王太子の憂鬱
公爵令嬢と王太子、幼なじみ…三人の恋愛コメディです。「自由って素晴らしいわねっ!」レッツ自由恋愛!
「アラン。もうすぐ始まるよ」
側近のジェノスが言った。
「ああ…もうそんな時間か…」
彼とは幼い頃からの付き合いで、今では親友であり良きライバルだ。
切れ長のアイスブルーの瞳に腰まで届く藍色髪。
容姿端麗、頭脳明晰といった言葉を欲しいままにするこの男は良き親友でライバルの俺にもよくわからない奴である。
「ノルアイネ嬢ももうお着きになったそうだ」
俺はアラン=グライアン。この国の王太子だ。
今日は、俺の18歳の誕生日を祝う夜会が催されることになっている。
はっきり言おう。俺は…モテる。
金色の少しウェーブしたかみに金色の瞳。綺麗に整った顔に筋肉がほどよくついた肢体。
今、ナルシストと思った奴!不敬罪で投獄するぞ!
おほんっ!まぁ、そんなことはさて置きそんな俺は今、とてもとても不機嫌である。
「彼女は今何処に?」
理由はいろいろあるが、一番はやはりそのノルアイネ嬢にあった。
彼女は俺の婚約者なのだ。
我がグライアン国には三家の公爵家があり、彼女はその中のひとつ、ラーグラス公爵家のご令嬢である。身分は高い…王太子の婚約者に選ばれるのだから当然だろう。だが、彼女にはそれ以外に問題がありすぎるのだ。
「隣室」
ジェノスの答えを聞いて隣室への扉をノックする。
いつも通り中からの返事はない。それを了承とみなして扉を開いた。
「お久しぶりですね。ノルアイネ嬢…」
問題一つ目、顔がわからない。何故か彼女は幼い頃から仮面をつけている。とるように促しても絶対にとらない。とったことがない。なので俺は彼女の顔を見たことがなかった。社交界では顔が目も当てられないほどに醜いからや、大きな傷跡があるなどと噂されている。
問題二つ目、声が驚くほどに小さい。注意して耳をすましていても聞き取れないほどに。最初は無視されていると思って一々怒ってたなぁ…。
「……はい…」
問題三つ目、ファッションセンスが破壊的である。
今日のドレスはネズミ色で…腕は…首は何処だ?と思うほどにゴワゴワしている…まるで本当にネズミのようだ。
まぁ、今日はましだなと思う俺はもうヤバイのだろうか?
「今日も美しいドレスですね…よくお似合いだ」
「…ありがとう…ございます」
恥じらってるのかなんなのか、ゴワゴワとドレスを揺らすネズミ…ノルアイネ嬢…。
褒めた訳じゃねーよ。なんて俺に言えるはずもないが…イライラする。
本来なら、婚約者を屋敷まで迎えに行かなければならないのだが、あいにくと俺にそんなことをする気はないため彼女は自分で城へ来る。
…おわかりになっただろうか?俺は、このネズミ…婚約者が大嫌いなのである。…いや、むしろもう憎い!俺がこの婚約者のせいでこれまでどれほどの屈辱を味わってきたと思う!くそっ…思い出したらきりがない!
だからといって無下にすると彼女の父、ラーグラス公爵が黙っていない…。ラーグラス公爵は何故かこの娘を溺愛しているのだ。それに、我が父王もそうだ。
王太子の婚約者とはいずれ王妃となり、国母になる存在。こんな高貴かつ重要な位に彼女をあてがうとは…
何度婚約破棄をお願いしても「駄目だ」の一点張り…
何故だ?何故この俺がこんな奴と…!!
そんなこんなで、今まで必要最低限の関係を築いてきたのだが、それも虚しく今日すべてが終わる。
なんたって、今日の夜会で俺はこのノルアイネ嬢に求婚しなくてはならないのだ。
このネズミヤローに…き…求…婚…
「…死んだ…」
大広間の扉の前…考え事をしていてもちゃんとノルアイネ嬢をエスコート出来ていたようだ。記憶はないが。
流石だ!俺!!
ギギィーーと扉が開き始める。今の俺には地獄への入り口にしか見えない。
あぁ、さよなら。俺の輝かしき人生…。
稚拙すぎて(泣)
最後までお付き合いいただけたら光栄です。
お読みくださってありがとうございました。