表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
路地裏バー  作者: いろは茶
3/8

路地裏バー3

「あのユズキって子、あやしいな」


「そうか?」


「だって変だろ。今どき子供が家出って」


「あいつは自分磨きの修業だと言っていた。――子供のくせに根性あっていいじゃないか。俺は気に入ったぞ」


「まあ、悪い子には見えなかったが……」


一階バーのカウンターで、バーテンダーの男――ヒロシゲは常連の中年男とあの子供について話をしていた。


さきほどヒロシゲがあんなことを言ったせいか、今は向こうのテーブルにいるお客達も、ユズキの話題で盛り上がっている。――どうでもいいが、話題が盛り上がってどんどん酒を追加してくれると、こちらとしては儲かるのでうれしい。


「一体、なにを隠しているんだろう」


中年男はグラスを意味もなく回し続ける。


「さあ」


ヒロシゲは頭を振る。


――このバーで子供が働くと噂になれば、興味本位でここにやってくる人が増えるかもしれない。もしそうなればこのバーはさらに活気づき、最終的にこの店の利益につながる。


確かにあの子供のことは気になる。しかし、夢が膨らむのも事実だ。


「いつものカクテルちょうだい」


「はいはい」


                  ・


「こんな超展開もあるんだね」


少女が言った。


「はい、ここが今日からユズキくんの部屋」


ユズキが少女に案内された場所は、二階の、廊下を少し行って横にある少し小さめの物置部屋だった。ドアを開け、中の様子を窺うと、ユズキは思わず顔をしかめる。


「これは……」


「あちゃ、こりゃひどいね」


四畳半の物置部屋は、とうの昔にいらなくなった不要物が、まるでガラクタか何かのようにそこら中に散乱している、それはもうひどい有り様だった。おまけに、かなり埃臭い。


「ごめん、ずっとほったらかしにしてて……」


「良いですよ。掃除すれば問題ありません」


「ここを掃除って……はあ、ユズキくんは前向きなんだね」


「そんなことないですよ」


ユズキとしては、こんな展開にはなってしまったものの、部屋を借りられるだけでも本当にありがたい。なので、贅沢はいはない。


――だけど、今日寝る場所はどうしようか。


「あ、そうだ」


少女が、急に思いついたように声を上げた。


「この部屋使えないし、今日は私の部屋で寝ちゃいなよ」


「え、良いんですか?」


「ノープロブレム」


「なぜカタコト?」


「なんとなく」少女は続ける。「マイネームイズユカリ。ナイスミーチュー」


「はあ、ユカリさん、ですか」


「反応薄いね、ユズキくんは」


「じゃあ、ナイスミーチュートゥー?」


「なぜ疑問形?」


「なんとなく」


ユカリはくすりと笑った。


「私たち、なんだか良いコンビなれそう」


――そうかな。変わった人だ。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ