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ノルアイネ嬢

私はノルアイネ=ラーグラス。グライアン国に三家ある公爵家の一つ、ラーグラス公爵家の長女であり王太子の婚約者。

「ノーア?どうしたんだい?」

この状況はなんなのだろうか…。何故私はこんなところに座ってるのかしら?

「ノーア?まったく。私の可愛いお姫様は…」

兄様がなでなでと私の頭をなでておられます。あっ!もうちょっとなでて…じゃなくて…

「…兄様…私一人で座れます」

今は、午後のティータイムを兄様と過ごしているのだけれど…椅子は二脚あるのに!あるのに!!何故か私は兄様の膝の上に座らされているのです。腰にしっかりと腕がまわされていて動けませんっ!!うぅ…。

「何を言うんだい?私のノーアが椅子から落ちて怪我でもしたらどうするんだ」

兄様がその美しすぎる容貌を少し歪めてそんなことを言ってくる。…くっ…美形ってどんな顔でも様になるのですねっ!

兄様は私と同じ銀色の髪に紫色の瞳の美形様です。

同じ色なのに…神様って残酷ですよね?

「兄様…私も今年で16になります…椅子から落ちるなんてことはありません…」

そんな美形の兄様はモテます。そらそうだ!!夜会などでは多くのご令嬢方を骨抜きにしています。そんな兄様も今年で20歳。結婚適齢期真っ只中です!!

なのにもかかわらず、兄様には婚約者はおろか恋人もいないそうなんですが…嘘くさいですよね?そう思いません?これはあくまで推測なのですが、密かに想いを寄せる女性がいるのではと私は思っています!きっとそれは世間や家族にも言えぬ苦しい恋!そう!禁断の恋!!身分の低い町娘や侍女、はたまた人妻…ハアハア…失礼しました。

なにぶん、屋敷から滅多に出ないうえに家族と使用人、幼なじみ以外の男性と接する機会などないもので…いささか恋愛方面への想像力が豊かですの。

(主に恋愛小説に感化されております。)

「さぁ、ノーア。あーん」

少しトリップしておりましたわ。いけないいけない

。ふにふにと兄様が私の口にベリータルトを押し付けてきます。

「兄様…一人で食べられますわ」

もう私は社交界デビューも果たした立派な淑女なのですよ?

「ん?これは好きではなかったかい?」

兄様はふわりと笑って違うタルトを口もとに押し付けてくる。…兄様…そういう問題ではないです…。

兄様のことは大好きだが、こんなところには正直困っている。兄様はいつまで私を幼児扱いするのだろうか?何度も言いますが今年で私16ですわよ?

グライアン国では15歳が社交界デビューと決められてはいるが強制ではない…何故か私の社交界デビューをしぶる父と兄、幼なじみの反対を押し切り、この間やっと憧れの社交界デビューをした私は、ここ最近まで落ち込んでいたこともあるからか兄様が特に優しい…いや、何か甘い…。

まぁ、いつもの事だけれど…。もぐもぐ…

「今日のドレスもノーアの可愛らしさをよく引き出していて、とても素敵だ」

憧れの社交界デビューをした私は愕然とした。幼い頃から父や兄様に女性は少し大きめの大人しい色のドレスの方が美しいのだ。むやみに家族以外の男性に顔を見せるのははしたない、声も必要最低限の言葉で小さめに…と教えられてきたために仮面をつけ、少し大きめの灰色のドレスを着て社交界デビューを果たしたのだ。ところがそこに広がっていたのは目のくらみそうなほどの輝かしき世界だった。自分のように灰色の大きめなドレスなんて着ている人は一人もおらす、煌びやかで身体の線が美しくみえるドレスに身をつつむ女性の姿。

そのような方達が私を見て固まってしまわれたので自分の姿が恥ずかしくなり逃げだしてしまったのです。いったいどういう事なのか父と兄様に解いただしたところ私が王太子様の婚約者だからだといいます。将来、王妃となり国母になるには古からの女性の正装にをしなければならないのだと…。

王太子様の婚約者とは国中の女性が一度は夢みる名誉なもの。そのためならと私も納得したのですが、あの煌びやかなドレスを纏えないのは残念で仕方なく、落ち込んでしまっていたのですが今はもう大丈夫です。父様や兄様様が褒めてくださるので自信をもてるようになりました。

それに、これは誰にも話していないのですが私は王太子様をお慕いしています。私の周りは兄様を始め、社交界デビューを済ませた子供が二人いるとは思えないほど若々しく、兄様によく似た美形の父様や金色の腰までとどく髪にアイスブルーの瞳の美形な幼なじみと美形様が沢山おられるのですが、なんと言いますか中世的?な美形様方なのです。私は、もっとこう…男らしい方が好みでありまして、王太子様はなんと私の好みにドストライクであらせられるのです!!

ほどよくついた筋肉にあの涼やかな藍色の瞳…ああなんて素敵なのかしら!!

そんなこんなで、この姿であっても全ては王太子様のため!!と我慢しようと思ったのです。

「……待っていてください。王太子様!!私は王太子様のためならばどんなことも頑張れます!!」

「……あのクソナルシ…やっぱり消すか?…」

うっとりと独り言をつぶやくノルアイネには兄の不吉な言葉はきこえなかった。

古からの正装うんぬんは父と兄のでっちあげです。

ちなみに、兄の名はクライス=ラーグラス。 父は、カーライル=ラーグラスです。

幼なじみは…わかる人はわかったのではないでしょうか?

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