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第九話・暇潰しは羞恥とセットで

翌日から私の周りは、昨日より監視が凄くなった。


朝、殿下だけになっていたお迎えは、前と同じくルイスも参加するようになり。

授業時間外はラディアスだけだったのが、暇を見つけてはルイスと殿下もやってくるようになった。

極めつけは放課後、ルイスと帰るだけだったのに、今では殿下の仕事が終わるまで生徒会室で待機させられていると言うことだろう……


「飽きた……一人になりたい……」


こうなって来ると本を読むくらいしか出来る事も無いので、毎回図書室で借りて来ては呼んでいたのだが、毎日となるとやはり飽きる。

いっそ目の前の書類整理に参加したいくらいだ。


放課後真っ先に私を迎えに来るルイスに、生徒会の仕事はどうしたと思っていたが、やはり私にルイスを付ける為殿下が一人で仕事をしていたらしく、若干滞っているのが見て取れた。

そうまでしてルイスを付けなくても護衛は居るし、今日までまだ一度も令嬢から呼び出しすら受けてないのだけど……

しかし、三人には理解してもらえず今に至る。


「もう直ぐ終わるから、お茶でもして待ってて」


笑顔の殿下に若干の殺意が湧く。

ここのお茶菓子美味し過ぎて、この数日でちょっと太ったんですけど!!

八つ当たりなのは分かってる!でもストレス溜まってるから怒りが在らぬ所に行くのよ!!


動きたい……ラディアス来たら手合わせでもしてもらおうかしら……断られそうだけど……


そんな事を思っていたら報告を終わらせたラディアスが帰ってきた。

私と目が合うと、苦笑いしている。

手合わせしてもらおうと思っていたのがばれたのか?

つい顔をペタペタ触っていると、気付けばラディアスは直ぐ傍に来て傅いていた。


「庭に散歩でも……」


美声を近距離で聞いて、瞬間的に真っ赤になったが、数度の深呼吸で冷静さを取り戻し差し出されていた手をそっと取った。


「ご一緒させてください」


私が答えると、ラディアスは嬉しそうに微笑んで頷き立ち上がった。


後ろで仕事する二人が睨んでいるような気がする。

遊んでるのがずるいと思われているのだろうけど、仕方無いじゃないか私は暇なんだから。

庭を散歩なら運動にもなるしありがたい。

私はラディアスにエスコートされるまま立ち上がると、満面の笑みを浮かべて生徒会室を後にした。



そのまま裏庭に向かった。

もう直ぐ夏が来る頃だけれど、まだ返り咲きの薔薇が咲いていて綺麗だった。

その中を二人でゆっくりと歩く、運動不足の私としてはもう少し早くても問題ないのだけれど、令嬢をエスコートとなるとこのくらいの速度が正しい。


大分奥まった所まで来て、ラディアスが急に足を止めた。

不思議になって見上げると、それはそれは溶けそうな瞳で見詰めてくる。


真っ赤になって俯いた私は、ラディアスの腕の中に捕らわれて初めて彼が目の前まで近づいていた事に気が付いた。


「ラ……ラディアス……様?」


声が震える、今までラディアスがこの距離まで近づいて来た事は無い。


「前から、気になっていたのですが……」


近すぎて耳のすぐ横から圧倒的な美声が聞こえてくる。


「リディアーネ嬢は、私の声がお嫌いですか?」


最初の頃の私ならこれでもう駄目だったが、大分耐性が付いた為まだ何とか耐えられる。

とりあえず首を横に振る事だけは出来た、この声嫌いな女性はいないでしょう?

かなりの生物兵器だと思うけど……


「そうですか……嬉しいです」


もう無理!!

耳に唇が触れるほど近くで囁かれ、さすがの私も耐え切れなかった。

腰が砕けてその場に崩れ落ちそうになる。

それをラディアスは片手で支えてくれた。


「大丈夫ですか?」


支えてくれるのは嬉しいのだけど、お願いそれ以上そこでしゃべらないで!!

私は首がもげそうなほど縦に振って肯定した。

ラディアスを黙らせたいのに、私がしゃべれなくなってる。


真っ赤な顔でちらりとラディアスを見上げると、彼は不安そうな表情をしていた。

どうやら何が理由か分からないが、自分のせいで私が体調を崩していると思っているようだ。

無自覚とは怖い……

しかし、ラディアスに罪は無い何とか誤解を解かなくてはならない。


私は羞恥で俯きそうになる顔を上げ、自分を鼓舞しながら何とかラディアスを見た。


「……あの……苦手とかでは無く……その……ラディアス様の声が……その……素敵だから……その……」


あのとかそのとかばかりで、上手く伝わったか分からない。

でもこれ以上は恥ずかしくて言えそうも無いかった。

貴方の声が良過ぎて、腰が砕けるんですなんて死んでも言えない!!


自分でもちょっと涙目になってるのが分かる。

ごめんねちゃんとフォロー出来たかな?

不安げに見上げると、目が合ったラディアスが一気に顔を赤く染め後ろを向いてしまった。

どうしよう不快にさせてしまったかしら?


ますます不安になっていると、急に体が中に浮いた。


「とりあえず、医務室に行きましょう」


ラディアスに抱えあげられ移動を開始する。

前にもあったけど、またあの羞恥プレイしなきゃいけないと思うと居た堪れない。

ラディアスはあれから目を合わせようとしないし、どうしたら言いか分からない。

仕方が無いので、前回同様肩に顔を埋めて周りを見ないようにした。

気休め程度だが少しは違う。


顔が触れた時、ラディアスの肩が震えた気がしたけれど……多分気のせいだろう。

ああ、医務室の先生になんて言って言い訳しよう。

暫く私はそれしか考えられなかった。


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