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第三話・突撃もたまになら

今日の私は最高に上機嫌だ。

何故ならついに魔術師団から連絡が来たのだ!!


実はあの後冷静になった私は、今回の話が殿下に知れたら魔術師棟と同じで、許可が出無いのでは無いかと怯えていた。

危険だからと言う理由なら、同じ魔術でも高位のものを扱う魔術師団はもっと危険だ。


なかなか来ない連絡に、もしかしたら駄目だったのでは無いかと思うと不安でたまらなかった。

朝の鍛錬で顔を合わせる度、物言いたげな私に気付いてたのだろう、『身元のはっきりしてるお前なら、断られやしない』と何度かカイルには苦笑いされていた。

そうは言われても不安なものは不安だ、だからこそ我が家に魔術師団からの書状が届いた時には、小躍りしそうになった。


話が行かなかったのか、行っていて許可が出たのかは分からないが、どちらにしても見学に行かせて貰う事は無事に許可されたのだからそれで良い。


嬉しすぎて足が浮いてるのでは無いかと思うほどフワフワする。

気分が良いから今ならどんな事も寛大に許せそう。


「楽しそうだね、リディ」


たとえ隣の殿下が無遠慮に髪に触れて来ようと。


「殿下、義姉さんの髪が穢れます」


それに対抗するかの如くルイスが指先に口付けて来ようとも。


「…………」


後ろのラディアスの視線が痛かろうとも。

目の前からダリル殿下が走ってくるのが見えても……


てそんな訳あるか!!!


ヒラリと避けたらダリル殿下は見事地面に顔から着地した。

これだけ何回も襲撃を受けてれば、たまには私も避けれるのよ!……わかってればだけど。


けどこれ、不敬罪にはならないわよね?淑女の腹に何度も激突してくる方が悪いわよね。


「リディ、酷い」


イエローブラウンの瞳が涙に濡れて輝き、哀しそうに揺れている。

捨てられた子犬みたいで、私のほうが悪い事をしているみたいだ。

本当にこれで中身男性とか、女性の私が自信を無くすからやめて貰いたい。


「自業自得ですよ」


殿下とルイスに冷たく見下ろされ、座り込んだダリル殿下が頬を膨らましている。

あざとさを感じるしぐさだけど、可愛い子がやれば女でも男でも可愛いのね。

そんな事を思っていると、不意に視界からダリル殿下が消えて変わりに広い背中が見えた。

ラディアスが私をダリル殿下から隠すようにして立っていたせいだった。


最近ラディアスは過保護になったような気がする。

特にダリル殿下に関しては、私から引き剥がすのが己の役目と言わんばかりで、その速さはいつか秒速を越えるのではないかと密かに思っている。


本来護衛するべきは殿下だと思うのだけど……

ちらりと見てみたけれど、殿下はダリル殿下の方から目を逸らさないし、不快そうな気配も無いし問題ないのだろうか?

考え事をしていたから、殿下をじっと見つめてしまっていた事に気付かず。

不意に顔を上げた殿下と視線が会ってにこりと微笑まれてしまうと、慌てて苦笑いを浮かべてしまった。


「そういえばリディ、今日はどうしてそんなにご機嫌なんだい?」


殿下の機嫌なんて気にしなければ良かった。

聞いて欲しくなかった事を尋ねられて、私は俄かに動揺した。


なんて言って誤魔化そう……


「今日、最初の授業が魔術の実技だからではありませんか?」


目が泳いでしまっている私に対し、救いの言葉がルイスから投げられた。

縋るような目を向けると、僅かにルイスが微笑む。

そうだった、我が家に届く書状の内容を、お父様の手伝いをしているルイスが知らない訳は無い。

知っていて助け舟をだしてくれたのだろう、ありがたくて泣いてしまいそうだ。


「そう!そうですわ!!もう今から楽しみで」


必死に愛想笑いを振りまきながら、何とかそれに乗ってみる。

ルイスの表情が若干曇ったような気がした…………言い方がやっぱり嘘っぽいかな?自分でもそう思う……


最初は訝しげな表情を浮かべていた殿下だが、私が必死で愛想笑いを浮かべると『そう、良かったね』と言って笑って受け流してくれた。

ちょっとだけ申し訳ないような気持ちになったけれど、ばれて突然中止なんてなったら泣くに泣けない。

どうせ私は嘘が下手なのだから、浮かれ過ぎてばれないように注意しようと心に決めた。


そうこうしているうちに、座り込んでいるダリル殿下がようやく立ち上がり、私達は教室へ向かって歩き始めたのだった。


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