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第一章 逃げ出した先には

 我は今、城の窓から飛び出て、地面に向かって落ちている。さてどうしたものか。地面まであと少し。死ぬことはないが、こちらの世界でも痛いのは嫌だな。ふむ。


 「っ!このバカ野郎!」


 ん?下から声が男の声が聞こえてくるな?まぁ、気にしないがな。目の前の木でも殴れば折れるだろうか?


 「何もしないのかっ?!っくそ!」


 我の代わりにいちいち煩い声だな。っと?なんだ?何かに抱えられた感覚だな?顔を上げると、そこには我には知らない顔だが、この身体の持ち主の記憶は知っているようだ。


 「なに無茶してんだ!俺が行動開始するまで待てと言っていただろう!」


 えらくお怒りのようだが、生憎今のこの身体の持ち主は我だから、そんなものは知らん。とりあえず面倒なので、黙っておくか。こうして、我はよく分からぬ男に抱き抱えられながら森の中を追手から隠れるように進み続けて行った。しばらく運ばれ続け、ボロい今にも崩れそうな家のような所に強制的に入ることになった。


 「おい、サラ。なぜあんな無茶を…」


 黒衣を全身に纏って、身長は恐らく170前後か?髪色はよく見えないが、瞳と同じ深い青に近そうだ。さて、どう説明したものか。


 「おい、お前。敵か、味方か。」

 「…はぁ?サラ、何を言っているんだ?」


 ふむ、どうやら敵ではない事は確定したな。何か、信じられないものを見るような目線だ。まぁ、それは我も同じか。どう切り出したものか。少し考え、我は口を開く。


 「おい、お前。我はなにも知らないまま、この女の身体に入った別人だ。ここは何処で、何が起こっているのか我には分からない。簡潔に教えてくれないか?」

 「…はぁ?!」

 「うん、ある程度は予想していた返答だが、あまりにもすっとんきょうな声だな。笑える。」


 盛大に笑ってしまった。失礼だとは思っていたが、我慢が出来ない。まるで、朔希が困った時と似たような反応で、逆に楽しいな。…ん?この黒衣の男…何処かで見たような気が…朔希が何か読んでいた本の表紙で見たような…


 「本当にお前はサラじゃないのか…」

 「そんな呆然とした顔で見るな。名前が同じだが、お前の知るサラで無い事は保証出来る。我は、曲輪燦樂くるわさら簡単に言えば、お前の知らない世界から、この身体の持ち主の…お前の言うサラの身体に魂だけが移されたと言うことだろう」

 「…サラだが…サラじゃない…」


  彼には申し訳ないが、先に事実を伝えておいた方が、この男も身の振り方ってものがあるしな。というか、思い出したぞ。ここは朔希が読んでいたお気に入りの小説の世界か!タイトルは…タイトル…知らない!思い出せない!愛しの妹の朔希はあんなにも喜んで読んでいたものだと言うのに!姉失格ではないか!というか、これは異世界転生と言うものか?!夢物語だと思っていたがあり得ない。…が、今現在こうしてここにいる。朔希を庇って刺されて…あの子は無事だろうか、そもそも我は帰ることは出来るのか?我はあの後どうなった?だめだ、今度は我が混乱してきた。落ち着け…とりあえず、今は例の声も聞こえないし、愛しの朔希の読んでいた本の内容も知らない。目の前に居る男から聞き出すしかない。この世界の事を!我が朔希の元へ帰るためにも!

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