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①Leveler  作者: 日暮之道吟醸
第二章 現実は厳しい
12/21

久しぶりの街

遅くなりました。


携帯まで不調です(T-T)

何かの呪いなのでは!?



それではお楽しみください。


ちなみにこの物語のメインヒロインは……?

 三日ほど過ぎ、辰巳は体の痛みを我慢しながら『火喰い蜥蜴(レッド・リザード)』を討伐すると、必要な素材を剥ぎ取ってベルティアの街に戻った。行きは自分の足で走って森まで来たが、帰りは怪我の所為でそうもいかず、考えた末、『聖なる守護獣(ベヒモス・ガード)』の背に乗って帰ってきた。ベヒモスガードの足は意外にも早く、二日目の朝には街に着いた。


 街に着くと案の定、守衛達がすごい剣幕で剣を向けてくる。小さくても魔物なのだ、守衛を責めることは出来ない。事情を何とか説明し街に入ると、やはり注目を集めた。


「この子はおねぇちゃんの?」


 一人、女の子が近づいて聞いてくる。

 おねぇちゃんという言葉に、辰巳はピクピクと眉を動かしたが、相手は子供だと言い聞かせて優しく「そうだよ」と応えた。

 女の子は「触ってもいい?」と可愛らしく首を傾げた。

 人垣の中に顔面蒼白になる一人の女性を見つけながらも、辰巳は女の子に手を差し伸べた。


「おいで」


 これでもかというくらい慈愛に満ちた笑みを浮かべた辰巳を見て、女の子は頬を少し朱に染めながら手を取った。

 女の子の体がふわりと宙に浮き、そのままベヒモスの背に乗る。


「わぁ、ぷにぷにして暖かい」


 二、三度撫でたあと、女の子はベヒモスを抱きしめた。それに気を好くしたベヒモスが「ガボボボ」と笑うと、ベヒモスの頭に乗っていたプルティナも「ぷへへへ」と笑う。それを皮切りに数人の男の子達も集まって、ベヒモスをぺちぺちと叩いたり撫でたりして楽しんでいた。周りの大人たちは実に複雑な表情だった。


「この集まりはなんですか〜?」


 しばらく子供達の相手をしていると、警邏中だったのだろう、人ごみを掻き分けてハルが姿を見せた。

 ハルは辰巳を見つけると早々に「タツミちゃん! その魔物は何ですか?」と、満面の笑みで怖がらずに尋ねてくる。ハルは相当図太いのだろう。


「ベヒモスだ」


 ハルの質問に辰巳は短く答えると、ベヒモスから降りた。

 森であった出来事をハルに教えると、ハルは鼻息を荒くして「すごい」と叫ぶ。話を聞いていた周りの人間も、目を見開いて驚いていた。


「あの子ってこの前の『龍殺し』の子じゃね?」


 誰かの呟きに周りの人間はなるほどと納得していた。


 ギルドの前で子供達と別れると、辰巳はベヒモスを引き連れてギルドに入った。何故かハルも一緒に。

 辰巳たちが中に入ると、先ほどまで煩いくらいに賑わっていたギルド内がピタッと静まる。ギルドにいるものは皆、ベヒモスに釘付けだった。


「タツミさん、お帰りなさい!」


 慌てて受付カウンターから飛び出したパメラが、辰巳を出迎える。


「帰りが遅いから私達、マスターと一緒に心配していたんですよ」


 受付カウンターにいた二人の受付嬢もパメラの言葉にうんうんと頷く。


「しかたねぇだろ、ベヒモスに教われてたんだから」


 辰巳はうんざりしながら溜息を吐いた。

 一方、パメラたちは「ベヒモス!」と小さく悲鳴を上げ、顔面を蒼白にした。後ろの二人は蒼白を通り越して、今にも気絶してしまいそうだ。


「じゃ、じゃあ、タツミさんは今までベヒモスと闘ってたんですか?」


 パメラは震える声で尋ねる。

 その問いに辰巳はあっけらかんとした表情で「んなわけねぇだろ」と笑った。


「レッド・リザードが思いのほか見当たらなくってな、森の奥のほうまで行く破目になったんだよ」


「あんなのと何日も闘いたくねぇよ」と辰巳は後ろを親指で指した。そこにはハルやプルティナと楽しそうにお喋り? に興じるベヒモスの姿があった。


「あれって……」


「そう、ベヒモス。の赤ん坊になるんだろうな」


 辰巳の顔は心底嫌そうだった。


 きっとこれからも面倒ごとが増える。


 パメラは辰巳のそんな表所を見て「ご愁傷様です」と心の中で手を合わせた。


「それでね、依頼のほうはね、達成できたのかい?」


 辰巳が振り返るとそこにはいつの間にかミラッカがいた。


「依頼は問題ねぇ」


 そういって、辰巳はどこかから取り出したレッドリザードの牙を数本、ミラッカに投げて寄こした。


「いつ見てもね、驚くよね。どこからこんなおおきな牙出したんだってね。アイテムボックスだっけ? 便利だよね。でもね、あんまり人前で使うのよしなね。あんたのね、嫌いな面倒ごとがね、嬉々として寄ってくるかね。ただでさえね、タツミは面倒ごとが向こうから寄ってくるんだからね」


 辰巳の後ろにいるベヒモスを見ながら、ミラッカはニタニタと笑った。


「んなことはわかってるよ。それよりも」


 辰巳が顔を引き締めたのを見て、ミラッカも真剣な面持ちになる。


「ベヒモスが出たんだってね。ここじゃ何だから部屋、変えようかね」


 小さなベヒモスに煩くなりつつあるギルドを見回して、ミラッカは踵を返す。


「てめぇら、くっちゃべってないでちゃんとついてこいよ!」


 辰巳は後ろにそう怒鳴るとミラッカの後に続いた。

 通されたのは三階の一番奥にあるミラッカ専用の執務室。


 部屋は比較的大きく、ギルドマークの入った旗が左の壁に掛けられ、右側の壁にはよくわからない絵が飾られている。一番奥に執務机があり、その両脇の壁に二つずつ大きな本棚が置かれていた。その中には本が溢れんばかりに収納されている。紙が高価なこの世界ではあまりお目にかかれない光景だ。執務机の右脇に立て掛けられている綺麗な槍は、ミラッカの愛槍なのだろう。


 部屋の中心あたりに応接用の机とソファーがあり、辰巳とミラッカは対面するように座った。辰巳の隣には何故かハルが座っている。

 ミラッカはハルを見て少し考えた後、「かまわないか」と呟いて、口を開いた。


「まずはそうだね、辰巳、あんたが見たのはね、本当にベヒモスだったのか?」


 ミラッカの言葉に辰巳は首を横に振る。


「正確にはベヒモスじゃなかった」


「正確には?」


 ハルは首を傾げた。ハルの疑問ももっともだと、ミラッカはちらりとハルを見た後、辰巳に視線を戻して続きを促した。


「『狂乱する聖獣(ベヒモス・オーガ)』それが俺の出会ったベヒモスだ」


「ベヒモス・オーガ……」


 ミラッカは考えるように顎に手を置き、反芻する。

 長く生きているミラッカですら聞いたことのない魔物だった。


「ミラッカも知らないか」


「……そうだね。もっともね、私の知らない魔物なんてね、この世界には五万といるんだけどね」


 アッハッハと大きく笑うと、「だけどね」とミラッカは直ぐに顔を真剣なものへと戻した。


「知らないからといって、捨てても置けないからね。脅威になるなら尚更ね」


「そこの所どうなんだい?」とミラッカは辰巳に目で問い掛ける。辰巳はそれに頷いて見せた後、「脅威にはなる」と言い切った。


「ベヒモス・オーガは、普通のベヒモスと違い好戦的で力も強かった。その上、バーサク状態だ、怯むことなく突っ込んできやがる。俺ですらこの様だからな」


 辰巳はボロボロになったスカートを持ち上げる。


「むしろね、あんただからその程度で済んだんだろうね」


 ミラッカは小さく溜息を吐いた。


「気になることもある。生まれてきたあいつが、ベヒモス・オーガじゃないことだ」


 辰巳はベヒモスを顎で指した。


「じゃあ、あの子はね、何なんだい?」


「『聖なる守護獣(ベヒモス・ガード)』だ」


「ベヒモス・ガードね……。また聞かない魔物だね」


 一考した後、直ぐにミラッカは首を横に振る。


「そもそも、ベヒモスが転生するなんてね、聞いたことなかったからね」


 ミラッカは「問題ごとが多いね」と小さく呟くと、ソファーに深く腰掛け背を預けて天井を仰いだ。

 ミラッカの呟きに辰巳も「そうだな」と答えると頭を悩ませた。


 この先、倒す敵倒す敵、卵に変わっていったらと。


「でも、タツミちゃんが倒したんだよね、そのベヒモスなんたら。なら問題な〜し。でしょ?」


 ハルは何の問題もないと笑い、「そんなことよりも」と続けた。


「その子のお名前は?」


 能天気なハルの言葉にミラッカはフフッと小さく笑う。この子にとって辰巳が何とかできることは脅威でもなんでもないのだ。辰巳頼りの無責任な発言でもあるが、ミラッカの目にはハルが頼もしく映った。


 辰巳も違うことを考えているようだしね。


 辰巳がぶつぶつと「卵がぁ」と呟いているのを見ると、真剣に考えるのが馬鹿らしく思えてしまう。

 英雄とは二人のように豪傑肌でないとなれないのかも知れない。

 ミラッカは二人を見て、今後の長い人生が少し楽しみになった。


「それで、お名前は何ていうのかな?」


 ハルは目を輝かせて、辰巳に詰め寄る。ハルの顔が間近に迫る。が、辰巳は鬱陶しそうにしながら「ガボガボ煩いから、ガボでいいだろう」とぶっきらぼうに答えるだけだった。


「えぇ! 駄目だよ。そんな適当なのは!」


 ハルは抗議の声を上げる。適当につけた名前なんて、このブサイクちゃんに失礼だ。と何倍も失礼なことを考えながら。

 ミラッカは「悪くないね」と賛同した。当然ハルは「えぇ! どうしてですか?」と身を乗り出して今度はミラッカに抗議する。


「なに、ちょっとね、見方を変えればいいのさ」


 ミラッカはハルににっこりと笑った。そんなミラッカの笑顔にハルは首を傾げる。


「ハルはね、地の神のね、名前、覚えてない?」


「あぁ! ミラッカさんわたしのこと馬鹿にしてますねぇ! 勿論覚えていますよぉ! 地の神様の名前はガボー……ナ……アァッ!」


 突然のハルの奇声にプルティナが「ぷぉ!」と驚いた。


「そういうことだね。地の神の名は『ガボーナ』。因みにね、古代語では守護する者という意味でもあるね。どう、ぴったりのね、名前じゃないかい」


 フフッと優しくミラッカは笑った。ハルはしきりに頷く。辰巳は……心底どうでもよさそうな表情をしていたが、内心では拍手していた。


「さて、名前も決まったとこでね、お開きにでもしようかね」


 そういって、ミラッカは手を叩く。


「もうすぐね、遠征組みが帰ってくるからね、調査はそいつらに任せれば良いしね。まぁね、不安要素は多いけどね、ここで悩んでも仕方ないしね。辰巳には今回のことでね、特別報酬出しとくからね。下で受け取りなね。じゃあ、かいさ〜ん」


「そんな適当で良いのかよ」


「良いか、悪いかで言ったらね、悪いだろうけどね。城にも報告はするし、問題はないね。それよりも、タツミは今回の目的、達成できたのかい?」


 ミラッカの問いに、辰巳は言葉に詰まる。


「どうやら駄目だったみたいだね」


 辰巳は顔に直ぐ出るからわかりやすいねぇ。と、内心で笑いながらもミラッカは首を傾げた。


 魔力は明らかに増えてるんだけどねぇ?


「まぁね、当分それは脇に置いとくんだね。準備もね、しないといけないからね」


 今度は辰巳が首を傾げた。


「準備? 準備って何の準備だよ?」


「何って、学院にね、行く準備だよ。坊やとね、約束してただろ」


 ミラッカの言葉に辰巳は目が点になった。


「あと一週間で新学期だからね。がんばんなね」


 優しく肩を叩き、ミラッカは大声で笑った。

 辰巳は呆然としながらも、小さく「聞いてねぇよぉ」と瞳を潤ませながら呟くのだった。

辰巳くんだよ!!


お読みくださりありがとうございました。

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