さすがに逃げるのは難しそうだ。
騎士の1人が私を担いで荷台から降ろした。目の前には小さな一軒家が目に入る。どうやら空き家の様にも見えるけれど。
そのまま中に入り、小さな部屋のベッドの上に降ろされた。体を拘束していた縄も解いてもらえた。それにしても、ここは一体どこなのかしら。なんだか物凄く嫌な予感がする。
私を置いたまま出て行く騎士たち。そのまま外側から鍵が掛けられてしまった。どうしよう…
出口が無いかウロウロと歩き回ってみたが、窓には板が打ち付けられているし、ドアには鍵が掛かっている。どうやら逃げられそうにない。
そうだわ、私の胸にはディラン様が付けてくれたブローチがある。きっとトイレから中々出てこない私に、ディラン様が気づいて助けに来てくれるはず。
そもそもあの王太子殿下は今晩餐中だものね。きっと大丈夫よ。そう自分に言い聞かせる。
その時だった。
ガチャ
鍵が開く音が聞こえた。一瞬にして体がこわばる。ゆっくりドアが開き、そこに立っていたのは…
「やあ、アンネリカ殿。ご機嫌はどうだい?」
一瞬で体が凍り付く。
嘘でしょ…
「どうして王太子殿下が、こちらにいらっしゃるのですか?晩餐はどうなされたのですか?」
震える体を必死に抑え、何とか問いかけた。
「体調が優れないと言って抜け出して来たんだよ。そんなに怯えないで。君に酷い事をするファイザバード公爵令息はここには居ないよ。それにしても、今日も鎖で繋がれているんだね。可哀そうに」
そう言いながら、私にゆっくり近づいて来る王太子殿下。
「イヤ!来ないで!お願い…」
恐怖から、涙がボロボロと流れる。
「泣かなくてもいいんだよ。今からすぐにマルゲール王国に向かうからね。その前に、君に触れたくてね。大丈夫だよ。優しくするからね」
鼻息荒く近づいて来る王太子殿下。無理無理無理!絶対に無理!!!恐怖で体が動かない。王太子殿下が私に向かってゆっくり手を伸ばし、私の頬に触れた。
その瞬間、鳥肌が立つのが分かった。さらに涙が溢れる。
「柔らかいね。本当に美しい娘だ」
さらに私に近づく王太子殿下。もうダメかもしれない。そう思った時、ふとお母様の言葉が頭に浮かんだ。
目の前には王太子殿下の顔が迫っている。背に腹は代えられない。私は王太子殿下の股間を目掛けて、おもいっきり蹴り上げた。
「うっっっ!!」
そう言って目の前でうずくまる王太子殿下。その隙に抜け出し、外に出ようとドアに手を掛けるが開かない!
どうやら鍵が掛かっている様だ。
「おい、貴様よくも!少し優しくしてやったら付け上がりやがって!」
後ろでは股間を抑えながら、王太子殿下が叫んでいる。
どうしよう!何度もドアを回すが開かない。
その時だった!
「アンネリカ!大丈夫か?アンネリカ」
ディラン様だわ!
「ディラン様、ここです。助けてください!」
私の声が聞こえたのか、外側から掛かった鍵を開けてくれたディラン様。
ドアが開くと同時に、ディラン様の胸に飛び込んだ!
「ディラン様、怖かったです!でも助けに来てくれてありがとうございました!」
「ああ、アンネリカ。無事でよかった!すまない。俺が油断したからだ!」
ギューギュー私を抱きしめるディラン様。私はそのままディラン様の顔を掴んで、自分の唇を重ねた。さっき目の前まで迫っていた王太子殿下の姿をかき消すように、強く強く重ねた。
もちろんディラン様もそれに答えてくれる。やっぱりディラン様の温もりが、一番落ち着くわ。
「ブレイル!お前は一体何をしているんだ!他国の公爵夫人を誘拐してくるなんて、国際問題にも発展しかねないぞ!」
股間を抑えている王太子殿下に怒鳴りつけるマルゲール王国の陛下。
「ファイザバード公爵令息夫人、怪我はないかい?まさか王宮内で誘拐されるなんて。全て私の責任だ。本当に申し訳ない」
なぜか陛下が頭を下げる。
「頭をお上げください。私はこの通り大丈夫ですので」
慌てて陛下に声を掛けた。
「アンネリカ、頭を下げさせておけばいいよ!大体王宮はどういう警備をしているんだ。こうも簡単に誘拐されるなんて!」
隣でブツブツ文句を言うディラン様。
「ディラン、そもそもお前が夫人から目を離したからいけないのだろう!普段夫人にべったりのくせに、こういった時に役に立たない男だな!」
「何だと!自分のところの警備を棚に上げて、よくも抜け抜けと!」
ディラン様と陛下が喧嘩を始めたところで、マルゲール王国の国王陛下と王太子殿下がこちらにやって来た。
「この度は息子が本当に申し訳ございませんでした」
深々と頭を下げる陛下。
「僕は謝らないぞ!そもそも、男の股間を蹴り上げるような下品な女だとは思わなかった!」
ちょっと、みんなの前でその事は言わないでよ!心の中で叫ぶが、聞こえるはずがない。
「コラ、ブレイル!本当に申し訳ございませんでした」
「とにかく、今回の件については、しっかり調査させていただきます。場合によっては、それ相応の対応を取らせていただきますので、そのつもりで」
なぜか答えたのはディラン様だ。隣で我が国の陛下が、ジト目でディラン様を見ている。
その後、マルゲール王国の国王陛下と王太子殿下、さらに我が国の陛下も馬車で王宮へと帰って行った。
「さあ、俺たちも家に帰ろう。公爵家の馬車をここに手配しておいたからね」
そう言うと、ディラン様に連れられ公爵家の馬車へと乗り込んだ。それにしても、今日は疲れたわ。
「ねえ、アンネリカ。あのデブ王太子が言っていた事、本当?股間を蹴り上げったって話」
物凄い笑顔で聞いて来るディラン様。
「あれは正当防衛なのです!あの王太子が私に口付けをしようとしたので、とっさに股間を…」
股間という言葉に反応してしまい、赤くなる。
「今回の事をお母様に話したら、もしもの時はその、あそこを蹴りなさいと教えてもらったので、その…」
小さな声でボソボソと呟く。もう、お母様のせいで恥をかいたわ!
「ハハハハハ、さすが義母上だ。アンネリカ、それでいいんだ!自分を守る為なら、別にあの男を殺しても構わなかったんだよ」
物凄く恐ろしい事を言いだしたディラン様。さすがにそこまでは出来ない。
「それにしても、アンネリカが無事でよかったよ」
そう言うと、ギューッと抱きしめてくれるディラン様。とにかく無事ディラン様の元に戻れたことに、ホッと胸をなでおろすアンネリカだった。
今更ですが、陛下と王太子が各2人づついるので、ややこしいですね(;'∀')




