第二十四話・得意不得意
翌朝起きてみれば、ルイスはもう出かけたようで居なかった。
変わりに枕元には朝露に濡れた赤い薔薇が一輪置かれていて、女嫌いなのにどこでこんな事覚えてくるんだろうと、それを手に脱力してしまった。
しかし私もいつまでもベットで惰眠を貪っている訳にはいかない、気合を入れなおして動きやすいワンピースを用意してもらうと、早速着替えて鍛錬場へ向かった。
鍛錬場でカイルに相手をしてもらいながら、昨日の事を聞いてみる。
ルイスの焦燥具合から大変だったのだろうとは思っていたが、想像以上だったようだ。
「睨みつけようが、遠くに離れようがくっ付いてて、あれは流石に気の毒だったな……」
長い術式のものだと直ぐに隙が出来てカイルに負けるので、短めのを連続して放っているのだが、話しながらなのにさらりと避けられるのが悔しい。
でも、あんなに怒られて青くなってたのに、その後怒ってる本人達に付いて歩くって凄い度胸だわ。
そのぐらいの気の強さが無ければ、王女なんて務まらないってことなのかしら?
他にも優良男性なんていっぱい居たと思うのだけど。
「気の毒だと思ったなら……変わりに……行ってあげれば……良かったんじゃないっ!!」
三連続で風の術式を展開する。
最後は少し多めに魔力を込めてみたのだが、あさっり不発……一発くらい当ててみたいわ……
「あり得ないな、あんな我侭なお嬢様相手してられるか」
「私も十分我侭なお嬢様だと思うけど?」
話してる間に中級術式を組んでみる、まだ気付かないでね。
「リディとは方向性が違うだろっと!」
「キャウン!!」
甘かった、やはり気付いていたカイルに足元を狙われ簡単に転倒。
術式は霧散した……犬みたいな声出ちゃったよ。
「魔術師は基本後方支援が多い、理由は術式展開にどうしても時間が掛かるからだ、一対一では不利になる。緊急時はそこをどうやって巻き返すかが重要だろうな」
「どうしたら良いですか先生」
差し伸べられた手を取りながら、呻くように尋ねる。
「知らん、俺は魔術はさっぱりだからな」
やっぱりねと肩を落とす、騎士として実力あるカイルだけど、魔術は知識も技術も全くと言って良いほど無い。
本人曰く、血筋的に使えないのだとか……
魔術が全く使えないのに、国一番の強さを持つカイルのお父様は人間離れしていると思う。
「そろそろ時間だ、上がるぞリディ」
壁に埋め込まれた時計を見てみれば、私も時間ギリギリだった。
「今日も付き合ってくれてありがとう、また明日ね」
背を向けて立ち去るカイルが、片手を上げて答えてくれた。
私は置いていた荷物を持って、外で待っているだろう自家の馬車に向かった。
今日の話に出た緊急時の対処については、近いうちエルクレオ様にでも相談してみよう。
最近は七日に一回くらいのペースでお邪魔している。
先日ユーリにも一緒に行くか尋ねたら、真顔で『あの人苦手』と答えられた。
あんなに親切で仕事熱心なエルクレオ様が苦手なんて、不思議だな?
まあ……お怒りの時は、私もご遠慮させて頂きたいけど。
そんな事を考えながら館に帰ると、急いで準備して今度は学園に向かった。
今日の短い……申し訳ございません。




