表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
26/44

第二十一話・可笑しな夜会

たった一曲踊っただけで精神的に疲労した私は、休みたいとお願いして壁際に移動してもらった。

殿下は今日の主催者側なのでお忙しいらしく、ホールへ戻っていった。


その際すぐに戻るから絶対にここから動かないようにと念押しされて、何度も頷いた。

普段エスコートして貰う時も疲れて壁際なんて良くある事なのに、あまりに真剣な顔をして言うものだから迫力に負けてただ頷くしか出来なかった。


やはり今日は何かある……


訝しげな顔をしていると、横から果実水が差し出された。

私がお酒苦手なの知ってるなんて誰だろう?と差し出した主を見てみれば、そこには正装したラディアスが立っていた。


驚愕に目を見開いてしまった。

いや、ラディアスが私がお酒苦手なの知ってるのはまだ分かる、エスコートされて出た夜会で護衛をしていた事があるからその時知ったのだろう。


だが、今日のラディアスは騎士服では無く貴族の正装なのだ!

今まで殿下の護衛であるラディアスが、帯剣せず夜会に参加した事は無い。

ゆえに必ずと言って良いほど騎士服を着てくるし、基本的には近衛の騎士と同じように会場を警備している。


それなのに、そのラディアスが正装して、その上殿下の傍ではなく壁際にいるのだ。

驚くなと言う方が無理な話だ。


取りあえず差し出された果実水を、お礼を言って受け取った。

喉が渇いていたのは事実なのでありがたい。


「相変わらずお前の話は凄いな」


一口飲んでホッと息を吐くと、今度は反対側から声を掛けられた。

この砕けた話し方は私が知る限り一人しか居ない。


「好きで広めてる訳じゃないわ、どうせなら止めるの手伝ってよ」


視線をカイルに向けて、私は又も固まった。


「カイル……貴方まで正装なの?」


カイルに頭を下げるラディアスと、片手を上げてそれに答えるカイルを見て、立場的にはカイルの方が上なんだと初めて知った。

しかし、そんな事より本当に今日はどうなっているのか、一騎士隊の隊長であるカイルまで正装で参加なんて、今日の警備は大丈夫なのか?

私の顔を見て何が言いたいか分かったのか、数度頭を搔いて怪訝そうな顔をする。


「今日は親父が総責任やってるから警備は気にするな、それよりわざわざ俺にまで正装で参加しろなんて言って来た方が、おれも気になってる……一体何のつもりなのか」


「私もそのように実家から命ぜられました」


カイルもラディアスも?

不思議に思いまわりを見渡すと、普段見慣れない人物が何人か居る事に気がついた。

社交が苦手で有名な伯爵家の次男とか、普段長男が参加するだけで殆ど参加しない男爵家の三男とか。

そしてそれらの人物は、何故か総じて顔が整っている……


自分の両隣をもう一度見てみた、考えるまでも無い美男子二人。

あれ?どういうことだろう?

共通点は見つけられたのだが、理由にはたどりつけない。

そうこうしている間に、広間に主役が到着したと声が掛かった。


慌ててそちらを向くと、柔らかな笑みを浮かべた女性が、見覚えのある人物に手を引かれて歩いている。


「……ダリル殿下?」


今日は男性の正装を纏っているのでいつもと雰囲気が違うが、ピンクブロンドの髪を靡かせ歩く姿は間違いなくダリル殿下だった。

何時戻ってきていたのだろう、同性の友人(偽)に帰国を教えてくれないなんて……

ちょっとくらい睨んでやろうかしら?と意地悪な気持ちが湧き上がり二人を良く見たら、怖いくらいダリル殿下が無表情なので心配になってきた。


「何だか……色んな意味で大丈夫かしら?」


つい呟いた言葉に隣の二人は無言で頷いてくれた。

どうやらそう感じたのは私だけでは無いらしい。


暫く見ていると、不意にダリル殿下と目が合った。

満面の笑みを向けられて、後ろを確認してしまった……誰も居ない寧ろ壁だよね。

もう一度前を向き自分だと確信したので、愛想笑いで返しておいた。

こんな注目集める所で、これ以上噂増やすの止めて欲しいんだけど。


すると途端に背筋がゾクッと寒くなった。

理由は探すまでも無い、隣の女性から物凄い殺意を感じる視線で睨みつけられたからだ。

色々あったけれど、ここまで明確な敵意を感じたのは流石に初めてだ。


視線を逸らす事も出来なくて、動けなくなっているとカイルとラディアスが一歩前に出て、私を彼女の視線から隠すように立ってくれてた。

二人は壇上の女性を睨みつけている。

敵意すら感じる表情で女性を見ていたのに、女性の方は何故か頬を染めると視線を逸らした。

その様はまるで恋する乙女のようで……


彼女はダリル殿下が、私に笑いかけたから怒ってたんじゃないの?

様子を伺うように見上げると、二人も困惑した表情を浮かべていた。

何がしたいのか分からない、不信に思いながら立ち尽くしていると陛下より二人の紹介があった。


男性の方はやはりグラウン国第二王子ダリル殿下。

ダリアとして留学していた期間についてはやはり極秘なのか、一切話しには触れなかったが今回もダリル殿下は留学目的で数年滞在するようだ。

呼び出された理由は分からないけれど、今度は正式に王族の名で留学する事になったみたい。


もう一人の女性はリベリアの第二王女でティファニア殿下。

こちらも数年間見聞を広める為の留学にいらしたそうだ。

近々やってくる予定の転入生とは、彼らの事だったのかと納得した。


そして早々に諦めた……あの殺意の篭った目を見てしまうと、ヒロインとは言い難い……


しかし、本当は前から来ていたダリル殿下と違い、こんな中途半端な時期に留学なんて、と思ってから急に今日の可笑しな夜会を思い出す。


いつもは居ない列席者、整った顔の男性、時期外れの留学……


ああ、やっとわかった。

これはあの王女殿下のお相手探しなのか。


両隣の二人も恐らく今ので目を付けられただろうから、この辺りが騒がしくなるのも時間の問題だ。

気付いたら早く帰りたくなってきてしまった。

絶対この後無事では終わらない……


「私挨拶だけしたらさっさと帰って良いかしら?」


「無理だろ」


「…………」


はっきり答えるカイルとラディアスの無言の訴えに久しぶりの胃痛を覚えた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ