第六話・不穏な贈り物
数日後追い立てられるようにダリル殿下は祖国に帰って行った。
見送りには行ったのだが、ダリル殿下はいつまで経っても握った手を離さず、いい加減時間だと言われて渋々馬車に乗り込んだ。
そして今日学園から帰った私は、ダリル殿下の帰国を甘く見ていた事に気付いて肩を落としていた。
「……寂しい」
そう、良く考えれば分かったのに、今更後悔しても遅い……
とうとう擬似だった同性友人まで無くしてしまったのだ!!
もう完全にボッチである。
いや暇があれば殿下とかルイスとかラディアスとか来るのだけど、それとこれは違う。
同性の友達が欲しい、切実に……キャッキャ、ウフフとお話したい。
トボトボ屋敷の廊下を歩いていると、一室の前を通った時中から悲鳴が聞こえた。
「きゃぁぁ!!」
「どうしました!?」
慌てて部屋に入ると、三人の侍女が大きな箱の前に立ち、青い顔をして震えていた。
そっと近くに寄って中身を見ると、彼女達が悲鳴を上げたのも分かる気がした。
「これは凄いわね……」
中にはカエルやトカゲの干上がったものや、瓶詰めにされた蜘蛛、不気味な色の何かの根や、怪しげな粉末などが入れられていた。
侍女達はこれを見ても私が眉をひそめるだけで驚かない事に目を丸くしていたが、こんな干物如きで私は驚いたりしない。
何せ、ユーリが薬学も研究しているものだから、彼の研究室で色んな動物のホルマリン漬けを見慣れてるのだ。
話を聞けば、この荷物は今日贈り主不明で届き、不信なので私に渡す前に中を確認しようと、数人の侍女で開封したとの事。
それを聞いた時には、当の本人が確認中にノコノコ現れてごめんなさいと苦笑いしてしまった。
可愛らしい包装紙の横に置かれたカードには『貴女に焦がれる者より』と記入してあった。
白々しいその言葉に溜め息が出る。
私も適齢期の女性なので、どこかの令息が気障な演出で贈ってきた場合もあるが、家ではそんな不信なもの直接令嬢に渡したりしない。
紛失等が無いように数人で、危険が無いか確認してから渡されるのだ。
侍女が恐る恐る危険物が無いか確認してくれたのに感謝して、私はそれをとりあえず倉庫にほうり込むよう支持した。
場合によっては中身から差出人の手がかりが見つかるかもしれない。
後で良く確認してもらう予定だ。
しかし、内心『とうとう来たか』と思っていた。
学園での私は、先日までならダリアも居たから殿下達と一緒に居ても一人で嫉妬を向けられる事も少なかったけれど、今の私はどう見ても、一人で見目の良い男性を何人も侍らすビッチだ。
羨ましいのならいつでも来てくれて良いのにな……あわよくば友達になってくれないかな……
しかし、見目が良く将来有望な、位の高い男性ばかり侍らせるとか、本当にどこの乙女ゲームだろう。
悪役属性なら捨てるほどあっても、私にヒロイン属性があるとは思えないのだけど。
ヒロインと言ったら、やっぱり庇護欲をそそる小動物のような雰囲気で、ふんわり柔らかな綿あめみたいな髪、大きくて零れ落ちそうな瞳、何でか胸の大きい人って少ないわよね……貧乳とは言わないけど。
ああ、それに太陽のように朗らかで天真爛漫、誰にでも分け隔てない慈愛に溢れた純粋な心!
うん、どう考えても私じゃ無いわ。
いっそ私がこの世界でヒロインみたいな女の子を探すとか?
そうすれば殿下達も私の探し出したヒロインに恋して、私には今まで遠巻きに見てただろう女の子の友達が出来たりしないかしら?
結構良いアイデアかもしれない……
寧ろ私が思うヒロインを探すからいけないのかしら?
人の趣味はそれぞれだし、いっそ探す前にみんなの好みを聞いて、総合したような人を探した方が良いのかしら?
『どうしたら理想的ヒロインを探せるか』それから日が暮れるまで考えた私は、本当に考えるべきは『どうしたら同性の友人が出来るのか』だった事に気付いて、がっくりと肩を落とした。




