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第二十三話・昔と今

帰って早急に湯浴みを済ませると、夜着に着替えてベットに潜り込んだ。

正直色々疲れていたので、私は直ぐに意識を手放した。



どのくらいたって居たのだろう、何となく違和感のようなものを感じて、ゆっくりと意識が浮上した。

室内が真っ暗な事からまだ深夜だろう事が伺える。

やはり腰の辺りが何か重い……身動ぎすると強い力で抱きしめられた。


「ッ!!?」


驚愕して寝ぼけていた頭もすっかり目が覚め、多きな声で叫ぼうとしたら口を手で塞がれた。


「義姉さん……僕です」


やっと暗闇に慣れてきた目で良く見れば、確かにそこに居たのはルイスだった。

なんだルイスか……と一瞬だけほっと力を抜いたが、違うだろうと気がついてまた慌てた。

普通に考えて例え姉弟でも、未婚の男女が密室に二人きりってどうなの?

ましてここ寝室よ、ベットの上よ、色々抜きにしても問題あり過ぎでしょう!


急いで距離を開けようとルイスの肩を押してみたけれど、びくともしなかった。

それどころか逃げないようになのか、腕の力が更に強まってちょっと痛いくらいだ。


「ル……ルイス?少し離れてくれないかしら、痛い……」


痛がる私に気付いて少しだけ力を緩めてはくれたけれど、ルイスは離れようとはしない。

どうした事かと困惑していると、ルイスは力なく呟いた。


「……気持ち悪い」


体調が悪かったの!?

よくよく顔を見てみるけれど、薄暗すぎて良く分からない。


「具合が悪いの?大丈夫ルイス、部屋間違えたのかしら……付いていってあげるから、自分の部屋で寝た方が良いわ」


ルイスは黙って首を横に振ると、そのまま私のお腹に頬を摺り寄せてきた。

強くくっ付き過ぎて分かり辛いけれど、ルイスは少しだけ震えていた。


不意に子供の頃の事を思い出した。

まだルイスが家に来て間もない頃、前の家で嫌な思いをしてきたのか、ルイスは度々悪夢に魘されていた。

睡眠不足でフラフラしているルイスを見て、何もしてあげる事が出来なかった私は、せめて一緒に居たら怖い思いが半分になったりしないかと、勝手にルイスの自室に乗り込んでは、こうして振るえるルイスを夜中抱きしめていた。

最初は嫌がってたルイスが、途中から一緒に部屋に帰ろうと手を引いてくれるようになった時は嬉しかったな……


子供の頃と違って、大きくなったルイスは冷静で、普段こんな暴挙に出る事は無い。

今日は私も疲れたけれど、ルイスはもっと辛かったのかもしれない。


震える頭をそっと撫でてると、肩が一度だけビクリと震えた。

でもその後は心地良さそうにされるがままになっている。


「どうしたの?私が聞いても大丈夫ならなんでも聞くわよ?」


出来るだけ優しく語りかけると、お腹の上のルイスはポツリポツリと話だした。


「あの女がいつまでも纏わり付いてきて、触られた手が気持ち悪い……湯浴みしてもまだ嫌な気持ちになって……義姉さんに触れて忘れたかった」


あの女ってティファニア殿下のことかしら?

あれだけの騒動の後なのに、お相手探しは決行されてたのね。

だけど女性に触られただけで気持ち悪いって、流石に言い過ぎじゃない?


そう言えばルイスが他の女性とダンス踊ってるの見たこと無い。

まさかと思うけどルイスって……


「女性恐怖症だったりするの?」


「不快なだけで、怖くは無いです」


女性嫌いか、十六年生きてきて知らなかったよ……

しかしそうだとすると私もダメなんじゃない?

眉間に皺を寄せて悩む私を見て察したのだろう、頬に手を伸ばし触れながら見つめる。

少し朧げな視線は、それでもしっかりと私の瞳を見ていた。


「義姉さんは別です。貴方だけは特別……」


そう言うと顔を上げて背を伸ばし、触れていない方の頬にキスをした。

顔を赤く染めて慌てる私などルイスは見もしないで、そのまま元の場所に戻るとウトウトとまどろみ始めた。

やっと私が冷静になった頃、ルイスは私のお腹の上で安らかな寝息をたてていた。


ルイスの寝顔なんて何年ぶりに見るかしら、なんて感慨に耽っていられたのはほんの数分だけだった。

考えてみたら、男と女が二人きり寝室で夜を明かしましたなんて、何も無くても不味いでしょう!?


どうしよう、どうしよう、誰か呼んで運んでもらう?

しかし、がっちり私の腰を抱えたままのルイスは離れそうに無い。

錯乱した頭で暫く悩んだ末、結局夜間勤務の侍女一名に寝室のソファーで待機してもらう事にした。

二人きりでなければまだ何とか言い訳がたつ。

本当に疲れきった私は、そのままひっくり返るようにベットに倒れこみ寝た。

人間疲れていればどんな状況でも寝れる!!


そしてこれは後に知った事だが、お父様は私の部屋にルイスが来た事を知っていた。

知っていて黙認していたらしい……

本格的にルイスを推してきたとわかった瞬間だった。


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