#1 プロローグ
※変更点(3月8日以降)
一話早々申し訳ございませんが、ステータスのレベルを撤廃しました。それに加えてストーリーも大幅な変更がされております。本文は既に編集済みです。ご迷惑をかけ致します。
__バレン王国 ウッチャー森林 旧聖ウッチャー神殿 深部
バレニア「な、なんなんだ…こいつらは…」
私は、バレン王国魔法騎士団副団長を努めるさるサレニア・ジョイントコンシャルだ。バレン王国とサンドレ帝国との境目、ウッチャー森林の中枢にある旧聖ウッチャー神殿にいる。我々、魔法騎士団は近年の魔王誕生による魔物の凶暴化及び近隣国との戦争の長期化を理由に古くから伝わる魔法『異人召喚』の儀式を行った。
それは国の危機に世界の創造主である神に祈りを捧げる事で神がその危機を打開するであろう異世界人を召喚する魔法である。この儀式には幾多のも財と大量の魔石を使い、魔法使い十五人が心を一つに召喚の魔法を唱えることで初めて成功する。我々はつい一年前にも異人召喚を行い勇者を召喚する事に成功している。
だが、この儀式によって召喚される異世界人は人数も曖昧で有れば必ずしも望んだスキルを持つ人物が来るとは限らない。そのかわり、召喚される異世界人の彼らの持つスキルは非常に強力で、その特性を合理的に生かせれば無敵ともいえる程だ。
彼らが力になってくれれば我が王国は問題の解決だけでなく、今後もさらなる発展を遂げる事になる。その為に私の総指揮の元構成された精鋭の魔法騎士団はウッチャー森林に生息する魔物に邪魔されながらも神殿にたどり着き儀式を行った。
全ては国の為になると信じて、
…だが、我々は甘かった。
魔法によって生じた雷のような轟音と一寸先も見えぬ煙から現れたのは我々が考えているのとは違った。
そこには何かがいた。それも一人ではない。
それらはこの世のものとは思えないほどの異様で巨大な気を纏い、息をする事すら忘れる程の狂気で溢れている。
形は人に近いが、人ではない。言い方に難があるが、直接的に言えばそれらは人の形をした人ではない化け物だ。
それらが召喚され、少しの間続いていた沈黙は我々には理解しがたい言葉にて破られた。
「は〜、ここがあいつが言っとった異世界っちゅうとこか〜。なんか古臭い場所やなー。なんかこう、桃太郎みたいなお伽の世界やと思ってたわー」
「なんで桃太郎なんだよ。それならオズの魔法使いの方がしっくりくるじゃねえか。あれはお伽話っつてもジャンルがちげぇだろ」
「おい、兄弟ら。ごちゃごちゃくだらん事言っとらんと。ちゃんと周り見いや、囲まれとるで」
本当に…なんなんだこいつらは…
※※※※※※※※※※※※※※
そこは辺り一面真っ白の不思議な空間だった。寒さも暑さも風も感じなければ、地面には塵一つ落ちていない。
まさに無の空間。
自分が浮いているのか、立っているのかも分からない。ただ、そこにいる感覚はあった。
そんな空間に鎮座していたのは三人のイカついおっさんだ。
最上「そんで?なんでこんなところにおっさん三人が雁首揃えて座ってんのや?武川の兄弟ならまだしもだいたい蜥蜴の兄弟は北海道におるはずやろ」
三人の内、顔が岩のようにイカつく、大柄かつ屈強な体格で髪は短めのスポーツ刈りが特徴の大男が重みがある大阪弁だ。
彼の名は最上寅義。
服装は、鼠色のシャツと灰色の長ズボンの上にベンチコートを羽織っている。
武川「そんなん知らんがなぁ。オレだってさっき目が覚めたとこやったんやで?何もする事があらへんかったから昼寝しとって起きたらここにおるんや。どうなっとるんかオレが知りたいぐらいやわぁ」
蜥蜴「俺もだよ。幹部会から帰ってさぁ、家で寝てたらここにいたんだんだよ。しっかし、よりにもよってなんでこの面子が揃ってんだよ」
赤髪のオールバック髪型に男らしいゴールティスタイルの髭が特徴の男は、武川勝鬼。服装は紫のインナーに赤色のジャケットを羽織り、ズボンは黒のスラックスを履いている。声はドスが効いていてかなり独特な大阪弁で喋っている。
もう一人は髪型はモンキー坊主に少し濃い口髭が特徴的だ。
白シャツに水色ネクタイをつけ上下黄褐色のスーツできめている彼は蜥蜴皇田。
声は怠けた感じで口調は少し砕けている。
三人は慌てる様子もなく会話をしていると、突如上から自分たちとは違う声が聞こえてきた。
“来よったか まさかこんな事が起こるとはのう”
萎れた声から声の主は老人だと分かる。だが、上を見上げても誰もいない。
武川「ん?なんや、どこから喋っとるんや爺さん?」
”わしは お主らの世界で言う神様じゃ 近くを見渡しても意味はないぞ わしはお主らの心に囁いておるからな”
蜥蜴「おいおい。神様だぁ?ふざけんのもいい加減にしろよ」
蜥蜴は少しドスを入れた声で発する。
“ふざけてなどおらん 神であるわしの役目は現世で役目を終えた者を天国か地獄、あるいは別世界に転移か転生させる事じゃ お主らも現世で役目を終えた者なのじゃよ それよりもよいか お主らには言わねばならぬ事があるのじゃ“
そこから、神を名乗るジジイによる長ったらしい三人に対する状況説明が行われた。
本当に長ったらしいのでまとめると、三人は既に現世で寿命を迎え役目を終えた者としてここに送られ、三人の生い立ち、性格、生涯などから考慮され天国か地獄に送られるらしい。だが、三人の関しては少し問題が発生していた。まだ三人とも役目を終える前に何らかの理由で死が早まったらしく、天国か地獄に送られる判断基準である死亡するまでの生涯が中途半端になり判断が出来ずにいた。その為、天国にも地獄にも入る事が出来ず、このままでは三人とも成仏される事なく永遠に無の空間を彷徨い続ける事になってしまうのだ。とジジイは言った。
蜥蜴「おいおい、爺さんよぉ。何でそんな事になっちまうんだよぉ。俺達はお天道様に顔向けできるような生き方してたとは言えねぇけどさぁ。どっちにも行けないぐらい大罪はしてねぇぜ?なぁー、どうすんだよ?せめて成仏ぐれぇさせてくれよぉ」
説明を聞いた蜥蜴は半分呆れて口調で神に愚痴った。
“うむ… わしもこう言う事例は初めてなのじゃ わしだってお主らを死の淵を永遠に彷徨わせたくわない …そこでお主らに提案があるのじゃが”
神は一呼吸した後、こう言った。
“お主ら、異世界でもう一度生きてみる気はあるか?“
その言葉に驚いた表情を見せた三人。
そして驚きからにやけ顔に変わった武川が声をあげた。
武川「ほぉ〜、なんかおもろそうな話やないかー!詳しく聞かせんかい!」
武川は目をギラギラさせ甲高い声で言う。
他二人も驚きから興味ありげに少し身を乗り出して耳を傾けた。
“よいか この世にはいくつもの世界があり、お主らがいた世界とは別の世界があるのだ それぞれ世界の特徴は様々で、不思議なエネルギーで満ち溢れる魔法の世界や科学が発達した世界などがあるのじゃ“
蜥蜴「要は摩訶不思議な世界もあれば、近未来的な世界があるってことか」
”お主らの世界を含め他にもいくつかの世界はわしが均衡を保つ担当しておるのじゃが、丁度その一つの世界から他の世界の者を召喚する儀式が行われておる 儀式が行われると、わしは他の世界に住む者を呼び出し恩恵を与えた後、その世界に召喚させねばならんのじゃ その召喚する者を今から決めねばいけないんじゃが お前達がその世界に行ってみる気はあるか?“
三人は目を瞑って考える。少しの沈黙が流れた後、お互いを見つめ言葉を交わした。
最上「まあ、ええんやないか?もう一回生きてみんのもええと思うで」
武川「せやな。まだ暴れられるっちゅうんやったらオレは乗るで」
蜥蜴「はぁー、無の空間に居続けるなんて嫌だからな。俺も行くとするかな」
立ち上がった三人はなんとなく神がいそうな上を向いて神に尋ねた。
武川「んで?神様や?オレらはいつ異世界に行けるんか?」
“あぁ お前達の意志さえあれば転移は可能じゃ じゃがその前にお主らの身分、(ステータス)を見せてくれ“
蜥蜴「あ?ステータス?なんじゃそりゃ?」
首を傾げる蜥蜴に説明を行う。
”身分<ステータス>はお前達の全てが書かれたデータのようなものじゃ 別世界ではステータスによってお前達の強さが決まるのじゃ 確認の仕方はステータスと心の中で念じるのじゃ すると周りに漂う魔法の原素である魔素が反応して自らのステータスを表示してくれる 試しにやってみよ“
三人は心の中でステータスと念じた。
すると突然、目の前に色々な数字と言葉が書かれた黒い画面が現れた。
パッと見、書かれているのはレベルや攻撃力、防御力などが書かれている。
武川「ほぉ〜、こりゃすごいやないか〜!どう言う原理でなっとんねん?」
最上「これで自分の強さが分かるんか?基準が分からへんからどないなんか分からへんな。と言うか字がちっこいな」
蜥蜴「えっと…あなたの種族は『狼人』です…?はぁ?何言ってんだ?これぶっ壊れてんじゃねぇか?」
“それがお前達の情報じゃ お主らの種族なども書かれておるじゃろう? それはお主らが別世界に行った際に成る種族名じゃ“
蜥蜴「え!?俺、人間じゃなくなるの!?まじか…嫌だなぁ〜…」
最上「まだお前はええやんか。俺なんか虎人って書かれとるで。絶対、全身毛だらけやで」
武川「わしは鬼人やな。角とか生えるんか?」
蜥蜴「いや…角とよりかは顔が酒呑童子みたいになんじゃねぇか?まあ変わらねえか」
武川「誰が酒呑童子やボケ」
“これ喧嘩はやめんか まだ話は終わっとらんぞ”
蜥蜴「おっと、それは悪いねぇ。で?なに?」
“う…む、実はお主らの生涯を見ておったんじゃが お主ら本当に人間なんじゃな?“
少し緊張が透ける声で問いかけて来た。
蜥蜴「人を人外呼ばわりはいけないねぇ。俺達は正真正銘人間だっつうの」
”そ、そうか… んじゃが、お主らには念のために釘を刺しておきたい わしの頼みを聞いてくれぬか?“
蜥蜴は、はぁ?約束?と疑問形で言う。
”うむ、これほどの生き方をしたお主達じゃ 異世界でお主らに勝てる者はそう多くないでじゃろう お主らが全力で暴れれば、人など簡単に壊れてしまうであろう じゃから一つ約束して欲しい あまり生命を軽るんじず、無駄な殺生は出来る限り避けてほしいのじゃ これは神としてのわしからの頼みじゃ どうか切に頼む“
その説明を聞いた蜥蜴は、にやけ顔になって神に聞こえる声でこう言った。
蜥蜴「ふ〜ん、俺達は強すぎるから大人しくしとっけってことか〜。どうしよっかな〜。俺、ADHDだからなんかしとかないと気が済まねぇんだよなぁ〜。大人しく出来るかな〜。ついぶっ殺しちゃったりしそうだな〜」
”そ、それは困る そんな事になればわしは神失格になってしまう どうか頼む“
それを聞いた蜥蜴は止まる訳がなくさらに火がついたように煽り始めた。
蜥蜴「へぇ〜、そんなんで神失格になるんだねぇ。あれ?とう言うことは俺達に異世界に召喚するのを提案したのって、俺達が死の淵を彷徨ってたらあんたの立場が危うくなっちゃうからじゃないのぉ〜?」
“な!? そ、そんな訳がなかろう わ、わしは…その…お主らが可哀想に思ったから異世界に招こうと思ったのじゃ! そうじゃ! 決して他意はないぞ!“
蜥蜴「…爺さん、神様なのに嘘下手だねぇ〜。声だけでこんだけ動揺しちゃったらポーカーとか出来ないでしょ」
“う、うるさいわ! これでも将棋は無敗なのじゃぞ!“
蜥蜴「へ〜、そうなんだね。でさ、異世界って銃とかあるの?」
興味無さげに別の話題に切り替える。
”えっ あ う…ん〜、確か最後見た時にどこかでそれに近しい物を作っているのを見た気がするが、確かお主らの世界のような銃は無かったはずじゃ“
蜥蜴「そうか…んじゃあんたに一つ頼みがあんだけど、俺達を異世界に召喚する前に俺達が注文する武器くれよ。向こうに行って素手ってのもなんか寂しいからなぁ。くれたら大人しく行くってやるぜ」
頼む側とは思えず両手を横の広げて、どうだと投げかける。
“武器か それぐらいであれば構わんが…本当に約束してくれるな?”
蜥蜴「あぁ、約束しようじゃねぇか。お前らもそれでいいよな?」
目線を二人に向けると最上はええよ、と一言。
武川はしょんぼりした顔で頭を頷かせた。
蜥蜴「な?これでいいだろ?」
“うむ 分かった お主らが所望する武器をくれてやろう じゃが、そろそろ召喚の魔法が終わる 時間がないから何を持っていくか心に決めよ そのまま転移を開始するぞ 武器は転移後配布するからの それと…気をつけるんじゃぞ 幸運を祈る”
神がそう言うと三人の周りには巨大な魔法陣が現れた。
それと同時に三人の意識は薄れていく。
そして魔法陣が光り輝くと意識は完全に途絶えた。