ロシア帝国の南下政策
■ 1. 南下政策の基本理念(この世界観での位置づけ)
ロシア南下政策は、ピョートル大帝以来の「三方向戦略」の延長である。
● 三方向戦略
1. 黒海・バルカンへの進出(オスマン帝国の解体)
→ 地中海に出るための海洋出口確保
2. 中央アジア征服(英領インドへの牽制)
→ 「グレート・ゲーム」の主導権確保
3. シベリアの拡張と極東進出(太平洋到達)
→ 東アジア・北太平洋での影響力拡大
この世界でも目標は変わらないが、欧州列強のバランスが崩れ、干渉が弱く
なっているため、ロシアは史実以上に積極的に南下できる状況になってい
る。
---
■ 2. ロシア南下の四大戦線
---
◆ A. 黒海方面:オスマン帝国への侵食
● 背景
この世界では1848年革命で欧州が混乱し、フランス本国は第二共和国の樹立
で軍事的余裕を失い、英国は北米自治領問題に深入りしている。
→ 対ロ包囲網が弱体化
ロシアにとって黒海方面は「絶好の侵略機会」となる。
● 進展経過
1. モルダヴィア・ワラキアに宗主権を拡大
2. 黒海北岸を事実上支配
3. クリミア半島に軍港整備
4. オスマン帝国のスルタン権威を否定する宗教的口実(聖地保護)を利用
5. クリミア戦争へ突入
● この世界のクリミア戦争の特徴
• 英国は派兵量が少ない
• フランスは内乱で軍投入不可
• プロイセンは対オーストリア戦を優先し中立
• オーストリアは1848年の後遺症で動けず
→ 史実ほどロシアは敗北しない
→ 黒海の勢力をほぼ保持しつつ、痛み分けで講和
これによりロシアは、黒海方面でのプレゼンスを確固たるものとし、オスマ
ン帝国の弱体化を加速させる。
---
◆ B. コーカサス方面:山岳民族の平定と支配
● 目的
• グルジア(ジョージア)・アルメニアを保護国化
• チェチェンなど山岳諸部族の抵抗を制圧
• 黒海とカスピ海を陸上で結ぶ安全回廊の確保
● この世界での違い
史実ではロシアはコーカサス戦争に多大な損耗を出し、進展が遅れたが、こ
の世界では:
• フランスが不介入
• 英国が後背支援を縮小
→ 山岳民が列強支援を受けられず、ロシアの勝利が早まる
● 結果
• 1860年代にはチェチェン〜ダゲスタンの抵抗がほぼ鎮圧
• トビリシがロシアのコーカサス司令部として強化
• コーカサス鉄道の建設が早まる
• オスマン帝国はさらに圧迫される
---
◆ C. 中央アジア方面:トルキスタン征服
● グレート・ゲームの構図
史実では英国とロシアは中央アジアで覇権を争った。
しかしこの世界では英国が北米に注意を向け続けるため…
→ ロシアの進出が早まり、英国の反応が遅れる
● ロシアの進出
• カザフ草原の併呑
• ヒヴァ・ブハラへの圧力
• コーカンド・ハン国の崩壊
• アムダリヤ〜シルダリヤ盆地の支配確立
• サマルカンド占領
● 英国の懸念
インド総督府は警戒を強めるが、本国の支援が薄いため
• 北インドに防衛線を築くに留まる
• アフガニスタンを緩衝国として強化するものの効果薄
→ ロシアは史実以上に中央アジアを制圧し、インド北方にまで影響力を伸
ばす。
---
◆ D. シベリア〜極東方面:沿海州・樺太・朝鮮への接近
● 日本連邦の存在が影響
この世界では江戸幕藩体制が大名連邦化し、上杉政権が中央主導で改革に成
功。
さらに
• **新海国(伊達国家)**が北米西岸にあり、太平洋航路で発言力
→ 日本勢力の国際的比重が史実より高い。
● ロシアの極東政策の進行
1. ウラジオストク建設の早期化
2. 南樺太を巡る日本との緊張
3. 清朝との不平等条約を強化(沿海州獲得)
4. 朝鮮半島への接近
● 朝鮮半島での親ロ派台頭
ロシアは、
• 軍事顧問団派遣
• 宗教(正教会)を通じた影響力
• 武器供与
• 清朝の弱体化利用
によって、北朝鮮方面に親ロ体制を作る。
● 日本連邦との対立
日本連邦は、対馬海峡の安全保障から
• 朝鮮の独立維持
• ロシアの不凍港獲得阻止
を最優先とする。
これにより、この世界では**19世紀版「朝鮮戦争」**が発生し、日本は限定
戦争で勝利、ロシアは引き下がることになる。
---
■ 3. 南下政策の世界的影響(この世界特有)
● 欧州
• ロシアはバルカンで覇権的地位を得る
• オーストリアはロシアに従属的となり、ドイツ統一でプロイセンが台頭
● 中央アジア
• ロシアが広大な領土を併合
• 英国はインドへの回帰を強めるが効果薄
● 東アジア
• 日本連邦の防衛意識が急速に高まり、軍制改革が加速
• 清朝は圧迫され改革を早期化(洋務運動の先取り)
• 朝鮮が列強の緩衝地帯化し内乱が常態化
---
■ 4. この後の展開候補
さらに世界設定を進める場合、以下の問題が自然に浮上する:
1. ロシア vs プロイセン(ドイツ帝国)
バルカンと東欧の影響力で対立。
2. ロシア vs 日本連邦(第二次極東戦争)
サハリンと朝鮮の支配を巡る大規模衝突の可能性。
3. 新海国(伊達国家)の太平洋外交
太平洋航路を巡り、ロシアとの競合が深まる。
4. 英領北米自治領の独立と外交路線
ロシアとの関係をどうするかが重要な外交課題に。




