第七章 天災の真の力
「ぐはぁっ……っ!」
くそ、油断しすぎた。
俺は、防御力のステータスがゴミなため、どんどんHPがなくなっていく。
腹には、激しい痛みと、針の氷の様な、冷たさを感じた。
止まらない血……。
視界に、妙な光が入ってきた……天国への階段か? 否、違う。
光は、俺の周りで、まるで俺を守るように、俺を覆った。
「な、何だ!? この光……お前何をした!?」
「あ、そうか……魔法スキル、解き放て我が闇の力!!
その瞬間、闇の様に、漆黒に染まった光が俺を包んだ。
なるほど、体がずいぶん軽くなった。
HPが10パーセント以下になったので、スキル、解き放て我が闇の力 が発動したんだな。
あんな、厨二技がこんなところで、役に立つとは、あなどれない、厨二。
「こっからが、本番だ。さあ、殺ろうぜ!」
「望むところだ」
「うおおおぉぉぉぉ!!!」
俺は、5本のナイフを力の限り、投げつけた。が。
それを、軽がるらしく避けた。
「なんだそれ……つまんない、期待して損し……ぐほぉぁっ!!」
「その、期待。裏切ってないぜ」
俺は、ナイフを投げて、アポロに避けられた後、密かに右手で操り、後ろから刺した。
まあ、こんな単純な事に引っ掛かるとは、正直、驚いたよ。
俺は、少し、笑みを浮かべていた。
俺のステータスは、全て1000、そして、超回復が発動して、HPが70パーセント以上になっている。
ブラフはそろった。俺の勝ちだ。
それに、天災には弱点がある事に気がついた。
天災は、四季と天気を操作する魔法。
その、性能はまた、別格で、次元の違いを魅せつける。
異常なほど、強い魔法だ、だが。
その強さとは、裏腹には、かなりの精神的な疲労が激しい。
天災は、あたりの空を一面にまったく、違う現象を起こすため、魔法の規模がとてつもなく、大きい。
そう、集中力を広範囲で維持して、継続させる必要がある。
そんなこと、当然すぐに、疲労がでるはずだ。
また、疲労が続く中、限界を超えようと魔法を連続で、使った場合。
数秒、体が麻痺状態になるという、ハンデを抱える事になる。
麻痺ほど、嫌な状態異常はないだろう。
―勝利は見えている、アマテラスが居るので、俺の魔法には問題はない。
だが、何なのだろう、この違和感。
あいつには、まだ策が? 否、そんなことはない。
俺が、アポロに視線を移した。
すると、アポロは、俺の視線に気づいたのか、ナイフが刺さっても尚。
口角を右上にあげ。
不敵に笑った。
アポロは、口を開き。
「確かに、君は強いよ! 僕の想像以上だ。だけど、僕の前では、無力だよ」
「へへっ。子供が先輩に、なんつー、言葉使いだよ、日本語勉強し直せ」
「ユウキイイイィィィィィィ!! ダメエエエェェェ!!! そいつを怒らせちゃ」
ペローナが叫びながら、走ってきた。
体が、ぼろぼろで、あちこちに傷が……敵襲に遭ったのか!?
他の2人は!?
アポロは、状況を全て理解した様子で笑っていた。
「ハハハハハッ!! 残念、もう遅い。見せてあげよう、僕の真の力を!!!」
その瞬間、頭上に浮いた積乱雲から、雷が落ちてきた。
しかし、それは、俺に向けたものではなく、アポロ自身に向けたものであった。
その雷は、まっすぐ、アポロに直撃した。
その衝撃で爆発が起き、俺は不覚にも、目を閉じた。
目を開けてみた、何が起こったのか、それを知るべく俺は辺りを見回した。
すると、目の前にいたのは……
「ア……ポロ?」
アポロだ、アポロなのだが、明らかにさきほどとは、様子が違う。
アポロの周りには、黄色の光が生じている。
まるで、雷で出来た鎧……。
バチバチと、音を奏で、凄まじいエネルギー、否、この世界では魔力と言った方がいいのだろうか……そんなものが、感じ取れる。
「まだまだ、終わらないよ」
そう言うと、アポロは、両手を斜め下に広げ、手のひらを上へ向けた。
風が吹いた……別に普通のことだが、嫌な風だった。
その風は、次第に強くなって、暴風へと、変わった。
その暴風は、アポロの両手に行き、さらに姿を変えて、竜巻になった。
「おいおい、これって……風神と雷神の力じゃ……」
「正解! 天災の力は、あんなものではない。本当の、真の姿は、この姿だ。風を操る風神、雷を操る雷神。この2つの力を1つにしたんだ」
「そんなことが……っっ!」
「さあ、ショウタイムだ!」
アポロが開戦を告げると、両手で操っている竜巻を一斉に投げてきた。
竜巻は、弧を描いて、左右から襲ってきた。
「させるかっ!!」
俺は、予備にあった2本のナイフをアポロに飛ばした、一度は避けられたが、物体移動を使い、挟み撃ちにした。はずだが、ナイフは、黄色の光で遮られ、落ちていった。
「甘いね、シロップより甘いね!! 落ちろ! 神の咆哮!!」
アポロが叫ぶと空から、さきほどとは、比べ物にならない雷撃が襲った。
それは、まさしく、神の怒りによる、神の裁き。
こんな、魔力。時間をかけないと、放出できないはず……まさか!?
「さっきから、溜めていたのか!?」
「BINGO!! だーいせーいかーい!! ついでに言うと、ナイフを受けたのもコイツを溜めるための、時間稼ぎだ」
「はは、そりゃ、チートだ」
左右からの激しい竜巻と、頭上からの巨大の雷撃が、ユウキと、アマテラスを消滅させた。