第十八章 ユウキの償い
職員が駆け付けた。辺りは騒然とし、嫌な空気が漂っていた。
急に後ろから、髪を掴まれた。
脳筋かっ!? いや、違う。
うちのクラスの担任だ……。
担任は、俺を引っ張ると、叫んだ。
「おい、これはおまえがやったのか!? どうなんだ!!」
「いえ、むこうから……」
「おまえがやったのかと聞いている!!」
あ、ダメだこいつ。
人の話全然聞かない奴だ。
「とりあえず、職員室に来い!! おい、鈴木! 郷田を運んでやれ!!」
「は、はいっ」
鈴木と言う奴が、さっきの脳筋野郎に肩を貸している。
なるほど、脳筋は郷田と言うのか……覚えたくないな……。
俺はそのまま、職員室に連れてかれ、担任のお説教タイムが始まった。
「おい、神代。正直に答えろ。おまえが郷田をやったのか……?」
「はい、ですが……」
「やはり、おまえか!!! いい訳無用だ!! 貴様、何をしたのか分かってるのか!!」
「確かに僕がやりました。ですが……」
「そういう問題じゃないっっ!!」
いやいや、そういう問題だろう。
何を考えてんだこいつ。
「人の話ぐらい聞いて下さいよ……あなた先生でしょ?」
「おまえ、誰に向かって言ってるのか分かってんだろうな!!」
「ですから、僕の話しを……」
「おまえ、どうしてくれるんだ!!! 郷田、めちゃくちゃ血出てたぞ!!」
話を聞かない、クソ担任のクソみたいな話を聞いてると。
鼻の下に髭が生えた、少しポッチャリ体系の男が割り込んで来た。
「まあまあ、落ち着いて下さい、先生」
「こ、校長!!」
「彼の話しも聞かないと……」
「し、しかし!! こいつは、一か月引きこもっていて、そんな奴の話しなんか、信用できません」
引きこもっていたのと、信用が何の関係があるんだよ……。
先生も脳筋なのか……。
「それにこいつ、ゲームばっかりして、成績も伸びないし、ただのクズですよ、人生無駄にしてますよ!」
「坂本君!!!」
「は、はい!!」
校長が怒鳴った。職員室内の全員の視線が校長に集まった。
校長が怒るのは珍しいらしいな。
そして、担任の名前は坂本。
校長は一息吐いて、話を始めた。
「怒鳴ってすまなかった。だけどね坂本君。彼には彼の人生がある。これは、誰も邪魔してはならんのです。それは、彼だけの人生だから」
「で、ですが……遊んでばかりでは……」
「うむ、確かにそうかも知れん。ところで、坂本君はこの仕事をどう思っている?」
校長が場に合わないような発言をした。
坂本は少し戸惑ったが、答えた。
「そ、それはもちろん、生徒の学力向上に精を尽くしています。こいつのように遊んではいません」
「なるほど、私は遊んでいるがね」
「「え!?」」
思わず俺も声を出してしまった。
この校長はバカなのか、おもしろい事を言う。
「正確に言うと、私はこの仕事を楽しんでいる。子供達とふれあう楽しさ、成長する喜び。私はこの仕事を通して、子供達と遊んでいるよ。これもダメなのか?」
「そ、それは……」
「だからね、彼にそのことをとやかく言う権利はない。もちろん私にも。それに、彼の話しをまったく聞かないのに私は納得がいかないね」
「ぐっ…………」
「どうやら彼は、クラスで軽蔑されていると耳にしたよ、まさか、教師の君もそんなことを……?」
「い、いえ、そんなつもりは……」
校長の目が変わった。穏やかな眼が一瞬にして、鋭い眼つきになった。
この校長、バカじゃない……いや、当たり前か……。
でも、なんだか他の奴らとは違う匂いがする。
「坂本君、とりあえず彼の話しも聞きなさい、それから話しをつけたまえ」
「はい…………」
どうして? さっきの威勢はどうした?
ふん、図星を突かれ何も言えないのか……笑えるよまったく。
それから、俺は事情を細かく伝え、なるべく自分は悪くないように伝えた。
――が、やはり、俺も悪いことになり。
慰謝料免除の代わりに、停学一週間と言われた。
もう、めんどくさいのでこれを機に、再び引きこもった。
そして、月日が経ち、俺は死んだ…………。
それでも、こんなクソ人生でも!!!
「雪奈はただ一人、俺を思ってくれた!!」
「な、何よ!! この魔力!!!」
「ルーナは、雪奈とは別人かも知れねぇ! だけど、これが……雪奈が俺のために受けてきた傷を癒すやめの、償いだ!!!!」
なあ、雪奈……元気にしてるか……? 俺が死んでも、おまえは絶対生きろよ……。
俺はこっちで、生きるから!!
「霊槍……ダーク・フォスティル解除……」
「ご、ご主人!? あきらめ……」
「ねーよっっ!!」
諦めるわけないだろう……。
「そいや、亜人間から盗んだ物貰うついでに、撃銃も返してもらったよな……アマテラス、肩に乗れ!」
「は、はいにゃ! 変化!!」
「ね、猫になった!!」
エミルがはしゃいでいる。
よくも、まあ、そんな余裕があるな……。
幸せな奴だ……。
落ち着け……俺。
ゲームをしている時の俺を思い出せ。
あの時の俺は、冷静だった……妙に。
「すぅーーーーはぁーーーーーっっ……よし、行くぞ! アマテラス!!」
「は、はいにゃ!!」
魔力をさらに高めろ……そして、もう一度、ダーク・フォスティルを発動させろ!!
さっきと同じ威力では、ダメだ!!
「黒炎の霊槍。ダーク・フォスティル!!!」
右手には、ダーク・フォスティル。左手には、ルーナが買ってくれた、撃銃。
頼む……力を貸してくれ……。
「うおおおおおっっっ!!!」
俺は、最速のスピードでクレープの前に突っ込んだ。
そして、クレープの射程範囲に差し掛かる寸前で。
「き、消えた!? ど、どこなの!!」
「おしい、移動したんだ」
そう。俺はチート魔法。空間魔法でクレープの後ろに移動したんだ。
俺は、ダーク・フォスティルを上から下へ振り下ろし、クレープの背中を裂いた。
「ぎゃあああああ!!! よ、よくもやりやがったな!!」
「なら、本気だせよ。こんなもんじゃないだろう?」
「望み通り、ぶっ殺してやるわよ!!」
いや、それは望んでないわ。
クレープは、鎖付きの剣を両手に揃えた。
二本も有ったのか……これは厄介。
あいつは、ムチのように使いこなすからな……。
クレープは剣を操り、予測不能な軌道で俺を襲った。
俺は、予測するのは諦め、空間魔法で避けながら、撃銃とDMGで撃ちまくった。
両者、避けては、攻撃。避けたは、攻撃の繰り返しになった。
気を抜いたら一瞬で死ぬ……。
「す、すごい……ユウキ。あんな人間離れしてる、動き……さすが私の彼氏……」
「確かに……あんな動き、出来ないよね……って彼氏だったの!?」
「に、なるんだよ……多分」
「あんた、さすがね! この魔力、スピード!! 人間の枠を超えてるわ」
「ふん、おまえもだろ? つか、何でおまえ空飛んでんだ?」
「それは、こっちのセリフよ。私は特殊魔力。空中散歩で浮いてるけど……」
そう、俺達の戦いは、地上戦から空中戦へと変わっていた。
そして、今喋っているが、手は止まっていない。
両者。殺し合っている。
「いやぁ、飛びたいと思ったら飛べちゃった、みたいな?」
「あんたこそ、人間じゃないわ……」
「まーーなっっ!!」
「ふん、まぁいいわ。どちらにしろ……ミンチにしてや……え、ちょ、何これ!? 動けない」
俺は、種明かしのために自分の右肩に、指を指した。
アマテラスが、さっきまでいた場所……。
んじゃ、今は?
「まさかっっ!?」
「ここですにゃ!!」
「ナイースッッ!! アマテラス」
そう、アマテラスをとっくに、肩から離していて、俺に夢中の隙に麻銃で麻痺させてもらった。
まぁ、アマテラスがいないと、精神的疲労がキツすぎるけどな……。
じゃあ、今までどうやって耐えたかって? ……愛の力さ。
「さて、そろそろ教えてもらおうか……魔王の居場所を!!!」




