彼女の存在と複雑な心
短いです!すみません!
1話目からちょーっと過去に行きます。
「ねぇ、煉兄」
「ん、どうしたの?解けない問題あるの?」
「うん、ここ」
あたしは、二度計算したのに解らない所を指差す。
そんな事よりもね、本当はもっと気になってしょうがない長年の疑問。聞いたら、答えてくれる?
煉兄が“吸血鬼”かどうかを。
煉兄は、あたしがこんなふざけた疑問を中学二年生から持って長年悩んでいた何て知らないでしょう?
でもね、ちゃんと見たんだから。
女の人の首筋から血を吸っているところを。
当時、中学二年生だったあたしは幼なじみの三歳年上の高校二年生である煉兄に懐いていた。
今考えても、あれはただの年上に対するある一種の憧れだった。
だけどひたすら幼なじみで、恋愛等全くない関係。
ただ、その関係は同時に危ういものであった。
不幸なことに時間は進むもの……。あたし達にも生活はあり、日々成長している。
成長は、ギリギリに張り詰めた均衡に大きな波をたたせそれを壊した。
その一つ、煉兄に彼女ができた事。
まだその時はちゃんと理解できていなかったのだ、それがどんなにあたしに衝撃的だったか。
「暦!暦!」
あたしの友人が名前をせわしなく呼ぶ。
「何?」
「あのさ、夜城先輩に彼女できたって本当!?」
あぁ、その話か。
煉兄は三歳年上だから、同じ中学校に入学しても入れ違いになるのだ。
だけど、煉兄がいたことには変わりない。なので、煉兄が残した功績は変わらなく残る。
確実に一つは、外見だろう。周りの人に言わせれば、とてもカッコイイらしい。
らしい、と言うのはあたしは何年も一緒にいたために感覚が麻痺してたまに、あぁそういえばかっこよかったね。みたいな感じなのだ。
「うん、たしかできていた気がするし言ってた気がする」
できたって言ってたのは先週だった。
いつも通りに、課題を教えてもらっている時にだった。
「そういえば、俺付き合っている人できたから。これからあんまり勉強とか教えてあげられないかも」
「え、彼女できたの!?」
「うん、だからごめんね?」
「まぁ、彼女の方が大事だよね。ちょっと、課題出さなかったりテストの点数が悲惨になるだけだから平気だよ。彼女を大事にね」
「あんまり平気じゃないでしょ、それ」
煉兄は少し真顔で苦笑する。冗談冗談、あはは。
「まぁ、何とかするよ。」
「ごめんね、本当に。暇な日は勉強教えるし」
「うん、その時はよろしく!」
何故だろうか、少し複雑だ。だけど、祝福しなければ。
「ありがと。また暇なときよろしくね」
「ちゃんと、復習位しておいてね」
「はいはい」
あたしは、あまり煉兄の顔が見られなかった。
……あれ、目の前に手がある。
「暦ー?おーい!」
「あぁ、ごめん」
「トリップしてたでしょ~」
「うん、してた」
そういえば、今は学校。休み時間に友人と話していたのだ。そして、煉兄の事について話していた。
「女の人、会った事あるの?」
「無いよ。ていうか良いの?チャイム鳴るよ」
「あぁ!やばい!」
友人は慌てて戻っていった。結局何が言いたかったのかよく分からなかった。
つまらない授業が終わると、さっさと担任の先生がやってきてHRを始めて終わらす。