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①Leveler  作者: 日暮之道吟醸
第一章 新しい生活
8/21

一日の終わりに

お待たせしました。

今回も短いですがゆっくりとどうぞ~ヾ(*´∀`*)ノ

 サルタスは自室の椅子に深く腰掛け天井を仰ぎ見た。


 まだまだ、調べなければならないことが多い。けれど、一先ず問題は解決したと安堵の溜息を吐く。たった五日。されどサルタスには一月よりも長く感じられた。


 一時はこの国はもう駄目だとも思ったが……。


 神へ感謝を祈りながらも辰巳の顔を思い出して苦笑する。

 本当に天の御使いなのではないかとも考えたが、あの少女は実に人間らしかった。と、会議中に怒鳴り込んできた辰巳を思い出し、声を出して笑った。


 結果として彼女がこの国に留まってくれたのだ。何故あの時〝嘘〟を吐いたのかはこの際目を瞑ろう。サルタスは納得したように頷いた。


「それにしてもタツミ殿が倭のものであったとはな」


 あの場では失念していたが、あれほどの純粋な黒い髪と瞳……倭の王族である可能性が強い。サルタスは今後問題が起こらなければいいがと心配した。しかしその反面、閉鎖的なあの国の知識や昔見た不可思議な術に魅了されてもいた。


 もしあの国と問題が起こったら、と心配は尽きない。けれど、何より彼女自身がそんな問題を軽々と飛び越えていきそうで、そう思うとサルタスは心配するだけ馬鹿らしくなってしまった。


 薄暗い部屋の中、唯一の光源であるランプがサルタスの執務机を照らす。机の上は大量の羊皮紙で埋め付けされていた。

 一息ついて、サルタスは先ほどまで見ていた書類をもう一度見直す。


 さて、どうしたものか。


 彼女が職務に就くのはもう少し期間を置いたほうがいいだろう。生活の基盤を整える時間は合ったほうがいい。一ヶ月ほど時間を空ければ、双方とも都合がいいのではないか。そう思案しながら、書類に必要な事柄を付け足していく。一通りペンを走らせると、書類を纏め、筒状に丸めると蜜蝋で封をした。


 コンコン。


 サルタスが再び椅子に背を預けると、それを見計らったかのように、控えめなノック音が鳴った。


「誰だ」


 威厳のある、しかし、どこか疲れたサルタスの声が部屋に響く。


「アーシャです。お父様」


 ドアの向こうから鈴の音のような声が返ってくる。その声にサルタスは顔を綻ばせた。


「入りなさい」


 サルタスの言葉を待って、静かに扉が開く。現れたのは小柄な少女。身長だけを見れば辰巳と同じくらいに見える。父親譲りの綺麗なブロンドの髪を腰の辺りで揺らしながら、ファルタナス王国第二王女、アーシャ・エスティアード・ファルタナスは父に愛らしい笑みを向けた。


「こんな夜更けにどうした、アーシャよ」


 アーシャに向き直ると、サルタスは優しい声音で尋ねる。


「お父様のお部屋に、まだ明かりが灯っていたから……」


 アーシャの声は弱弱しく、最後は口だけが動く。


 光が漏れるほどこの部屋は明るくはない。最近は忙しく、まともの顔も見れなかった。だからこそ、こうしてわざわざ顔を見せに来たのだろう。そんなアーシャの気遣いがサルタスは堪らなく嬉しく、そして堪らなく可笑しかった。母親似の快活で可愛らしい容貌にも関わらず、その性格は真逆で実に大人しい。太陽のような笑顔を向けていた女性からこのような大人しい子が生まれるとは、思っていなかった。


 サルタスはアーシャの頭を撫でながら、今は亡き女性のことを思い出す。


「そうか、心配をかけたね」


 アーシャはふるふると首を横に振ってはにかんだ。

 今年からこの子も学院に通う。こんな大人しい子が寮生活の学院でやっていけるのかサルタスは不安でもあった。もう一つの不安はこの子の姉である第一王女……いや、今は考えるのをやめよう。アーシャの顔が一瞬だけ不安そうになったのを見てサルタスは懸念を頭から振り払った。


 脇にあったもう一つの椅子を引き寄せアーシャを座らせると、何か面白い話題はあっただろうかと、記憶を掘り起こす。


「アーシャ、お前も今年から学院に通うな」


 サルタスの言葉にアーシャは小さく「はい」と応える。

 娘の不安そうな顔を見て、サルタスはうむと頷く。


「今年はな、きっと面白いぞ」


 父の子供のような笑顔に驚き、アーシャは身を乗り出して次の言葉を待った。


「今年はな、英雄が学院に来る。しかも、あの災厄龍を倒したものだ。独特の雰囲気を持つ少女でな。きっとアーシャにいろいろなことを教えてくれるだろう」


 父の言葉にアーシャの顔は輝きだす。それは英雄が学院に来るからではなく、英雄を語る父の笑顔に惹かれてのこと。そして、父をこのような顔にしてしまう英雄にも少なからず興味を持って。


 アーシャの顔を見て、サルタスは満足そうに微笑む。と、同時に残念に思っていた。師が連れてきたあの英雄が男であったなら、是非ともアーシャを娶ってもらいたかったと。


気づいたら総合評価が100ptになってました(((o(*゜▽゜*)o)))


読んでくださる皆さんのおかげです゜(゜´Д`゜)゜

今回のも含めていつもお読みいただきありがとうございます。

これからも私はがんばるぞぉぉぉぉヽ( ̄▽ ̄)ノ


そして、既に日付が変わってしまっていたorz

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