俺から逃げられると思うなよ~ディラン視点~
ずっとずっと書こうと思っていたのですが、今までうっかり書き忘れておりました。
誤字脱字報告ありがとうございますm(__)m
カサンドラを無事断罪できた。さあ、アンネリカのいる伯爵家に向かおう。そう思った時、マルクスが話しかけて来た。
「ディラン、お疲れ様。それにしても、まさか卒業パーティーでカサンドラ嬢を断罪するなんて思ってもみなかったよ。一昨日は早退するし、昨日も休んでいたから何かあったのだろうとは思っていたけれど、まさかこんな事になっていたなんてね」
俺に飲み物を渡しつつ、興奮気味に話すマルクス。
「悪い、マルクス。今から伯爵家に行って、アンネリカを俺のものにしてくる。また今度詳しく話す」
「何でだよ。卒業パーティーは午前中には終わるんだ。それから伯爵家に行けばいいだろう。せっかくだから、もう少し居ろよ」
確かにマルクスのいう事も一理ある。アンネリカとは、これからずっと一緒に居られるし。そう思っていた時だった。
「お話し中申し訳ございません。私、アンネリカの友人のイザベラ・マクディアータと申します。少しお時間を頂けないでしょうか?」
急に俺に話しかけてきたのは、アンネリカの親友だ。
「別に構わないよ。どうしたんだい?」
明らかに動揺しているマクディアータ嬢。親友の恋人とはいえ、身分の高い俺に自分から話しかけてきたのだ。そりゃ緊張するだろうな。
「あの、アンネリカからは、ファイザバード様とカサンドラ様が駆け落ちすると聞いておりましたが、違うのですか?」
「今の断罪を君も見ただろう。俺が愛しているのは、アンネリカただ1人だ。パーティーが終わったら、伯爵家に正式にアンネリカを貰いに行くつもりだよ」
「そんな…」
俺の言葉に明らかに動揺するマクディアータ嬢。一体どうしたというのだ。
「ファイザバード様、実はアンネリカは借金返済の為、卒業後隣国の大富豪の元に嫁ぐ事になっていたのです。そして今朝、隣国に向けて出発しました。どうかお願いです。すぐにアンネリカを連れ戻してください!」
何だって!隣国の大富豪に嫁ぐだと…
あり得ない、アンネリカはそんな事を一言も言っていなかった。
もしかして、あえて隠していたのか?
「マクディアータ嬢、その話は本当かい?」
「はい、本当にございます。今朝、わざわざアンネリカが我が家に挨拶に来ましたので。どうかお願いです、アンネリカを助けてあげてください!」
泣きながら頭を下げるマクディアータ嬢。彼女が嘘を付いている様には、とても見えない。
「マルクス、悪いが今すぐ伯爵家に向かう。アンネリカ、君は俺を裏切ったんだね。俺から逃げられると思ったのかな?隣国に逃げようとしても、逃がさないよ!」
「あの…アンネリカは、隣国に行きたい訳では…」
マクディアータ嬢が何か言いかけていたが、それを無視し、公爵家の馬車へと急いで乗り込む。
「坊ちゃま、どうしたのですか?そんな怖い顔をして」
馬車で待機していた執事が目を丸くしている。
「すぐに伯爵家に向かえ」
俺の言葉を聞き、急いで御者に指示を出す執事。そもそもアンネリカを調べさせた時、この情報を見逃すとは思えない。まさか…
「お前、まさかアンネリカが隣国に嫁ぐ事を知っていたのか?」
執事を睨みつけた。
「申し訳ございません…旦那様に、この事は報告するなと言われまして…」
父上の奴、一体どういうつもりだ!
「お前の上司は誰だ?父上なのか?」
「いいえ…坊ちゃまでございます…」
青い顔をした執事。確かに父上に言われたら断れないだろう。頭では分っているが、どうしても感情が抑えられない!
「そう思うなら、二度と俺を裏切るな!もし次同じような事をしたら、その時はただじゃおかないからな」
「かしこまりました」
執事と話しているうちに、伯爵家に着いた。そう言えば護衛騎士を付けていたはずだ。あいつらは何をしていたのだ。
すぐに護衛騎士たちを呼びつけた。
「アンネリカが隣国に行く為、旅立った。お前たちは一体何をしていたんだ!!」
騎士たちに向かって怒鳴りつける。
「申し訳ございません。今朝確かにアンネリカ様はお出掛けになられましたが、学院に向かったものとばかり思っていたものでして…」
どいつもこいつも、役に立たない奴らばかりだ。アンネリカを手に入れたら、人事の方も見直す必要がありそうだ。
怒りに身を任せ、伯爵家に乗り込む。近くにいたメイドを捕まえ、伯爵の居る場所へと案内させた。
「旦那様、ファイザバード公爵令息様がいらっしゃいました」
俺の登場に、明らかに動揺する伯爵。相変わらず、間抜けな顔をしてやがる。
「アンネリカが隣国に嫁ぐため、今日旅立ったと聞いたがそれは本当か?」
「え…あ…」
「はっきり答えろ!!!」
「はい、本当です」
クソ、やっぱり本当だったのか!
「どこの国だ!」
「ケーリッヒ王国です」
ケーリッヒ王国だと!あそこは海の向こうにあるはずだ。という事は、船で向かうという事か。
騒ぎを聞きつけアンネリカの母親と兄もやって来た。
「ファイザバード公爵令息様、一体何があったのですか?」
「伯爵令息、あなたと話した方が話が早そうだ。結論から言う。伯爵家の借金は全て家で肩代わりしよう。さらに、今後ずっと援助する事も約束する。だからアンネリカを公爵家の嫁として迎えたい」
俺の言葉に目を丸くする伯爵令息。
「とても魅力的な申し出なのですが、既にアンネリカは隣国に旅立っております。ですから…」
「そんな事は分かっている!アンネリカは今から連れ戻す。アンネリカの嫁ぎ先には、こちらから話を付けよう。だから、とりあえずこれにサインをしてくれ!」
俺はある契約書と婚姻届けを伯爵令息の前に出した。契約書には借金を全て公爵家が返済する事、今後ずっと公爵家が援助をする事、その代わりアンネリカを差し出す事という内容が書かれている。
「さっきキャンベル公爵家が人身売買に関わった罪で、正式に取り潰されることが決まった。これでこの国の貴族界は、我がファイザバード家がトップだ。そんな我が家に歯向かう事が一体何を意味するのか、賢いあなたなら分かるはずだが」
「なんだって!キャンベル家が!」
明らかに驚いている伯爵令息と夫人。
「時間が無い、早くサインを!」
「わかりました。でも、あなた様はカサンドラ公爵令嬢の事が好きだと、妹から聞いておりますが…」
「俺が愛しているのは、アンネリカだけだ。アンネリカは少し鈍いところがあるから、きっと何か勘違いをしたのだろう」
一刻も早くアンネリカのところに向かいたい一心で、適当にごまかしておいた。俺の言葉を聞き、伯爵にサインをさせる伯爵令息。この家は完全に伯爵令息が取り仕切っている様だ。早々に彼を伯爵にする必要があるな。
「サインできました。ちなみにアンネリカは、夕方の船で隣国に向かう予定です。隣国の大富豪に関する資料は、アンネリカが持っております。どうか、アンネリカををよろしくお願いいたします」
「ありがとう。助かるよ。そうそう、近いうちに爵位を君に移そうと思っている。もちろん、支払いは我が家で持つから安心して欲しい」
サインした契約書と婚姻届けを一旦執事に渡し、急いで馬車へと乗り込もうとした時、夫人が話しかけて来た。
「ファイザバード公爵令息様、娘をあのデブオヤジから救い出していただき、本当にありがとうございます。どうか娘をよろしくお願いいたします」
深々と頭を下げる夫人。デブオヤジ?誰の事だろう。そう思いつつ、馬車へと乗り込む。
「坊ちゃま、今はまだお昼前。ここから港まで約3時間。出港までには少しゆとりを持って到着しそうですね」
「ああ、そうだな」
そう言えばアンネリカは、領地に行った時恋愛成就のお守りを買っていた。もしかして、隣国の結婚相手を思って買ったのかもしれない。
それに俺と付き合ったのだって、いずれ嫁ぐ隣国の結婚相手とスムーズに付き合えるようにする為の、練習だったのかもしれない。それなら、色々と辻褄があう。
アンネリカ、残念だったね。君はもう隣国には行けないよ!泣いて抵抗するかな?それとも俺を睨みつけるのか?
結局俺は父上と同じ様に、嫌がる令嬢を無理やり自分のものにしようとしている。でも、もうこの気持ちは止められないんだ。アンネリカ、どんなに君が嫌がっても絶対に逃がさない!
「悪いが公爵家に寄ってくれるかい?忘れ物があるんだ。まだ時間があるから、大丈夫だろう?」
「かしこまりました」
今日はきっと港町で1泊することになるだろう。その時、逃げないように鎖で繋いでおかないと。
アンネリカ、君がどんなに抵抗しても、絶対に逃がさないからね…




