第八章 アポロの計画
ユウキの姿は、消えた。跡形もなく。
それは、避けたのだろうか……否、アポロや、駆け付けたペローナさえも、脳内に響いた言葉それは。
ユウキは死んだ。
状況からして、誰もが納得する説明だ。
ペローナは、ただ呆然とその場で立ち尽くしていた。
共に過ごした時間は、とても短い。
昨日までは、ただの他人。
顔も、名前も知らない、どこかの誰かさん。なのに……
彼女の、薄い桃色の瞳には……涙が。ぽろぽろと、止まることなく出ていた。
昨日までは、他人でもこれからの、楽しい未来があったのではないか……。
そんな未来を、幻想を、想像していた。
もっと、速く来ていれば……助けられたかもしれない……。
ペローナは、自分を責めた。
そもそも、自分が、ユウキ1人で任せなければ……。
「ユウキ……ごめんね……」
「ペローナって案外泣き虫なんだな、まあ、そこが女の子らしくて可愛いんだけどな」
「え?」
「な!? ……ぐふぉぁっ!!」
そこには、居るはずがない男の姿が、否、いたのだ。
その男の名は、ユウキ・カミシロ。
ああ、生きててよかった。死ぬかと思ったよ。
俺は、かっこいいセリフにを台無しにして、背後からアポロの腹にナイフを入れた。
「なぜ、お前……生きている!? あれだけの攻撃、普通は即死だ」
「あいにく、俺は普通じゃない。こう言ったら分かるかな? 俺の魔法は、空間魔法だ」
「あ、あの魔法は、1回の発動で1部だ。できるはずが……」
「一瞬で、連続で発動させれば別だよ。俺とアマテラスだけの裏技だ」
空間魔法は、体の1部を移動させる能力。
だが、疲労を感じない俺は。
その能力の裏道……それは、連続で発動させる。
刹那とも言われる、その時間ないで俺は、ギリギリ成し遂げた。
それにしても……怖かったーー!! 死ぬかと思っちゃった!! 九死に一生だよ。
ていうか、ペローナ泣いてくれたの!? こんな俺に!? 嬉しいなぁ。
ま、それは置いといて。
俺は、硬直しているアポロの頭部に、鉛玉をぶち込んだ。
「クソ……後、もう少しだったのに……」
「何を企んでたか知らないけど、終わりだ」
アポロは、地面に落ちて逝った。
小さな体は、悲しみの雨に打たれ朽ちた。
「ユウキ!! 生きてたの……?」
ペローナは、泣きながらも少し、嬉しそうな表情で駆け寄った。
俺も、空中浮遊を解除して近づいた。
「ユウキ……良かった……生きてて、本当に」
「ああ、まーな。それより……やけに、積極的だな。下手すると理性ぶっ飛ぶぜ?」
ペローナは、俺を強く抱きしめていた。
甘い女の子の匂い……首筋に当たる吐息……細い最高なスタイルの感触。
俺が健全な男で良かったな。
状況を確認し始めるペローナ。自分がしている行動に気づいのか。
どんどん、顔を赤く染め、パニック状態に入っているようだ。
「あわわわわ、ご、ごめん。その……私……」
「らしくねーな、ペローナ」
「うっさいっ!!」
「そう、それだ」
俺は、ペローナをちゃかして、いつもの調子に戻した。
「待てよ……まだ、終わってない……」
「お、おい!? なんで、生きてんの!?」
「ご主人! こいつスキル使ってますにゃ!! その名は、自己蘇生ですにゃ」
おいおい、自分で復活できんのか、それこそチートだろ。
クソ! あいつ、小さい体してあんな、最強技持っているとは。
「僕は、絶対に……揃えるんだ……全て……あの秘宝を!!」
「秘宝!? それが、目的だったのか、秘宝って一体何だ?」
「特別に、僕の目的、存在意義を教えよう。僕は、昔スラムの貧しい所で育った」
「よく、メガネが買えたな」
「盗んだ。続ける、当然僕は、恋も知らないし、女の子とも関わらなかった。女の子を知りたいと、僕は魔法を学び、戦士になり冒険した」
「いきなり、話がおかしくなったな」
「ある日僕は、ある街を歩いていた。裕福な町でとても賑やかだった。ふと、視線を向けたところに秘宝があった。それは、物干し竿で吊り下げられていて、おまけに洗濯バサミにしっかりと固定されている」
物干し竿に、洗濯バサミ、女の子!?
「まさか!?」
「そう、僕は、女の子のパンツに一目惚れしたのさ、キュートな三角形、キュートな模様!! ああ、目が幸せだ、興奮する」
変態だ。パンツに一目惚れ!? お前パンツに性的好意を抱いたのか!?
キュートって、全国のパンツマニアさんでも、その例えはでねーぞ!!
「そして、僕は彼女を盗んだ」
「元カレから奪った言い方するな」
「それから、僕は!! 彼女の唇を、そっと、奪った」
パンツを彼女と呼ぶ時点で、どうかと思うが……唇を奪った……想像しただけで、オエゲロだな。
引くレベルで済まないな。あ、別に経験した訳ではない、本当に。
アポロは、夢(異常変態者の)を続けて語った。
「そして、僕は決めた! もっと、彼女を集めると!!」
「どうして、そうなった!? そして、浮気!?」
「だけど、後、1つ足りないんだ……黒色のドSを匂わせる彼女が!!」
「おまえ、そっちの趣味も有ったのか!?」
アポロは、コクリと頷いた。
人は、見た目で判断してはダメという。立派な見本だな。
そもそも、変態でもパンツは、クンカクンカとか、スーハースーハーする物では……全国の女性の皆さま、すみません!!
それに、パンツが目的なら、暴れなくても……。
「おい、パンツが目的なら、なぜ、わざわざ暴れる?」
「嫁のパンツを守ろうとする、夫がウザいから」
「おまえ、ほんと、最低だな!!」
「だが、僕の夢はもうじき叶うようだ」
パンツが見つかったのであろうか……。
いずれにしても、止めないと全国の女性とその夫が危ない!!
変態には、裁きを与えるのが紳士の務めだ!
「情報では、ルーンとかいう俺の部下から逃走中の小娘が、黒のパンツを履いてるらしい、俺は必ず手に入れる!! 邪魔をするな!」
おいおい! ルーンッッッ!!!
おまえ、全身白でどこかの、宗教団体の人みたいな奇麗な服装の裏には、そんなあくどい物が!?
ルーン、逃げ切ってくれ!!
俺は、撃銃を構えた。
ここで、あいつを止めないと、男の名に屈辱だ。
「やる気かい? 興奮している僕は、誰にも止められないよ?」
「童貞臭が漂うセリフをどうもありがとう!! 言っておくが、ベットの上の俺は最強だぜ?」
童貞だけど………………。