序章
今回は人が死んでしまう等、少し残酷描写があります。
ご注意ください。
遠い昔に、一つの家族があった。
その家族は、大層綺麗で美麗な者達だった。その家族は、父親、母親、長男、次男、長女の五人家族だった。
その家族は、色々な国を旅するのが好きだった。
その家族が、とある国に訪れた時に、お忍びで王都を出歩いていた独り身の王に出会い、そして気に入られた。
王は、綺麗で美麗な家族が抵抗するのを無理やり攫い、お城に連れ帰って、お城の地下にその家族を住まわせ、大切に大切に扱った。
その家族は、不自由の身にして、地下に住まわせた王を憎悪し、嫌悪し、呪い、恨んだ。
ある時、王は長女を好きになった。
だが、長女は王が憎くて憎くて仕方がなく、会う度に王を拒否していた。
王は、政務を放棄して、毎日毎日長女の元へ通い、長女に愛を囁き、常に長女の事を考えていたので、その国の宰相や大臣達は怒り、原因である家族を殺すことに決定した。
家族の殺しを決定した夜、宰相と大臣達は騎士を連れてお城の地下に住む家族の元へ行った。
騎士は、宰相と大臣達の命令で家族全員を皆殺しに惨殺した。宰相と大臣達は、泣き叫び、呪いの言葉を吐いて死んでゆく家族を傍観していた。
家族が全員死ぬと、宰相と大臣達は騎士に命令して家族の死体を、近くの山に捨てさせた。
次の日、王が地下に住む家族に会いに行った。だが、家族は昨晩殺されたので、そこには居ない。
王は、殺されたことを知らないので、家族は逃げ出したと思った。
宰相と大臣達は、王に結婚があると言い、無理やり結婚させた。王は、結婚を抵抗したが、結局、流されるままだった。
そして宰相と大臣達と王は、次第にその家族の存在を忘れていくのだった。
騎士に惨殺され山に捨てられた家族達は、殺された次の日の満月の夜に、『吸血鬼』として、長い寿命と、魔力と、人を魅了する力と、生きるための牙を得て、蘇った。
そして、その国の人間の血を吸って、その国を出て行った。その後、どこかの無人のお城に住み始めて、名前を変えて、人間の血を飲み、人間を吸血鬼にして仲間にし、吸血鬼を増やした。
家族が住んだ城は、夜にしか見えないので夜城と呼ばれ、家族も夜城という名前に変わった。
その家族が吸血鬼の初めだった。
その家族は、吸血鬼の始祖と呼ばれる者達だった。
吸血鬼の始まりは、遠い遠い昔の憎しみや怒りから、惨殺された後から始まった。
そして吸血鬼は、長い時間をかけて繁栄していき、始祖の血を持つ純潔の吸血鬼も、続いていくのだった。
この話は、とある吸血鬼の始まりの話。そして、今もなお続く純潔の血を持ち、夜城と呼ばれる吸血鬼の話。