公爵邸でのラブラブアピールは疲れます!
「アンネリカ様、朝です。そろそろ起きてください」
まだ眠いわ…
そう思いつつも、ゆっくり瞼を上げる。目に飛び込んできたのは、見覚えのない豪華な天井だ。そうだわ、私ディラン様の領地に来ているんだった。一気に覚醒し、飛び起きる。
「アンネリカ様、そんなに急いで起きなくても大丈夫ですわ。さあ、今日はどのお召し物にいたしましょうか」
ディラン様が付けてくれた専属メイド、ローラに連れられクローゼットへと向かう。そこには、沢山のドレスやワンピースが並んでいた。ざっと見ただけで、20着以上はありそうだ。どれも高級な素材で作られているようで、宝石がたっぷり使われている。
「アンネリカ様、申し訳ございません。急いでお召し物を作らせているのですが、まだ間に合っていないようで、半分程度しか揃っておりません。来週には全て揃うとの事ですので、どうかある分でお選びくださいませ」
これで半分ですって!イヤイヤイヤ、これだけでも十分でしょう。一体ディラン様は何着服を作らせるつもりなのかしら?
「あの、ローラ。ここにある分で十分1ヶ月分賄えると思うんだけれど…」
「何をおっしゃられるのですか!アンネリカ様は坊ちゃまの大切な恋人とお伺いしております。そのような方が、この程度のお召し物で良いはずがありませんわ!」
凄い勢いで詰め寄って来るローラ。貧乏な私には全く理解できないけれど、これが普通なのね、きっと。とりあえず、この沢山ある洋服の中から今日着るものを選べばいいのね。
う~ん、どれが良いかしら?あ、この青いワンピース可愛いわ。これにしましょう!比較的シンプルなワンピースに着替え、髪もきれいに結んでもらった。
「さあ、次は髪飾りとアクセサリーをお選びください」
ローラが持ってきたのは、これでもかと言うくらいぎっしり宝石が入ったケースを3箱だ。これ全部あれば、うちの借金も余裕で返せるのではないかと言うくらい、高価な宝石たちが並んでいる。こんな高価な宝石を私に身に付けろというの?無理です!無くしたり汚したりしたら、絶対弁償できないわ。
「あの、ローラ。アクセサリーは無しで。もし無くしたりしたら大変だから」
「アンネリカ様。ご心配はいりません。これは全て坊ちゃまがアンネリカ様の為に準備した物ですから。無くそうが捨てようが売ろうが問題ございませんわ!」
ひぃぃぃぃぃ。なんて恐ろしい事を言うのよ!とにかく一番安そうなものを身に着けよう。う~ん、どれも高級そうね。自分では決められないわ。
「ローラ、申し訳ないんだけれど、あなたが選んでくれるかしら。自分では決められないわ」
「ええ!よろしいのですか?では私にお任せください!」
なぜか物凄く嬉しそうなローラ。次々とアクセサリーを選んでいき、あっという間に付けられた。これで総額お幾らなのかしら?
「アンネリカ様、とっても奇麗ですよ。さあ、坊ちゃまがお待ちです。参りましょう」
ローラに連れられて部屋を出ると、ディラン様が廊下で待っていた。
「ディラン様、おはようございます。お待たせしてしまったかしら?ごめんなさい」
「おはよう、俺も今部屋から出て来たところだ。それにしても、今日のアンネリカも格別に可愛いね。さあ朝食にしよう」
ディラン様にエスコートされ、食堂へと向かう。きっとご両親も一緒よね。やっぱり緊張するわ。そう思っていたのだが、ご両親の姿はどこにもない。
「ディラン様、ご両親はご一緒ではないのですか?」
「ああ、父上と母上はお昼ごろまできっと部屋から出てこないよ」
あら、そうなのね。もしかして、私を油断させて本当に付き合っているか確認する為に、あえて姿を現さないのかもしれないわ。油断大敵ね。
「アンネリカ、今日はとりあえず屋敷内を案内するよ。1か月間滞在するからね。屋敷の事を知っておいた方が、アンネリカも都合がいいからね」
確かに屋敷はとても広いから、迷子にでもなったら大変だ。しっかり覚えないとね。それにしても、昨日チラッと見たけれど、園庭がとても素敵だったわ。今日はゆっくり見られるのね。楽しみだわ。
朝食が終わると、ディラン様が公爵家の中を案内してくれた。公爵家はとにかく広く、武道場やダンスホールまである。お庭もとっても広くて、見たことのない花々も咲いている。
ディラン様の話では、この地方にしか咲かない珍しい花なんだとか。噴水もあちらこちらにあり、噴水から出る水が太陽の光を浴び、キラキラ輝いていてとっても奇麗だわ。
「アンネリカ、疲れただろう。そろそろ休憩しようか?あそこにテーブルとベンチがあるから、ティータイムにしよう」
ディラン様にエスコートされ、2人で並んでイスに座る。ちなみにこの場所、どうやらバラ園の様だ。バラのアーチが至る所にあり、色鮮やかなバラがテーブルとイスを囲むように咲いている。
「ディラン様、本当に奇麗ですね。あのバラ、黒色をしていますわ。黒バラって私初めてみました」
「母上はバラが好きでね。そんな母上の為に父上が作ったんだよ」
「そうなのですね。公爵様はとてもお優しいわ」
私の言葉を聞き、明らかに不機嫌になるディラン様。あれ?私変な事を言ったかしら?
「アンネリカは俺より父上に興味があるのかい?」
グイっと引き寄せられ、耳元で呟くディラン様。次の瞬間、耳をパクリと食べられた!とっさにディラン様を突き放してしまったが、今のは明らかにディラン様が悪いだろう。
「ディラン様、私は別に公爵様に興味がある訳ではございませんので!」
イスから立ち上がり、ディラン様に向かって叫ぶ。きっと顔は真っ赤だろう。
「ごめんね。君が父上の事を褒めたから嫉妬してしまったんだ。さあ、こっちにおいで」
もしかしてこれも演技だったのかしら?近くでご両親が見ているとか?しまった!私ったらつい動揺してしまって、ディラン様を突き飛ばしてしまったわ。慌ててディラン様の隣に座り、すり寄った。
「ディラン様、私の方こそごめんなさい。ちょっとびっくりしただけですわ。私が愛しているのはディラン様だけですので、安心してくださいね」
どうだ!私の演技は!どや顔でディラン様を見つめる。
「アンネリカ、可愛い!」
ギューっと抱きしめられ、頬ずりをしてくるディラン様。こちらも渾身の演技で臨んでくると言う訳ね。ならば私も!ディラン様の首筋に顔を摺り寄せ甘える。
それにしても、傍から見たらきっとバカップルよね。でもこれは演技なんだから、恥ずかしがってはいられないわ。
その後も2人のラブラブ合戦を繰り広げ、周りのメイドや護衛騎士から生暖かい目で見られたのであった。
ラブラブを堪能?した2人はそのまま夕食を食べる為、食堂へと向かう。何だかんだでかなり長い時間、イチャコラしていたようだ。
既に食堂にはディラン様のご両親が待っていた。
「お待たせして申し訳ございません」
慌てた頭を下げたが、2人共特に気にしていない様子だ。
ここでも私たちのラブラブアピールは続く。
「アンネリカ。昨日は緊張していたみたいだけれど、今日はもう大分うちの両親にも慣れただろう。さあ、いつも通り、食事を食べさせて」
そう言うと、口を大きく開けたディラン様。これは食べさせろと言う事よね。ちらりとご両親の方を見ると、生暖かい目で見つめられている。仕方がない。覚悟を決め、小さく切った前菜をディラン様の口に入れた。
「やっぱりアンネリカが食べさせてくれる料理が一番美味しいよ。さあ、もっと食べさせて」
次々と食べ物をディラン様の口に放り込んだ。いつまで続けるのかしら。私もご飯食べたいわ。
「ディラン、アンネリカちゃんの食事が出来ないでしょう。それくらいにしたら?」
夫人、ナイス!これで私もご飯にありつけるわ。そう思ったのだが…
「ごめんね、アンネリカ。俺ばかり食べて。さあ、今度は俺が食べさせてあげるね」
そう来たか!仕方がない、こうなったら徹底的にラブラブアピールよ。
その後、デザートまでしっかり食べさせ合いっこをした。さすがにこれでご両親も納得してくれたわよね。
物凄く疲れる食事を終え、やっと自室に戻ってきた。湯あみも済ませた私に、ローラがハーブティーを入れてくれた。疲れが取れるハーブティーで、寝る前に飲むといいらしい。昨日も飲んだけれど、ぐっすり眠れたものね。
うん、美味しいわ。それにしても、1日中ディラン様と一緒に居られたうえ、ずっとイチャイチャしていたわ。1ヶ月間こんな日々が続くのか。幸せだけれど、さすがに疲れるわね。
でも、あんなに高価な服やアクセサリーをたくさん準備してくれたんですもの。しっかり働かないとバチが当たるわね。それに、やっぱりディラン様と過ごせる時間は、私にとって幸せでしかない。
なんだか急に眠くなってきたわ。やっぱり疲れているのね。おやすみなさい、ディラン様。
次回ディラン視点です。
※今後も頻繁にディラン視点を書いていく予定です。
アンネリカ視点→比較的ほのぼの
ディラン視点→病み気味
こんな感じです。
よろしくお願いしますm(__)m




