第十七章 雪奈と神代雄鬼
今回は、雪奈と雄鬼の過去を書きました。
悲惨な二人の過去……雄鬼の思いは……。
俺、神代雄鬼は、それはそれは、クソな学生時代を送ったよ。
今も学生だけど……。
とにかく、本当にクソだった……。
好きな事や趣味を話すと、軽蔑するような眼でこちらをみてくる。
アニメやゲームの話しをするだけで、何かしら差別が生じる。
何故だ? 幼稚園や小学生の時は、みんな仮面ラ〇ダーではしゃいでいたのに。
嫌気が刺した俺は、中学二年で一カ月ほど引きこもった。
毎日、ゲームしてテレビ見て、寝ての繰り返し。
誰にも邪魔されず、心地よい快楽だった。
が、さすがに将来の事も心配になるので、学校に行った。
だけど、そこで待っていたのは、クラスメイトの挨拶ではなく。
またもや、軽蔑だった。
ゲームして何が悪い。アニメを見て何が悪い。悪いのは社会だと自分に言い聞かせ。
そうして、学校で過ごしてた。
だけど、雪奈だけは、唯一、俺に手を差し伸べてくれたのだ。
幼馴染とは言え、関係を断ち切られるだろうと思った。
だが、一人、孤独な俺に優しく接してくれた。
だけど、俺は知っていた。
俺に関わることで、雪奈の評判も下がる事を……。
たまたま耳に、「雪奈、神代の奴と絡んでるのありえなくなーい、キモーイ」と入ってしまった。
それは、俺が一番恐れていた言葉だった。
雪奈に迷惑かけてばっかの自分に腹が立ち、俺は雪奈に言ってしまった。
「おまえ、キモいんだよ!! 俺に関わるなよ! ウザいんだよっ!」
「ゆ、雄鬼?」
「……………………」
最悪だ……。唯一の友達を自らの手で、潰してしまった。
あんなことを言ったんだ、きっともう近付かなくなるだろう。
そう思っていた。だが。
教室の端っこの席で、一人寂しく昼休みを過ごしていた。
俺はいつも昼飯を食べずに、隠し持ってきたゲームで遊んでいた。
しかし、そんな俺の貴重なゲームタイムを邪魔する者がいた。
雪奈だ。
「何だ? 俺に文句でも良いに来たのか? それとも謝ればいいのか?」
「ち、違うよ! 雄鬼、いつもご飯食べてないから、お昼ご飯作ってきたの」
「は!? 何でそんな事!!」
「だって、雄鬼、いつも一人ぼっちでご飯も食べなくて、心配だもん! 皆からは軽蔑されてるし……こんなの、酷いよ……」
俺は、今気付いた。こいつは生半可な気持ちで俺に接してきたのではなく。
まじめに、本気で俺に馴染もうとしてくれていた。
俺の事をこんなに心配する子は、世界中探しても雪奈だけだろう。
本当、バカすぎるよ……俺は……。
「べん…………くれ……」
「え?」
「弁当くれって言ったんだよ!」
「え、あ、はい!」
俺は雪奈から弁当を受け取った。花柄の可愛い包みにつつまれていた。
俺が持ってたら、可笑しいな。
蓋を開け。箸で卵焼きを摘まんだ。
黄色だ……当たり前か……。
卵焼きを口に放った。柔らかく、とても甘かった。
「うまい……」
「え? 何て言った? もう一回!」
「うまい、美味しいよ」
「え? よく聞こえないよ~? もう……」
雪奈の頬を軽く摘まんだ。
「おまえ、わざとだろ?」
「ううう、ごめんなさいー」
「はは……ふっふふ……」
思わず雪奈のリアクションの可愛さに笑ってしまった。
だって、可愛いもん……。
「あー! 雄鬼やっと笑ったー!!」
「……は?」
「だって、雄鬼、学校で絶対笑わないもん~。笑ってる雄鬼の方が好きだもん」
「それもこれも、雪奈のおかげだ、ありがとな!」
「い、いやぁ。それほでも……」
素直に喜べよ……。まあいっか。
俺は、弁当をもっと食べようと、箸を立てて米を取ろうとした。
が、米は俺の箸から逃げ、机から離れた。
いや、弁当箱自体が机から落ちたのだ。
雪奈は時間が止まったように動かず、落ちた弁当箱を見ていた。
突然のことに状況処理に戸惑っているのだろう。
しかし、俺は机を揺らしてない。だが、何者かが揺らしたか弁当箱を直接落としたに違いない。
俺は、ふと視線を横に向けた。
クラスの男子が立っていた。
そいつの名前は知らない。覚える価値もないからな。
そしてこいつは、クラスでも高い権力を持ち、ガキ大将のような奴だった。
おそらく、こいつがやったのだろう。顔のニヤつきで分かる。
「おい、おまえがやったんだろ? 俺と雪奈に謝れよ」
「あ……確かに俺は、机にぶつかったけど、弁当を落としたのはおまえの責任だろ」
「おまえ、何言ってんの? バカなの?」
「それに、何でおまえらみたいなのに、謝んなきゃいけねんだ? 気持ちわりぃ」
「ら? 何で雪奈も入ってんだよ!?」
「おまえと関わってる時点でキモオタ同然なんだよ!! クソ女!!」
「おい、てめぇ! 関わってるだけでキモオタって、おまえとうとう、脳みそまで筋肉で出来たのか? クソ脳筋野郎」
「あ、誰に口聞いてんだよ!! おい、クソ女! 黙ってねぇでおまえも何とか言え!!」
男は雪奈に、先ほど落ちた弁当の残骸の赤く潰れたトマトを投げつけた。
「きゃあっっ!!」
雪奈の制服のは、べっとりと赤い、液が染みつき汚れた。
男はそれを見て、豪快に口を開き大笑いした。
「ははははははははは!!! き、きったねええ!! ぎゃはははは!!」
「きたねぇのは、おまえのその汚れた顔がろーーっっがああ!!」
俺は、頂点に達した怒りをぶつけた。
男の腹を蹴り、男は不意に後ろにこけた。
俺は止まらず、男の腹にまたがり、何度も、何度も、何度も、男の顔を殴った。
しかし、男もガキ大将。力は強く、ヒキコモリの俺にはきつかった。
俺は、すぐに押し倒され、髪の毛を掴まれた。
「てめえ。よくもやりやがったな!!」
「うるせえ、脳筋、おまえが弱いからだ……」
「んにゃろおぉぉ!!」
俺は、髪の毛を掴まれた手に引っ張られ、そのまま教室のコンクリートの壁に打ち付けられた。
「ぐふぉぁ……」
壁に血が付いている……俺の血か……。
鼻血や口から出ているのか……。クソ、めちゃくちゃいてぇ。
「もうやめてよ!! 血がたくさん出てるよ! 死んじゃうよ!!」
「うるせぇ!! もう手遅れだよ!!」
「お、お願い……やめて……」
ありがとな、雪奈。
本当におまえは、優しいな。
「おい、脳筋野郎……てめぇ、このままでいいのか?」
「ああ!? 何がだ!?」
「先生見てんぞ?」
「フン! そんなの信じられるか!!」
「いいのか? 俺は生まれてから今まで、嘘吐いたとねぇぞ?」
「な!? まさか、本当に!?」
脳筋野郎が俺から視線を外した瞬間。
ほんの数秒だけ、脳筋の力が抜けた。今だ!
脳筋の股間に直線を描いて、俺の蹴りは炸裂した。
「うぎゃあああああああ!?」
「嘘も見抜けないなんて、やっぱ脳筋だな!」
「て……てめぇ……」
あーあ、バカらしい。弁当の片づけしよ。
「ごめんな、雪奈。弁当、俺が片付けるよ……」
「え!? そんな、私も手伝うよ!」
俺と雪奈は弁当の残骸を掃除していった。
美味しそうだったご飯も、脳筋のせいでぐちゃぐちゃ……。
酷い話だ。
「うおおりゃあああああ!!!」
「な!?」
脳筋はしぶとかった。
椅子を持ちあげ、こちらに近づいてきた。
ヤバいヤバい。さすがにあれは……。
「うおおおお!!!」
「クソっっ!!」
俺も自分の席の椅子を持ちあげ、脳筋に突進していった。
だが、パワーでは負ける……ええい、やけくそだああ!!
俺は、正気を失い突っ込んだ。
椅子と椅子がぶつかった音がした。痛みは……来なかった。
そして、脳筋からの力が一切感じられなかった。
まさかと、思い。椅子から顔を反らして見てみると。
俺の椅子の足が、見事に脳筋の鼻を潰し。
脳筋の鼻は、酷いことに曲がっている。
そして、騒ぎを聞きつけた、職員がやって来た。




