第二章 元ヒキコモリは案外最強のようです
雪奈……。何で、ここに……。
「雪奈! お前、何でここに!? まさか、転生したのか!?」
俺は、一番考えたくない事を、口にした。しかし、彼女は雪奈と、瓜二つ。
「雪奈? 転生? 何を言っている、私は、ルーナ・ヴァル・ミネルヴァ だ! 王国に仕えし、女戦士だ、貴様は何者だ!?」
まさに、戦士の様な、正義感あふれる、覇気だ。
「俺は、ユウキ! カミシロ・ユウキだ。道に迷ってんだ、この隣にいる獣族は、アマテラスだ、決して怪しい者じゃない」
俺は、内心ビビりながらも、頑張った、男らしく頑張った。
「道に迷っている? まあ、いいだろう。案内してやる、と言いたいところだが……」
言いたいところ? 言えば良いじゃん、何で?
森の奥から、ガサガサと音がし、叫び声などが聞こえてくる。
「いたぞぉぉ!!」
え、何? この人追われているの!? 何か変な男共が、こっち来てんだけどっ!!
これ、俺、巻き込まれるパターンじゃね? そうだよね? きっとそうだ。
「クソッ! もう来たか、ユウキ、ここは危険だ! とりあえず、私と来い!!」
やっぱり……。
「ご、ご主人! とりあえず、ルーナさんについていきましょうにゃ!」
「お、おう。そうだな!」
俺は、ひとまず、ルーナに着いていくことにした。
俺達は、森の中にある、古びた木造の建物に身を潜めた。
血が着いている壁や、床。入り組んでいる、室内。まるで、俺達にここで戦えと言っているように思える。
「あ、あいつら、何なんだ!? 何者だ!?」
俺は、息を切らしながら問いかけた。
「あいつらは、盗賊だ、森に迷う、戦士などを襲い、金、装備品を奪っていく輩だ、ちょうど、奴ら、抹殺の任務を受けているのだが、数が多くて、逆に追われる身となってしまった」
「なるほど、それで、あいつら何で、こんな必要以上に追ってくるんだ? 無理して追う理由があるのか?」
ルーナは、「まだ、わからないのか!?」という、感じのため息吐き、答えた。
「フン、どうせ、私の体目当てだろう! 気持ち悪い、あんな外道共死んでしまえ! ま、私のこの、美貌とスタイルでは、無理もないが」
こいつ、何言ってんの? ちと、自分に自信ありすぎだろ。
まあ、確かに、胸もそれなりにあると思うが……。はぁ、こいつ雪奈と、瓜二つのくせに、性格は正反対だ、何か、話しづらい。
「あ、そうだ、ユウキ、お前武器はあるのか!?」
え、武器? 戦闘になるの? まあ、好都合だ、魔法も試したいし……。
「えっと、銃とか、全く持ってません」
「は!? なぜだ!? 戦士の子は全員、生まれたときから、銃を持っているはずだ!」
「え!? なにそれ、戦士の赤ちゃん、生まれる前から戦う気満々なの!? 怖すぎだろ!!」
俺が、そう言うと、ルーナは疑問を感じている様な、表情だった。
誤解を生むと面倒だから、これまでの事情を全て話した。
「そうだったのか、どうりで……なら、この世界の事を教えておこう。まず、この世界では、右上にある、HPがなくなると死ぬ、HPは皆同じ数値だ、それから、魔法だがMPはない。魔法続けて使っていくと、集中力と、精神的体力に疲れが生じる、本人の精神力しだいだ。理解したか?」
「おう、んじゃ、二手に分かれよう、一緒に居ちゃまずい」
「なぜだ? 一緒の方が、フォローも出来るだろう」
ルーナは不思議そうに言った、そして、俺はかなり、カッコつけて。
「フォローされる程、俺はぬるくないし、あまり、助け合いの連続だと命を落とすぞ?」
ルーナは、驚いた表情を見せた。
「アッハッハ! なるほどな、ユウキ、貴様中々面白いな。いいだろう、二手に分かれよう、そのかわり……」
「ん?」
「死ぬなよ?」
「らしくないなー。お前もな!」
俺達は、二手に分かれ、敵を迎え撃つ事にした。
「なあ、アマテラス」
「ん? 何ですかにゃ?」
「空間魔法って、どうやって使うんだ?」
神に聞くのを、忘れていた、強い魔法と言えど使えなければ意味ない。
「えーっと、空間魔法は、自分の体の一部を、空間をつかさどり、別の所へ転送させる能力ですにゃ。後、空間を捻じ曲げ、向かってくる全ての物を、消したり、跳ねかえしたりできますにゃ」
俺は、ニヤニヤが止まらなかった、この、魔法戦略次第で強すぎる……。
廊下の向こう側から、ギシギシと足音がした、敵だ。
「アマテラス、戦闘だ、隠れていろ」
アマテラスに戦闘は危険だと思い、そう、指示したが。
「ご主人、私を肩の上に乗せて下さいにゃ」
「え、でも、無理だろ」
「変化!!」
アマテラスは、そう叫ぶと子猫の姿になった。
「これなら、大丈夫ですにゃ! ちなみに、私が肩に乗っていると、魔法を使っても一切、疲労はないですにゃ」
「流石、アマテラス!! 頼りになるぜ!!」
「て、照れますにゃ」
アマテラスが、顔を赤く染めながら言うと、敵の足音が速くなって、こちらに近づいてきた。
「若造が! さっさと、あの女を渡せ!! 渡しても、2人とも殺すけど!! ぎゃははははは!!」
「できると、いいな」
「あ?」
男は、急に倒れだした。分かっているのは、銃声と、男の後頭部にある、弾丸が貫通した、後のみ。
この、状況を理解しているのは、男を撃ったであろう、ユウキだけだ。
「ご、ご主人! い、い、今何を!?」
アマテラスは、目の前の光景に目を疑った。
「簡単のことだ、空間魔法を発動させ、手首をあいつの後ろに移動させて、ハンドガンの引き金を引いた。まあ、ヘッドショットは、個人の技術だ」
「で、でも! 空間魔法は、視界内だけの範囲ですにゃ、死角になっている敵の後ろは、無理のはずですにゃ!!」
「あ、やっぱり、この魔法の範囲、視界内だけか、それなら、問題ない。予測して、脳に焼きつけただけだから」
まあ、実際。見えないものを予測するのは、すげー集中力いるけど。
「す、すごすぎるにゃ……」
「敵は、1人じゃねーよ!!」
後ろから、男の声と、共に銃声と、マズルフラッシュは炸裂した。無数の銃弾が、ユウキの背後を襲う。
「弾のばらつき、多いなLMGか?」
「ご主人! 避けて!!」
「了解!」
声と同時に、ユウキの周りの空間がゆがみ、ユウキの姿が消えた。否、敵の後ろに移動していた!
「背後に注意だよ、おっさん」
「な……っっ!!」
ユウキのハンドガンは、男の頭の側等部に、ピッタリと、くっつき。
「おやすみ、相手を間違えたね」
俺は、再びセーフティーレバーを解除し、引き金を引いた。
敵のHPはなくなり、消滅した。