第七話・リサイクル方法
私は今思ったより重い荷物を抱えて研究棟に向かっていた。
先日自宅に届いた贈り主不明の荷物だが、結局なんの手がかりも見つける事は出来なかった。
梱包も箱から包装紙から街に出れば誰でも買える様な、ごく普通の梱包だった。
諦めて処分しようと思ったら、それを愚痴ったユーリに薬学に使えるかもしれないから、捨てるなら譲ってくれと言われてしまったのだ。
こんなガラクタみたいなもの役に立つのか疑わしかったが、仕えないと判断したら捨ててくれるというので、とりあえず持って来てみた。
馬車の駐車スペースから研究棟は結構距離がある。
どうせ乾物ばかりだから大した重さも無いだろうと高を括って、御者が手伝うと言ってくれたのを断ってしまった事を後悔した。
こんなに重いなら頼めば良かった……
やっとの思いでユーリの研究部屋に着き、荷物を下に置いて扉を開ける。
「持って来たよ、ごめんユーリ扉押さえて」
中に居るユーリを呼べば、慌ててこちらに駆け寄ってくる。
「ゆっくりで良かったのに……殿下は……居ないよね?」
ビクビクしながら外を確認しているが、居たら私の方が驚くわ。
ユーリに扉を頼もうとしたら、『こっちのほうが重そうだから』と荷物の方を運んでくれた。
実は扉より重いと愕然としてただけに、とってもありがたい。
「これが例の嫌がらせ?」
開いてる部屋の片隅に運んで、ユーリが中を確認し始めた。
私は運んで来るだけで精一杯だったので、すぐさま自分用の椅子を持ち出して座った。
基本的にユーリの部屋には来客が来ないらしいので、応接用のソファーが無い。
その為ここ最近また良く来るようになった私は、自分用の折りたたみ椅子を用意しそれに座っている。
立ちっぱなしは結構辛いからね。
「……これ……」
一息ついてユーリの方を見ると、中身を確認していたユーリが眉間に皺を寄せて何やら考え込んでいた。
「どうかしたの?」
変なものでも入っていたのだろうか?
不安になって尋ねると、ユーリはいつも通り苦笑いを浮かべ首を横に振った。
「ううん、大丈夫だよ。思ったより使えるものが多いから驚いて……これ、このまま貰うね」
ユーリが箱を持ち上げて、研究机の横に寄せるのをじっと見詰める。
「どうぞどうぞ、家にあっても使わないから」
どうやら薬学としてはあんなガラクタでも使えるらしい。
少し興味も湧いたけど、あの蜘蛛だのカエルだのを使った薬と思うと、それだけで飲めなくなりそうだから、知らないほうが良いと聞く事はしなかった。
すごく大事な薬で、今後飲まなきゃいけない時が来たら嫌だし……
「じゃあ、それ置いていくね。二日連続で来てるのばれると殿下に怒られそうだから、そろそろ帰るわ」
青い顔をして振るえるユーリがちょっとだけ可哀想にも思ったけれど、殿下には気づかれないように帰るから許して欲しい。
ごみ捨てお願いするだけにならなくて良かったと安堵して、私は足早に研究室を退散した。