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もう一人の幼馴染み

高校三年生になって、早三ヶ月がたった今日……。

「こ・よ・み。一緒に帰ろう?」

一瞬幻聴かな?なんて現実逃避をしてしまった――。


HR(ホームルーム)が終わった後、あたしは机の中にあった実技教科の教科書をちょうどロッカーの中に仕舞い終わった時に最近は学校で姿を見てもいなかった幼馴染みの声が、あたしを呼んだ。

姿を見なかったのは意図的にあたしが避けていたからであるが。理由があるから避けていたからであって、彼女の事は嫌いではない。


――そんな事よりも。


「高校卒業まではもたなかったかぁ……」

頭を抱えて、しゃがみこみたい気分だ。

「暦」

あたしに声をかけて、帰りを誘う彼女の声はよもや恋人に対して名前を呼ぶような色気等々の滲み出る声になっていた。おいおい。


彼女、朝倉鈴(あさくらりん)はあたしの幼馴染みで小学校からずっと一緒にいた子。

鈴と小学校一年生の時に同じクラスになって、鈴が一人孤立になっていてあたしが声をかけた。

そうしたら、一瞬で“懐いた”のだ――……、忠犬の如く。但し、懐いた、と書いてつきまとったと書くが。

それからと言うと、その日からずっと一緒に居て、家が近所だと知るとよく家に来る、あたしに近づく子には睨んで、近づいた男子は害悪を見るかのような目をする……。それ程に懐かれた。

幸いにも、小学校、中学校の友人達は優しく、懐も広い良い人達だったのでそんな鈴を生暖かい目で見つつもあたしと鈴を嫌わないでいてくれたのだ。そして、あたしを助けてくれもした!ありがとう!みんな!!

ちなみに、煉兄と鈴が初めて会った時に二人の間に火花が散ったような気がした。たぶん、鈴は煉兄の事が嫌いなのだろう。煉兄は、嫌いとも好きともどっちつかずな感じだったが。


――中学校まではっ!!


高校からは、別クラス――しかも階が違う――事をいいことに鈴に「三年間学校で話しかけたり、会いに来ちゃ駄目!」と言った。安全な学校生活と、安寧な学校生活のために!

当然、猛反対もあったりしながらも、恨みがましい目で見られながらも、捨てられる子犬の目で見られながらも、一週間鈴の説得の末(五日間は鈴の家に泊まりながら説得した)最低週に四回は会って話す事を条件に受理されたのだ。だから四日は会っている。……鈴の家で。

しかし、とうとう――。


「早く行こう」

何故来た?今までそういう素振りも見せずに!

「ねぇ、いきなり、どうしたの……?後少しで高校卒業するじゃん。本当にどうしたの――?」

「もう無理だよ、最近は受験勉強で少ししか会えてない。ていうか、どこの大学行くの?教えてよ!」

「あー、最近お互いに勉強してるからねぇ……。行く大学は教えるつもりはないし、家族にも先生にも口止めしてるし友達にも教えてないし」

――と、冷静に明後日の方向を向いて(つぶや)く。

「取り敢えず、一緒に帰ろう」

鈴の目が、拒否の言葉を許さないと語っていた。これは諦めるしかあるまい。

「――分かった」



「……で?どこの大学、行くの?」

――あたしは何故、煉兄の家で正座をして煉兄に尋問されているのだろうか……?に、逃げたいっ!逃避行したいよ!!愛は無いけどっ!



最初あたしは、鈴の家にお邪魔していたのだ。話題は勿論さっきの……大学についてで。

「どこの大学?」

「ひ、秘密」

「暦」

「秘密っ!」

「……」

じっとあたしを見つめる鈴。

「ちょっ、捨てられた子犬の目なんかやめてよっ!」

「じゃあどこの大学?」

「……」

「……仕方ない、本当に不本意だけど最終兵器に頼むしかないか……」

何故か鈴は悔しそうに呟き、おもむろに電話を取り出して――。

「もしもし、今から行くから」

――と、一言二言電話相手に言ってすぐにきった。

そうして、あたしの方を見る。

「目、閉じて」

目を閉じると、何をするか分からないのであたしは目を閉じなかったが、鈴はお構いなしに去年に使った体育祭のはちまきを手に持ち、あたしの所へ素早く来る。一瞬の事だったので頭がついてこない。――目の前が真っ暗になって頭の後ろに違和感。ま、まさかこれは目隠し!?

「ちょっ、何するの!?」

「……」

さらには、鼻には洗濯ばさみ!絶対変な格好だよ!今!恥ずかしい!!

「行こう」

どこにっ!?ていうか、これじゃ動けないよ!

それに鈴が気づき、あたしの手を引っ張る。

「どこに行くの!?」

「秘密」

もしや根に持っている?持っているよね?絶対!!


一分もかからずに、歩みを止めると今度は耳に音楽プレーヤーのイヤホン、音楽も流れている。耳栓の代わりらしい。

何も聞こえないぃー!!

それでもお構いなしに、鈴は手を引っ張ってまた歩み始めた。――途中、階段を登らされた時にはもうどこに行くのか本気で分からなくて予想も出来なかった。


さらに数分たつと、耳栓を抜かれる。

「っ……?」

「暦、ついたよ」

鈴が耳元に囁くと、洗濯ばさみが外される。あれ?この匂いは――……。

つうっと背中に冷や汗が伝った。これはちょーっと嫌な予感がするんだけどー?

突然、目の前が明るくなった。今まで目隠しされていたので、眩しい。そして、突然すぎて見えない。

「眩しいっ」

思わず、そう叫んでも許されるだろう。あたしは、何度か目を(まばた)きさせて目に光を慣らさせる。

あたしの目の前には――……。

「煉兄っ!?」

目の前には、優しい微笑みを浮かべているけど目は笑っていない、恐ろしいオーラを漂わせている幼馴染み、煉兄の姿。

「一週間ぶりだね、暦」

「どどど、どうしてっ!?ていうか、ここ、煉兄の家!?」

「さて、鈴から事情は聞いたよ。俺も気づかなかったのもだめだったけど教えて?暦。――どこの大学、行くの?」

「だ、大学?どうして?」

「どうしてって。気になるじゃないか」

さも当たり前のように煉兄は答える。気になっただけで、恐ろしくて黒いオーラを出すか!!普通!!

「……暦と同じ所行きたいから知りたい。違う所に行ったら嫌だ」

鈴があたしを見て悲しそうにそう言う。おいおいっ!

現在の高校生verがスタートしました。いきなり三年生!!

中学二年生の話は、隠れプロローグ的存在です。

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