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第三十話・痛む胸と譲れぬ想い

守ると決めて行動を開始したものの、それは結構大変な事だった。

何せ学園中の男性がティファが嫉妬のあまり彼女を虐めていると盲目的に信じており、私が何度そんな事実は無いと訴えても聞く耳を持たないのだ。


逆に女性は軒並みティファと私を信じてくれて、アル様達に取り入る為に虚言を繰り返しているのだろうと噂した。

それが男性達の耳に入り、学園の女生徒は権力に巻かれた上、リリーナ嬢に対して嫉妬して悪評を広めていると批判。

現実が見えない愚かな男と女性陣も煽るものだから、今や学園は二派に別れ徹底抗戦の構えを見せていた。

この事件がきっかけで、婚約破棄した男女まで出てきているらしい。


どうしてこんな事になってしまったのだろうと、頭を抱えながら自宅に帰ると待ち構えるように、ルイスがエントランスに立っていた。


「ただいま、ルイス」


まるで一時期のように冷たい目で私を見据え、挨拶すらまともに返してこない。

たった数日で、ここまで嫌われてしまったのかと泣きたくなった。


「僕が何を言いたいか、お分かりですよね?」


視線と同じ低く冷たい声が頭上から降ってくる。

私は黙って首を横に振る事しか出来なかった。

慣れてる時は結構平気だったのだけれど、優しい声や言葉を知ってしまった今は、平静な振りをするのは結構きつい。


「あの隣国の王女の件だと言えば分かりますか?」


変わらぬ声で一歩前に出たルイスが尋ねる。

やっぱりそれか……他に無いし予想は出来けれど、本当にそうだとは思いたくなかった。

今までは他の男性から言われる事はあっても、アル様やルイス達に直接言われる事が無かったから何とかやって来たけれど。


とうとう彼らとも戦わなければならないのか……


それでも私はティファを守ると決めたのだ。

あの優しい友人を、冤罪なんかで罪人にさせたりしないと誓ったのだ。

その為ならたとえ彼らでも戦うしかない。


「ティファはリリーナ嬢に危害を加えたりしていないわ」


私を睨みつけるルイスに、私も同じように睨みつけた。

負けない、負ける訳にはいかない……


「リリーナ本人から訴えが出ている、証人もいます」


「だから!!それが可笑しいって言ってるの!ティファは毎日休み時間も昼休憩も放課後もずっと私と一緒に居たわ、いじめなんてしてなかった!!どうして信じてくれないの!!」


そうだ本当にずっと一緒に居てくれたのだ、リリーナ嬢を虐める時間なんて無かったはずだ。

それなのに男性陣は誰もそれを信じてくれない。


「貴女が一緒に居たと虚言を吐けば、それで全て無かった事に出来るとでも……」


ルイスもさも当然のようにそう言ってのけた、他の男性達と同じように……


「嘘じゃ無いわ、本当よ。他にもティファを見ている人は居るはずよ」


「ええそうですね、しかしその証言をしているのは女性ばかりだ。リリーナを敵視している女性の証言など数に入らない」


「それを言うなら虐めの証言だってそうでしょう!?男性ばかりじゃないの!!」


話は完全に平行線だった、私達は互いに睨みあったまま一歩も引かず、そのまま暫く沈黙が続いた。

先に視線を外したは私だった、今のままでは証拠も不十分だし、ここまで盲目的に信じ込んでいる以上何を言っても無駄だろう。

諦めるつもりは毛頭無いが、今これ以上いがみ合っても意味が無い。


「ティファはやってない、私が言いたいのはそれだけよ」


そう捨て台詞を残すと私はその場を去ろうと、ルイスの横を通り過ぎた。

すれ違う寸前に腕を取られ、無理やり振り向かされた。


「僕の話は終わっていません、これは最後の忠告です。王女との関係を切りなさい、ジェラルダイン家の名に泥を塗る前に……」


ルイスの命令するような威圧的な態度に怒りが爆発した。

アル様達がティファをあまり快く思っていなかったのは知っているが、だからと言ってここまで言われる筋合いは無い。


「貴方に関係ないでしょう!!ほっておいて!!」


掴まれた腕を乱暴に振り解くと、私は全力で自室へ駆け込んだ。

悔しくて情けなくて哀しくて……

私はそのまま一晩中泣き続けた。


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